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新生銀行、工藤社長 公的資金返済「SBIも特別な案は持っていない」 単独インタビュー(前編)

 国内の銀行界で初の敵対的買収に発展したSBIホールディングス(株)(TSR企業コード:293749795、東京都港区、東証1部、以下SBI)による(株)新生銀行(TSR企業コード:299003973、東京都中央区、東証1部)へのTOB(株式公開買い付け)。新生銀行が11月25日開催の臨時株主総会で導入を目指す買収防衛策の動向が注目されている。
 東京商工リサーチ(TSR)は、新生銀行の工藤英之・代表取締役社長に単独インタビューした。工藤社長は、現条件でのTOBについて、SBIが公的資金返済スキームに関し、新生銀側に具体的な回答を示していない点を指摘する。TOBへの対応や公的資金返済など、今後の見通しを聞いた。

新生銀工藤社長1

取材に応じる工藤社長(11月上旬、都内)

―SBIのTOBに反対する理由は

 今回の意見表明は普通ではなく、今のSBIのTOBの条件には反対だが、条件を改善してもらえば賛同するという全体像になっている。

―“普通でない”とは?

 一つは(SBIが)部分買い付けで株式を合計48%取得し、経営権を持つこと。この部分買い付けは、日本のTOBのあり方の課題として議論されている。海外だと認められないこともあり、米国だと部分買い付けが可能な代わりに一部防衛策が認められている。
 日本の場合、部分買い付け自体は違法ではない。ただ、今回のように経営権取得がセットになると、残りの株主は新しい経営主体による経営方針や、企業価値の高め方について判断を迫られる。結果、新しい経営主体の方針に賛同するならいいが、「それは嫌だ」という株主は株を売りたくても売れなくなる。

―自らの意思に反して株が残ることになる

 法律的には強圧性で説明される状況となる。今回の場合、新しい経営主体の下で経営体制とか資本、人材、経営資源をどこに使うといった経営戦略や、アロケート(配分)を講じていくはずだ。だが、(SBI側から)何も提示されていない。
 情報開示を質問状という形でお願いしたが、回答の中には入っていなかった。この状態を治癒するためには、(株を)売りたい人は、皆買ってもらえる状態にしてくださいというのが一つ目の条件だ。

―もう一つの条件は?

 買収プレミアムだ。経営権を取るからには、コントロールプレミアムが乗るはずだが、(SBIが新たに)買い付ける28%分にしかプレミアムが乗らないため、均すと他の株主が受け取れるプレミアムが非常に小さい。直近の株価に対し約13%にしか当たらない。これは会社の経営権を取るためのプレミアムとしては小さすぎるのではないか。
 『本来ならこれぐらいの価値がある』とする事業価値評価をフィナンシャルアドバイザーにしてもらった。その価値に照らし、今回の2000円というTOB価格は「低い」と判断された。

―SBI側は買い付け価格の引き上げには「応じない」としている

 ただ漠然と「価格を上げてほしい」と言っても仕様がないので、日本では珍しいケースだがフィナンシャルアドバイザーからインアディクエシーオピニオン(TOB価格が適正か、適正でないかの意見)をもらい、織り込んでいないと思われる新しい材料も提供した。
 (SBIによるTOBに)反対とは言っているが、実際には反対ではなくて建付けとか価格とか、より改善しないと他の株主にとって不利ではないかということだ。

―臨時株主総会でしか決着はつかないのか

 それはSBI次第。我々が申し出ている中身の協議にはまだ至っていないが、コミュニケーションはとっている。だが、この二つの条件(48%を超えたTOBの実施と、買い付け価格の引き上げ)以外の部分についても、明確なスタンスは示されていない。いずれにせよ株主総会の開催も、今後のやり取り次第だ。

―SBI側から公的資金返済についての策は

 2019年に一度、(SBIから)資本業務提携の話があった。当時は、「公的資金返済を手伝える。その代わりグループに入ったらどうか」という提案だった。個別具体的な業務シナジーの議論はしていないが、その際に提案された公的資金返済スキームというのがどう見ても 株主平等原則に抵触する内容だった。
 国は目標とする回収額があって、それを株価に換算すると1株7450円。だが、国に7450円の価値を渡すためには、他の株主にも同じ価値を提供しないといけないが、そうはなっていなかった。当時、(SBIには)「これは実行できない」と返答した。

―今回については?

 公的資金返済スキームについて、今年9月に1回目の意見を留保した際、質問状を出した。それに対する回答は何もなかった。(返済スキームについては)基本的に『新生銀行側が考えることである』と書いてあるだけだった。SBI側も特別な案があるわけではない。

―公的資金の返済について、SBIの北尾社長が、会見で新生銀の経営陣を侮辱するような ことを言っていた。それに対して反論は?

 (北尾社長の会見での発言は)失礼な言い方だ。ただ、それが失礼であることと、公開買い付けが株主にとってどういうメリット・デメリットがあるかというのは、また別な話。感情論にしても意味はない。 そうではなく、株主の立場からどういう意見表明をすべきか。我々はわざわざ取締役会とは別に独立社外取締役だけを集めた協議会を作り、そこで議論して意見を出した。 取締役会全員として、今回のSBIの進め方は立派な企業の振る舞いとしていかがなものかと思っている。ただ、その話は意見表明の内容には影響していない。淡々と株主の立場からみるとどうなのかということをやっているだけ。


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2021年11月11日号掲載「WeeklyTopics」を再編集)

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