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国内106銀行 預貸率61.9%で最低を更新、預貸ギャップ350兆円に拡大(2021年9月中間期 単独決算)

 2021年9月中間期の国内106銀行の預貸率は61.9%(前年同期64.1%)で、前年同期から2.2ポイント低下した。預金が貸出金の伸びを上回り、9月中間期では調査を開始した2008年以降で最低となった。
 貸出金合計が571兆522億円(前年同期比0.1%増)と、僅かな増加にとどまった。一方、預金合計(預金+譲渡性預金)は921兆5,743億円(同3.6%増)と大きな伸び率をみせ、預貸率をさらに低下させた。
 業態別の預貸率は、大手行が53.3%(前年同期56.1%)、地方銀行が73.4%(同75.2%)と、低下した。第二地銀は預金が前年同期比2.7%増(66兆1,981億円→67兆9,983億円)、貸出金が同2.9%増(50兆2,466億円→51兆7,122億円)と、それぞれ拡大。預貸率は76.0%(同75.9%)で2年ぶりに上昇した。
 預金と貸出金の差を示す預貸ギャップは350兆5,220億円で、前年同期(318兆7,489億円)から31兆7,731億円(9.9%増)拡大し、9月中間期としては調査を開始以降、最高を更新した。
 コロナ禍の資金繰り支援で貸出は拡大したが、持続化給付金や雇用調整助成金などの支援金に加え、貸出金が一時的に預金に滞留し、預貸ギャップが広がった。過剰債務を抱えた中小企業は多く、事業の再稼働に伴う新たな資金需要の押し上げも予想される。銀行は、経営再建サポートに向け、自行リスクを取りながらどのような支援に動くのか力量が問われている。

  • 預貸率は、銀行預金の運用状況を示す経営指標の一つで、預金残高に対する貸出残高の比率。
    本調査は、国内106銀行を対象に2021年9月中間期の単独決算ベースの預貸率を調査した。
    預貸率(%)は、「貸出金÷預金×100」で算出。
    「貸出金」は貸借対照表の資産の部から、「預金」と「譲渡性預金」は貸借対照表の負債の部から抽出した。
    銀行業態は、1.埼玉りそなを含む大手行7行、2.地方銀行は全国地銀協加盟行、3.第二地銀は第二地銀協加盟行。

預貸率は過去最低の61.9%

 国内106銀行の2021年9月中間期の預貸率は61.9%(前年同期64.1%)で、9月中間期では3年連続で低下し、2008年同期以降の最低を記録した。
 コロナ禍での支援策を背景に、銀行は貸出を大幅に伸ばした。しかし、各種給付金や助成金などの押し上げもあって銀行の預金合計は921兆5,743億円(同3.6%増)に積み上がり、預貸率を低下させた。
 106行のうち、預貸率が前年同期を上回ったのは34行(構成比32.0%、前年同期35行)に対し、低下は72行(前年同期71行)だった。72行の内訳は、大手行が全7行、地方銀行が61行のうち49行、第二地銀が38行のうち16行だった。
 預貸率が低下した72行では、預金が増加したのは69行(構成比95.8%)と、9割以上だった。

預貸率

業態別 第二地銀が唯一、上昇

 業態別の預貸率は、大手行は53.3%(前年同期比2.8ポイント低下)で、9月中間期としては調査を開始した2008年期以降で最低を記録した。また、地方銀行が73.4%(同1.8ポイント低下)で、2年連続で低下した。
 一方、第二地銀は76.0%(同75.9%、同0.1ポイント上昇)で、2年ぶりに上昇した。預金が前年同期比2.7%増(66兆1,981億円→67兆9,983億円)に対し、貸出金は同2.9%増(50兆2,466億円→51兆7,122億円)で、預貸率が上昇した。
 銀行別で、預貸率が最も低下したのは、十八親和銀行の10.1ポイント低下(81.6→71.5%)。預金は前年同期比3.4%増だったが、貸出金は同9.3%減と大幅に減少した。
 以下、島根銀行8.0ポイント低下(72.5→64.5%)、スルガ銀行7.5ポイント低下(75.8→68.3%)、福岡銀行6.0ポイント低下(93.9→87.9%)、あおぞら銀行5.9ポイント低下(80.0→74.1%)の順。
 一方、預貸率が最も上昇したのは、熊本銀行の6.4ポイント上昇(110.2→116.6%)だった。預金が前年同期比4.2%増に対し、貸出金は同10.3%増と大きく伸ばした。

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