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日弁連・宮原一東弁護士 「特定調停スキーム」インタビュー(後編) ~ 事業再生、相談が早いほど取れる手立てが増える ~

―会社と経営者の同時破産は約7割との調査結果がある

 同時に破産しなかったなかには会社は破産しても、個人の財産などで全部弁済しているため個人は破産しないケースもあるのではないだろうか。あくまで肌感覚だが、経営者が会社の保証をしているケースは7割よりもっと多い印象だ。
 経営者保証に関するガイドラインは、事業の失敗で個人破産までしなくていい(再チャレンジを認める)というのが根底の考え方。倒産件数の背後には同じくらい保証債務があるはずで、それと比較すると経営者保証に関するガイドラインの利用もまだまだ少ない。利用がもっと増えないと、個人破産したくないから会社は経営不振のままでも何も手を付けないということに繋がる。

宮原先生

‌インタビューに応じる宮原弁護士

―廃業支援について

 日弁連が提示する手引3(廃業支援型)は、金融機関に債権カットをしてもらったうえで任意で廃業し、破産もしないパターンだ。経営者は取引先に迷惑をかけたくない方が大多数で、任意での廃業を目指したいと考える。
 順序として、まずは再生を目指す(手引1や支援協を活用)。再生が難しく廃業になる場合は手引3を通じて任意での廃業。これも難しく、どうしても会社は破産せざるをえない場合でも、個人は破産させない(手引2、ガイドライン単独型)という流れを推奨している。

―廃業支援型を選択するメリットは

 特定調停以外に事前調整や協議をするような廃業支援型を選択できるスキームが他にない(REVIC特定支援や特別清算程度)。債務者側から主導して金融機関と協議できる場は手引3の廃業支援型の特定調停のみといえる。
 経営者がなぜ廃業支援型を希望するかといえば、取引先に迷惑をかけたくないという点が大きい。事業の引受け先がなくても経営者の心情として破産で会社を終わらせるのはうしろめたく、また、地域の名士などの場合は破産が難しいケースもある。金融機関から弁護士に手仕舞いの仕方を教えてくださいと案件を紹介されることもある。

―どういう状態であれば廃業スキームは可能か

 債務超過に転落する前であれば通常清算になるので、まずはこれが一つのライン。仮に債務超過でも、商取引債務や公租公課は払えるが金融債務までは厳しいという範囲であれば、再生を目指せる可能性がある。再生が無理でも廃業支援型スキームを使えるパターンともいえるだろう。
 ただそれ以上に深刻化すると、なかなか難しい。特に商取引債務や公租公課の未払い、退職金などの規模によっては任意の廃業や私的再生が難しくなる。とはいえ、再生の場合であればスポンサーによっては退職金などを引き継いでくれるパターンもあったりするので、再生を目指せる場合もなくはない。
 商取引債務や公租公課に多額の延滞が生じているような場合だと任意の廃業は難しい。手引1や手引3の利用は厳しく、主債務者(企業)が破産したうえでの手引2の検討になる。

―相談を受ける時点で手遅れのケースも多いのか

 手遅れになっているケースは多い。一方で、金融機関の方が心配して早めに弁護士に繋いでくれるケースもある。こういう場合は債務超過であっても、まだ対応の余地がある事業者は多い。金融機関が果たす役割は非常に大きく、事業の改善や再生に対し、金融機関がどれだけ強く背中を押せるかが重要だ。
 さらに悲惨なのは、経営者個人で消費者金融や親族、従業員などから借金しているケース。金融機関以外の借金が多いと、経営者保証に関するガイドラインの利用が難しくなる。
 このほか手遅れなのは、違法と思われる高利率のファクタリングと称する業者に手を出してしまっているケースだ。ファクタリング業者は弁済がなければ、売掛金を押さえてしまうので事業者に売掛金が入らず、あっという間に資金がショートする。そうなると再生や廃業は難しく、法的整理をせざるをえない。
 弁護士への相談は直接でも金融機関からの紹介でも構わないが、タイミングは早ければ早いほど、取れる手立ても豊富だ。

―特定調停スキーム利用促進における課題は

 1点目としてはそもそも特定調停スキームが事業再生を手掛ける弁護士や金融機関、中小の事業者に周知が十分ではない点。
 2点目は、日弁連の特定調停スキームには第三者の意見を取る仕組みがない点。例えば支援協や東京地裁民事20部の特定調停では第三者意見をとっている。金融機関としても、第三者意見があれば再生計画に合理性がある、実行可能性があるなどを判断でき、行内で稟議を上げやすいとの指摘をもらう。
 3点目は、再生や廃業を扱う弁護士に特定調停スキームへの理解が不足していることがある。破産や民事再生を行うが、本当なら私的整理でも可能だったというパターンもある。ノウハウやスキームについて、弁護士自身のスキルアップのための研修も必要といえる。

―特定調停スキームの利用は増えるか

 新型コロナで過剰債務に陥った中小企業は多く、抜本的な処理が必要な事業者は今後増えてくると考えている。そのため日弁連の特定調停手引きに関しても使い勝手良く、さらに周知して利用してもらえるようにしたい。 残念ながら税金滞納などで再生や廃業が難しいケースも出てくるだろう。そういう場合はどうしても事業者は破産になる。それでも保証人(経営者)は経営者保証に関するガイドラインを通じて破産までは追い込まれないよう再チャレンジの余地を残すなど、特定調停(手引2)を通じた支援を広げていきたい。


 コロナ禍で事業環境が悪化するなか、特定調停スキームは事業再生や廃業を望む経営者の選択肢の一つとして、活用が期待される。
 日弁連では、事業者向け法律相談の予約窓口「ひまわりほっとダイヤル」(電話0570-001-240)を開設し、中小企業支援にも力を入れている。事業再生や廃業の方法を検討している場合、専門家の手を借りることで新たな視点からの打開策も見えてくる。


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2021年11月26日号掲載予定「WeeklyTopics」を再編集)

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