• TSRデータインサイト

「喫茶店」の廃業、2021年は過去最多の100件

 2021年の「喫茶店」の休廃業・解散が初めて100件に達し、過去最多を記録したことが東京商工リサーチの調査でわかった。
 大手チェーンや「コンビニコーヒー」との競争に加え、昨今の輸入コーヒー豆の高騰も痛手となった。コロナ禍で生活様式が変化し、商談や「時間つぶし」、「勉強」などの需要も減っている。先行きが見えず、債務超過に転落する前に廃業を決断したとみられる。
 オミクロン株の流行拡大で、1月に入り「まん延防止等重点措置」が東京などに適用された。在宅勤務が増え、需要回復は期待できない。2022年は廃業だけでなく、息切れによる倒産増の可能性も高まっている。


「喫茶店」の休廃業・解散は過去最多

 2021年の「喫茶店」の休廃業・解散は100件(前年比26.5%増)だった。調査を開始した2000年以降、最多だった2018年(84件)を大幅に上回った。
 一方、2021年の「喫茶店」の倒産は61件(前年比8.9%減)にとどまった。コロナ関連の休業補償金や持続化給付金、ゼロ・ゼロ融資などの資金繰り支援が下支えした。
 休廃業・解散と倒産の合計は161件で、これまで最多の2020年(146件)を15件上回り、過去最多となった。

業績の2極化が進行

 「シロノワールぜいたくピスタチオ」など新商品が好調な「コメダ珈琲店」を展開する(株)コメダホールディングスは、2021年3-11月の連結営業利益が前年同期比36.8%増の58億4700万円だった。
 一方、「ドトール・コーヒー」やレストランを運営する(株)ドトール・日レスホールディングスの2021年3-11月の連結営業利益は9億2100万円の赤字。また、「サンマルクカフェ」などの(株)サンマルクホールディングスの2021年4-9月の連結営業利益は27億900万円の赤字だった。「喫茶室ルノアール」の(株)銀座ルノアールの2021年4-9月の連結営業利益は6億6400万円の赤字といずれも苦戦し、大手でも明暗が分かれた。


 オミクロン株の流行拡大で「まん延防止等重点措置」の適用地域は拡大が続く。
 再び、在宅勤務が増え、外出する人も減ることが予想され、喫茶店は冬の時代に逆戻りしかねない。さらに、とどめを刺すようにコーヒー豆や他の食材も高騰している。
 コロナ禍で喫茶店の経営環境は厳しさを増す一方だ。コロナ関連の支援効果が薄まると廃業の前に倒産の増加が先に顕在化してくる事態も危惧される。

喫茶店




 

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2025年度の業績見通しに大ブレーキ 「増収増益」見込みが16.6%に急減

トランプ関税、物価高、「価格転嫁」負担で、国内企業の業績見通しが大幅に悪化したことがわかった。2025年度に「増収増益」を見込む企業は16.6%にとどまり、前回調査(2024年6月)の23.3%から6.7ポイント下落した。

2

  • TSRデータインサイト

2025年3月期決算(6月20日時点) 役員報酬1億円以上の開示は117社・344人

2025年3月期決算の上場企業の株主総会開催が本番を迎えた。6月20日までに2025年3月期の有価証券報告書を510社が提出し、このうち、役員報酬1億円以上の開示は117社で、約5社に1社だった。

3

  • TSRデータインサイト

チャプター11をめぐる冒険 ~ なぜマレリはアメリカ倒産法を利用したのか ~

ずっと日本にいるのに時差ボケが続いている。  「マレリのチャプター11が近いから関連サイトをチェックし続けろ」と6月6日に先輩に言われて以降、私の生活はアメリカ時間だ。

4

  • TSRデータインサイト

代金トラブル相次ぐ、中古車販売店の倒産が急増

マイカーを売却したのに入金前に売却先の業者が破たん――。こうしたトラブルが後を絶たない。背景には、中古車価格の上昇や“玉不足”で経営不振に陥った中古車販売店の増加がある。倒産も2025年1-5月までに48件に達し、上半期では過去10年間で最多ペースをたどっている。

5

  • TSRデータインサイト

定量×定性分析 危ない会社は増えたのか?

2024年度の全国倒産が1万144件(前年度比12.0%増)と11年ぶりに1万件を超えたが、企業の倒産リスクはどの水準にあるのか。東京商工リサーチが企業を評価する「評点」と「リスクスコア」のマトリクスからみてみた。

TOPへ