円安進行が「不利」な企業は全体の29.2% 「円安に関するアンケート」調査
米国の金利上昇やオミクロン株による新型コロナ再拡大懸念から円安が進み、12月20日の円相場は1ドル=113円台半ばで推移している。東証1部、2部に株式上場する主要メーカーの2022年3月期の期初想定為替レート平均は1ドル=105.5円で、想定以上の円安が進行している。
東京商工リサーチが12月1日~9日に実施したアンケート調査で、円安が自社に「不利」と回答した企業の割合は約3割(29.2%)を占めた。
一方、「有利」と回答した企業は4.9%、「どちらでもない」と回答した企業は65.7%だった。「不利」と回答した企業は、「有利」と回答した企業の約6倍に達し、内需型産業や原材料・製品などの輸入依存が高い企業を中心に、円安のマイナスの影響がジワリと広がっている。
円安を「不利」と回答した企業の約8割(77.9%)が、資材・素材、燃料代などの上昇による間接的なコスト増を経営リスクに挙げている。
冬場の需要期に入った灯油、年末年始のガソリン価格の高騰に加え、資材のコストアップに円安が追い打ちをかけ、コロナ禍で苦境が続く企業の収益への悪影響が懸念される。
- ※本調査は、2021年12月1日~9日にインターネットによるアンケート調査を実施し、有効回答6,914社を集計、分析した。
資本金1億円以上を大企業、1億円未満(個人企業等を含む)を中小企業と定義した。
前回調査は、2014年11月26日発表。
Q1.円安は貴社の経営にとって有利ですか、不利ですか?(択一回答)
円安が経営に「不利」は約3割
円安の経営への影響について、「有利」と回答した企業は4.9%(6,914社中、345社)にとどまったのに対し、「不利」は29.2%(2,024社)、「どちらでもない」は65.7%(4,545社)だった。
「不利」は、前回調査(2014年)の48.4%を19.2ポイント下回った。海外への生産移転が進み、為替相場の影響が軽減した企業が増えたことも背景にあるとみられる。
企業規模別では、「不利」は、大企業が29.26%(1,121社中、328社)、中小企業が29.28%(5,793社中、1,696社)で差はなかった。一方、「有利」は、大企業が6.8%(77社)に対し、中小企業は4.6%(268社)で2.2ポイント下回った。
業種別では、「有利」は「各種商品卸売業」31.1%(45社中、14社)のほか、「電子部品・デバイス・電子回路製造業」22.5%(80社中、18社)など、製造業が中心だった。
一方、「不利」は「繊維・衣服等卸売業」69.6%(56社中、39社)や「食料品製造業」60.3%(207社中、125社)など、製品や原材料を輸入に頼る、内需向け業種が目立った。
Q2. Q1で「不利」と回答された方に伺います。円安の貴社の経営へのリスクは以下のどれですか?(複数回答)
間接的コスト増が約8割
Q1で「不利」と回答した企業のうち、2,020社から回答を得た。
最多は「資材・素材、燃料代などの上昇に伴う間接的なコスト増」で、77.9%(2,020社中、1,575社)に達した。
次いで、「輸入品の価格上昇に伴う直接的なコスト増」65.5%(1,325社)、「消費財の値上げによる消費の冷え込み」26.1%(528社)と続く。
規模別では、「直接的なコスト増」が大企業で68.5%(328社中、225社)に対し、中小企業は65.0%(1,692社中、1,100社)。
「間接的なコスト増」は、大企業78.6%(258社)に対し、中小企業は77.8%(1,317社)で、円安による「コスト増」を経営リスクと認識している割合は大企業が上回った。
「その他」では、「現地での費用高騰」(旅行業、資本金1億円以上)、「海外企業への委託費のコスト増」(受託開発ソフトウェア業、資本金1億円未満)、「海外本社への支払いレートが従来より不利」(医薬品卸売業、資本金1億円未満)など。
Q3. 貴社にとって望ましい円相場は1ドルいくらですか?(択一回答)
円安が「不利」な企業の望ましい円相場、平均値は1ドル=107円
望ましい円相場について、円安が「有利」な企業と「不利」な企業で分類した。
「有利」企業の最多レンジは「110円以上115円未満」の40.6%(214社中、87社)だった。平均値は1ドル=113円で、「有利」企業には現水準は最も望ましい相場となっている。
一方、「不利」な企業の最多レンジは「105円以上110円未満」の35.7%(1,181社中、422社)だった。「100円以上105円未満」と回答した企業も27.6%(327社)を占めた。
平均値は1ドル=107円で、「有利」企業とは6円の差がついた。円安が「不利」な企業にとって、現状以上の円安進行は経営上の大きなリスクになりそうだ。