2021年の「旅行業」倒産は31件、7年ぶりに30件超
2021年(1-12月)の「旅行業」倒産(負債1,000万円以上)は31件(前年比19.2%増)で、2年連続で前年を上回った。30件台に乗せたのは2014年(37件)以来、7年ぶり。このうち、新型コロナウイルス関連倒産は25件(構成比80.6%)で、長引くコロナ禍が旅行業に深刻な打撃を与えていることがわかった。
旅行業界は、2年にわたる新型コロナウイルス感染拡大の影響が深刻だ。度重なる緊急事態宣言等の発令で人流が抑制され、出入国制限により海外旅行とインバウンド需要が落ち込んだ。
政府は無利子・無担保融資(ゼロ・ゼロ融資)や債務返済猶予の特例措置などに加え、持続化給付金や雇用調整助成金などの資金繰り支援策を打ち出し、苦境に立つ企業を支えてきた。
この結果、2021年の全国企業倒産は1-11月累計で5,526件(前年同期比23.4%減、前年同期7,215件)にとどまり、年間(1-12月)では1964年(4,212件)に次ぐ57年ぶりの低水準が見込まれる。
だが、コロナ禍の直撃を受けた旅行業は需要回復が鈍く、倒産は2年連続で増加した。海外旅行の再開にめどが立たないまま、経営体力の乏しい中小・零細企業を中心に息切れが増えた。
加えて、新たな変異株「オミクロン株」の感染急拡大で外国人の入国制限が2月末まで延長、国内の移動も再び自粛や制限が危惧され、旅行業界の先行きは不透明さを増している。
「Go To トラベル」キャンペーンの再開も見送られているなか、新型コロナへの対応策次第では、旅行業者のあきらめ倒産が増える可能性が高まっている。
新型コロナ関連倒産が8割を占める
2021年(1-12月)の「旅行業」倒産(負債1,000万円以上)は、31件(前年比19.2%増)で、2年連続で増加した。2014年(37件)以来、7年ぶりに30件を超えた。
一方、負債総額は43億2,300万円(前年比85.5%減)で、2年ぶりに前年を下回った。前年は2020年6月に民事再生法の適用を申請した(株)ホワイト・ベアーファミリー(大阪府、負債278億円)の大型倒産が発生した一方、2021年最大の倒産はハートフルインターナショナル(株)(4月、破産、負債9億5,000万円)にとどまり、大幅に減少した。
「旅行業」倒産のうち、コロナ禍が起因した倒産は25件(前年7件)で、全体の8割(構成比80.6%、前年26.9%)を占めた。長引くコロナ禍の収束見通しが立たず、旅行業は疲弊が続く。
原因別 不況型倒産が約9割
原因別では、最多は「販売不振」の25件(前年比19.0%増)で、旅行業倒産の8割(構成比80.6%)を占めた。コロナ禍による業況悪化を反映している。このほか、「他社倒産の余波」と「既往のシワ寄せ」が各2件、「事業上の失敗」と「運転資金の欠乏」が各1件。
『不況型倒産』(既往のシワ寄せ+販売不振+売掛金等回収難)は27件にのぼり、旅行業倒産の約9割(構成比87.0%)を占めた。
コロナ禍の渡航制限で壊滅的な打撃を受け、再開のめどが立たない海外旅行に特化した旅行業者の倒産が散発した。
負債額別 1億円未満が約8割
負債額別では、最多は1千万円以上5千万円未満の13件(前年比7.1%減)で、全体の4割(構成比41.9%)を占めた。次いで、5千万円以上1億円未満が11件(同35.4%)で続き、負債1億円未満の小規模倒産が全体の約8割(同77.4%)を占めた。
小規模業者は経営体力に乏しく、コロナ禍の長期化に耐えきれず、経営の行き詰まりをみせている。
従業員数別 5人未満が約8割
従業員数別では、5人未満が24件(前年比33.3%増)で最多。旅行業倒産の約8割(構成比77.4%)を占めた。そのほか、10人以上20人未満が5件(前年ゼロ)、5人以上10人未満(同6件)と20人以上50人未満(前年同数)が各1件。
前年に1件発生した50人以上の規模の倒産は、発生がなかった。
地区別 全国9地区すべてで発生
地区別では、全国9地区すべて(前年7地区)で発生した。最多は関東12件(同9件)で、旅行業倒産の約4割(構成比38.7%)を占めた。そのうち、東京都が10件(前年6件)。
このほか、九州5件(同3件)、近畿4件(同7件)、東北(同1件)と中部(同3件)、北陸(同1件)、中国(同2件)が各2件、北海道(同ゼロ)と四国(同ゼロ)が各1件。