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東京都港区住民の7人に1人が社長 ~ 2021年全国「社長の住む街」調査 ~

 2021年の「社長の住む街」の全国トップは、2020年に続き東京都「港区赤坂」だった。港区の社長比率は13.8%(前回13.1%)で、住人の7人に1人が社長だ。
 市区郡別では、上位50位内に東京都内が24市区と半数を占めた。東京都以外では、13位埼玉県川口市、20位千葉県船橋市、22位大阪府東大阪市、23位鹿児島県鹿児島市など、県庁所在地や大都市に隣接するベッドタウン、閑静な郊外も人気を集めている。
 都市部の高層マンション人気を背景に「職住近接」の傾向は根強いが、コロナ禍で在宅勤務も浸透しており、社長の居住地志向がどのように変化するか注目される。

  • 本調査は、東京商工リサーチ(TSR)の企業データベース(約400万社)から、社長(個人企業を含む)の居住地を抽出し、ランキングにまとめた。前回調査は2020年11月発表。
    社長居住地の最小単位は「町」ベースで、 「丁目」は区分していない。
    同一人物が複数の企業で社長を務めている場合、売上高が大きい企業を採用し、重複企業を集計対象外とした。

 全国約400万社の社長のうち、最も多くの社長が住む街トップは、前回に引き続き東京都「港区赤坂」の3,739人だった。「赤坂」は都市型の商業施設や著名な飲食店も多い人気の街で、アメリカ大使館など各国大使館も点在し、大使館員や外資系企業の駐在員も多く住んでいる。
 2位は、東京都「新宿区西新宿」の3,079人。新宿駅の西側で、都庁をはじめ高層ビルがそびえ立ち、百貨店や家電量販店などの大型商業施設も隣接し賑わっている。
 3位は、東京都「港区六本木」の2,960人。トップの赤坂と隣接し、外国人にも人気の街だ。
 4位には前回5位の東京都「港区南青山」が、前回4位の東京都「渋谷区代々木」と入れ替わった。赤坂や六本木、渋谷のほか、大学や大型商業施設のある原宿にも近く、高級デザイナーショップが集まるファッショナブルな地域で、若者にも人気が高い。

港区を追い上げる新宿駅周辺エリア、東京湾岸エリア

 7位には4人の僅差で東京都「新宿区新宿」が浮上した。1日あたりの乗降客数が世界一の新宿駅東側に面し、駅西側と同様に国内有数の商業地域だが、駅から離れると住居エリアが広がる。
 僅差で8位にダウンした「港区芝浦」は、前々回の13位から前回7位に急上昇した勢いを保っている。かつての工場エリアは再開発で大きく変貌を遂げ、東京湾の夜景を望むタワーマンションやオフィスビルが建ち並ぶ。
 湾岸エリアでは、前々回27位から前回13位を経て11位に上昇した「江東区豊洲」(2,340人)も人気を集めている。東京駅や銀座エリアに近く、タワーマンションが林立し、公園や病院、学校、商業施設の充実が進み、2021年開催の東京オリンピック・パラリンピックの関連施設も近い。

社長の住む街

東京以外は商業圏の中核に集中

 東京都以外では、57位(前回57位)に神奈川県の「三浦郡葉山町」1,397人が入った。三浦半島に位置する葉山町は別荘地として知られ、人気スポットの鎌倉にも近く、マリンスポーツやゴルフなどを楽しめる。
 70位(同77位)は大阪府「大阪市西区南堀江」1,259人。若者に人気のショップが並び、オフィス街に隣接する。古い街並みと2000年代以降に増加したタワーマンションが混在する。
 95位(同94位)は、福岡県「糟屋郡志免町」の1,143人。福岡空港に近く、福岡市に隣接するベッドタウンとして人口が増えている。周辺にショッピングセンターや球技場、東平尾公園があり、余暇を過ごしやすい環境が整っている。

市区郡別 東京都世田谷区が初めて5万人を超える

 市区郡別では、トップ10を東京23区が独占した。最多は、東京都「世田谷区」の5万943人。
2012年の調査開始以来、初めて5万人を超えた。世田谷区は人口、世帯数が23区で最多を占め、高級住宅街として知られる成城をはじめ、閑静な住宅地としての認知度が高い。
 2位は東京都「港区」の3万6,087人。人口に対する社長比率は13.8%で、区民の7人に1人が社長という“社長だらけ”の街だ。繁華街や高級住宅街、再開発された湾岸地区など様々な顔の街があり、町村別でもトップ10に7地区がランクインしている。
 3位は東京都「大田区」で2万7,175人。田園調布や山王など、歴史ある高級住宅街が位置する一方、中小・零細規模の町工場も多く「ものづくりのまち」として知られる。

東京都以外の市区郡別では、東京に隣接した街に社長が多い

 東京都以外では、13位(前回14位)の埼玉県「川口市」が1万8,801人で最多。20位(同20位)の千葉県「船橋市」1万3,604人、21位(同22位)の千葉県「市川市」1万3,509人など、東京都に隣接するエリアが続く。
 このほか、大阪府「東大阪市」が22位(同23位)、鹿児島県「鹿児島市」が23位(同21位)、兵庫県「西宮市」が25位(同25位)と続く。
 人口に対する社長比率では、大阪府「大阪市中央区」の8.1%が最も高く、東京23区を含めても全国5位に入る。次いで、大阪府「大阪市西区」5.9%、大阪府「大阪市天王寺区」5.5%、神奈川県「横浜市中区」5.4%が続く。政令都市以外では、埼玉県「川口市」の3.16%が最高で、東京都の葛飾区(3.14%)や足立区(3.13%)を上回る。

社長の住む街

都道府県庁所在地の「社長比率」は東名阪が上位

 都道府県庁の所在地別の「人口に対する社長比率」では、企業の数自体が圧倒的に多い東京23区が4.8%でトップ。23区のうち、「港区」が13.8%、「千代田区」が11.3%、「渋谷区」が10.9%で、この3区は人口の10人に1人以上が社長という計算になる。
 2位は、大阪市の3.4%。東京23区以外の都道府県庁所在地では、唯一3%を超えた。国内で2番目に大きな経済圏の中心都市として、「中央区」(8.1%)や「西区」(5.9%)、「天王寺区」(5.5%)など、オフィス街や商業地に隣接した地域での比率が高い。
 3位は、前回4位の名古屋市2.85%が僅差で福岡市2.81%を上回った。両市とも大都市圏の中核を担う。5位は京都市の2.7%、6位は横浜市の2.6%で、それぞれ東京、大阪に隣接した県が続く。
 一方、ワースト47位は山口県「山口市」の1.3%、46位は三重県「津市」の1.68%だった。山口県には下関市、三重県には四日市市など、地元の銀行や大手企業の本社が所在する都市が県庁所在地とは別にあり、社長比率が低かった要因とみられる。


 「社長の住む街」は、都心から距離のある閑静な高級住宅地の人気も根強いが、「職住近接」を重視した都心部の人気上昇がうかがえる。社長のニーズを満たすグレードの高い居住空間や設備、セキュリティ機能を備えた高級マンション、タワーマンションが都心部での居住を後押ししているようだ。
 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、在宅勤務が定着したビジネスパーソンの中には、郊外や地方に居住しながら都心の企業に勤めるワークスタイルも現れ始めた。ビジネスの現場で指揮を執ることが求められる社長は「職住近接」の傾向が根強い。だが、コロナ後はワークライフバランスを前面に打ち出した生き方が、社長の住む街にも反映してくるかもしれない。

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