負債1,000万円未満の倒産 累計437件、新型コロナ関連倒産は20.1%【2021年1-11月】
2021年1-11月の負債1,000万円未満の企業倒産は437件(前年同期比25.0%減)だった。2021年は3月と5月を除き、前年同月を下回り、落ち着いて推移している。
負債1,000万円未満の新型コロナ関連倒産は88件(2020年2-11月36件)で、前年同期の2.4倍に達した。負債1,000万円未満の倒産のうち、5社に1社(構成比20.1%)が新型コロナ関連倒産だった。
産業別で、最多はサービス業他の209件(前年同期比25.8%減)で、全体の47.8%とほぼ半数を占めた。このうち、コロナ禍で時短営業、酒類提供の自粛などを要請されていた飲食業は62件(前年同期比34.7%減、構成比14.1%)にとどまり、給付金や協力金などの支援に下支えされた格好だ。
原因別では、最多は「販売不振」の323件(同22.3%減、同73.9%)。前年同期を2.6ポイント上回り、業績不振が経営を直撃したことを示している。資本金別では、1,000万円未満が406件(同24.9%減、同92.9%)と、小・零細規模の企業がほとんどを占めた。
コロナ禍の資金繰り支援策は、小・零細規模の事業者にも浸透している。ただ、4月以降、金融機関の支援策は本業支援にシフトしてきた。10月から緊急事態宣言などは全面解除されたが、過剰債務を抱え、業績回復が遅れた企業には新たな支援策が課題になっている。
長引くコロナ禍で小・零細事業者の経営体力は疲弊し、新たな給付金、助成金も期待できない。経済活動が動き出すと運転資金の需要も活発になるが、支援策に依存した事業者のなかには厳しい先行きから廃業の決断が増える可能性もある。今後、事業再構築や経営再建に向け、資金繰り支援だけでなく、種々の下支え策が必要になってくるだろう。
- ※本調査は、2021年1-11月に全国で発生した企業倒産(法的、私的)のうち、通常の企業倒産集計(負債1,000万円以上)に含まれない、負債1,000万円未満の倒産を集計、分析した。
倒産437件、5社に1社が新型コロナ関連倒産
2021年1-11月の負債1,000万円未満の企業倒産は437件(前年同期比25.0%減)で、1-11月としては2017年同期(445件)に並ぶ低水準にとどまった。
コロナ関連の支援策に支えられ、2021年は3月(前年同月比8.1%増)、5月(同123.5%増)を除く9カ月で前年同月を下回っている。
負債1,000万円未満の倒産のうち、新型コロナ関連倒産は88件(2020年2-11月36件)で、構成比は20.1%と5社に1社にとどまった。
10月から緊急事態宣言などが全面解除され、本格的な事業再開に向かう途上で、新たな変異株(オミクロン)が世界で感染拡大している。コロナ禍で疲弊が進み、新たな借入も難しい状況が続くなかでの第6波への懸念がどう影響するか注目される。
【産業別】10産業のうち、6産業で減少
産業別は、10産業のうち、増加が4産業、減少が6産業だった。
産業別の最多は、サービス業他の209件(前年同期比25.8%減)で、1-11月としては、2年ぶりに前年同期を下回った。ただ、負債1,000万円未満の倒産に占める構成比は約5割(47.8%)だった。
そのほか、不動産業8件(前年同期比20.0%減)は3年連続、建設業62件(同23.4%減)は2年連続、卸売業36件(同30.7%減)と製造業14件(同53.3%減)は2年ぶり、情報通信業23件(同54.0%減)は4年ぶりに、それぞれ減少した。
一方、農・林・漁・鉱業7件(同40.0%増)は4年連続、運輸業15件(同15.3%増)は2年連続、小売業60件(同1.6%増)は3年ぶり、金融・保険業3件(同200.0%増)は5年ぶりに、それぞれ増加した。
負債1,000万円未満の新型コロナ関連倒産では、最多がサービス業他の52件(構成比59.0%、前年同期21件)で、前年同期の2.4倍に増加。このうち、「酒場,ビヤホール(居酒屋)」8件(前年同期1件)、「バー,キャバレー,ナイトクラブ」5件(同1件)などが増加し、緊急事態宣言などによる休業や時短営業の影響を大きく受けた。
【形態別】破産422件で、構成比は96.5%
形態別は、法的倒産が435件(前年同期比25.0%減)だった。負債1,000万円未満の倒産に占める構成比は99.5%(前年同期99.4%)で、1-11月では2012年以降の10年間で最高を記録した。法的倒産のうち、「破産」が422件(前年同期比25.4%減)で、構成比は9割以上(97.0%)。
「民事再生法」は8件(前年同期11件)で、すべてが小規模個人再生手続きだった。
また、「特別清算」は5件(同3件)、「取引停止処分」は2件(同3件)だった。
負債1,000万円未満は小・零細企業が中心で、先行きの見通しが立たないことで事業継続を断念するケースが多く、ほとんどが消滅型の「破産」となっている。
【原因別】販売不振の構成比が7割以上
原因別の最多は、「販売不振」の323件(前年同期比22.3%減、構成比73.9%)で、2015年同期以来、6年ぶりに前年同期を下回った。
また、「既往のシワ寄せ(赤字累積)」は22件(同12.0%減、同5.0%)で、2年ぶりに減少。
『不況型』倒産(既往のシワ寄せ+販売不振+売掛金等回収難)は345件(前年同期比22.2%減、前年同期444件)だった。負債1,000万円未満の倒産に占める構成比は78.9%で、前年同期の76.1%より2.8ポイント上昇した。
そのほか、代表者の病気や死亡を含む「その他」は28件(前年同期比33.3%増)。「他社倒産の余波」は33件(同47.6%減)で、関連企業の連鎖倒産が大半を占めた。
また、「事業上の失敗」は13件(同64.8%減)、「運転資金の欠乏」は11件(同26.6%減)で、設立10年未満の企業がほとんどだった。
【資本金別】1千万円未満の構成比が92.9%
資本金別では、「1千万円未満(個人企業他を含む)」が406件(前年同期比24.9%減、前年同期541件)で、1-11月では2015年以来、6年ぶりに前年同期を下回った。負債1,000万円未満の倒産に占める構成比は92.9%で、前年同期(92.7%)より0.2ポイント上昇した。
内訳は、「1百万円以上5百万円未満」が149件(前年同期比27.3%減、前年同期205件)、「個人企業他」が146件(同23.9%減、同192件)、「1百万円未満」が73件(同12.0%減、同83件)、「5百万円以上1千万円未満」が38件(同37.7%減、同61件)だった。
そのほか、「1千万円以上5千万円未満」が30件(同28.5%減、同42件)。
「5千万円以上1億円未満」は1件で、3年ぶりに発生。
「1億円以上」は2年連続で、発生がなかった。