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日弁連・宮原一東弁護士 「特定調停スキーム」インタビュー(前編) ~ 事業再生は「私的整理から検討」が大前提 ~

 裁判所が仲裁役になって債務者と債権者との利害関係を調整する「特定調停」に注目が集まっている。
 日本弁護士連合会(日弁連)は2013年12月、中小企業金融円滑化法の終了を受け、「金融円滑化法終了への対応策としての特定調停スキーム利用の手引」を策定した。また、2014年12月に経営者の保証債務を整理するための「経営者保証に関するガイドラインに基づく保証債務整理の手法としての特定調停スキーム利用の手引」を策定し、特定調停の利用を促してきた。特定調停は、破産などの法的倒産に頼らない債務整理の手段としてコロナ禍に苦しむ小・零細企業や経営者の支援策にも期待されている。
 日弁連中小企業法律支援センター事務局次長を務め、事業再生に豊富な実績を持つ宮原一東弁護士(桜通り法律事務所、千代田区)に特定調停の現状や今後について話を聞いた。


―「特定調停スキーム利用の手引」とは

 日弁連が提示する特定調停スキーム利用の手引は3つ。手引1は事業者の再生を支援する手法(=一体再生型)。金融円滑化法の終了に伴い、リスケで持ちこたえていた企業への対応として、破産などの法的整理でなく私的整理で対応できる手段として提示した。
 手引2は経営者保証に関するガイドラインに基づく保証債務整理の手法(=単独型)。手引3は事業者の廃業・清算を支援する手法(=廃業支援型)というものだ。
 もともと特定調停は事業者にとってメジャーな債務整理の手法ではなく、消費者金融問題などからの個人の救済が中心だった。このため、過払い問題や総量規制による多重債務者問題が落ち着いて以降、利用が減少した。ただ、せっかく債務整理のための仕組みがあるので、中小企業や個人事業主への支援の手段として利用できないかということで日弁連が中小企業庁、最高裁などと協議して手引が作成されたという背景がある。

―民事再生や破産と特定調停の違いは?

 特定調停は法律に基づくものだが、基本的には債権者と個人が相対して行うもので、任意整理や私的整理の枠組みの一つとしてとらえることができる。破産や民事再生のような法的整理と異なり、対象債権者を金融機関のみに限定でき、商取引債権者を巻き込まないことが可能だ。

―特定調停を利用することの効果は?

 再生型(手引1)の特定調停は、法的整理でなく私的整理であることが大きい。
 基本的に事業再生の相談を受けた時は、まず私的整理から考えるのが一般的だ。商取引債権者を巻き込まないようにして事業価値の毀損を防ぐためだ。
 法的整理では、金融機関との関係が決定的に悪化することもあるが、金融機関の支援がなければ事業継続ができない業種もある。スポンサーがすぐにつけば別だが、そうでなければ基本的には私的整理で考えるのが大前提。特定調停のスキームも私的整理の一つとして位置付けられている。
 一方、私的整理のなかにも多くの類型がある。債務整理をしないリスケに関しては現状、金融機関はとても柔軟だ。抜本的な処理をしないのであれば相対協議で済むケースが多い。ただ、抜本的な処理が必要な場合、相対交渉のみでは、現実的には債権放棄の協議は金融機関から受け入れてもらえず、一定のルールに基づいた解決(準則型私的整理)が求められる。中小企業にとってポピュラーなのは中小企業再生支援協議会(支援協)だ。小規模事業者であれば特定調停スキーム、事業規模が大きくなれば事業再生ADR、地域経済活性化支援機構(REVIC)などが私的整理スキームとして位置付けられている。

宮原先生

‌インタビューに応じる宮原弁護士

 中小企業の抜本再生への対応としては、支援協が介在して再生計画を立てる手法が最もポピュラーである。ただし、小規模零細事業者など、どうしてもこぼれ落ちる事業者もある。今まではそうした事業者を救う手立てがなかった。全て相対交渉に持ち込まれては金融機関側も対応できない。そういう背景から特定調停に光が当たった。
 特定調停の大きな特徴として、調停委員という第三者の関与がある。当事者同士が合意すれば何でも良いわけでなく、調停の内容は公平かつ合理的で、経済的合理性が担保される必要があるため、金融機関との調整がスムーズにいきやすい。
 また、民事調停法17条(※1)の存在も大きい。途中までは支援協による再生が進んでいたが、どうしても金融機関から最終的な賛同が得られない場合、実務的には最後の処理方法として特定調停を利用することも考えられる。

  • ※1当事者が決定の告知を受けて2週間以内に異議申し立てをしなければ、調停成立と同様の効力が生じる。私的整理による事業再生では、原則として積極的な賛成が必要だが、特定調停なら17条決定を利用して再生計画案を成立させることが可能になる。

―金融機関側としても、17条決定を出してもらうと賛成も異議も出さずに済み、計画案を成立させやすいと聞く

 金融機関内でも債権放棄の稟議をあげるのは骨が折れるが、反対まではしないというようなケースだ。17条決定は事業再生というより手引2の単独型【主債務者(企業)は破産などの法的整理をし、保証人(経営者)のみ経営者保証に関するガイドラインに基づいて、保証債務の整理に特定調停を利用する】で利用されるケースが最も多いだろう。

―経営者保証に関するガイドラインの利用状況は

 経営者保証に関するガイドラインの件数、もしくは弁護士への浸透具合は、一時に比べて高まってきているとは感じる。金融機関の理解も徐々に高まってきているようだ。支援協もここ数年で経営者保証に関するガイドラインを利用した再チャレンジ支援に力を入れるようになった。全国8ブロックに弁護士を常駐させ、企業は廃業しても経営者は再チャレンジしやすくする支援に積極的に取り組む方向に舵を切った。日弁連でも各地の弁護士会に経営者保証に関するガイドラインの利用についてアナウンスした効果もあり、増えつつあると感じている。

(続く)

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2021年11月25日号掲載「WeeklyTopics」を再編集)

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