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【取材の周辺】民事再生のエル・エム・エス、軌道修正を迫られた再生計画

 2019年11月に民事再生法の適用を申請した理化学・医療機器販売の(株)エル・エム・エス(TSR企業コード:292272499、文京区、負債総額66億円)は、珍しい清算型の民事再生に切り変わった。一時は再建を目指したものの、新型コロナでスポンサーが見つからず、清算に舵を切らざるを得なかった。
 取扱品は、研究機関から一般医療用の試薬・消耗品まで幅広く、医療品商社として知名度は高かったが、業績悪化の他にも長年にわたる取引先との不適切な取引や、粉飾決算も発覚して関心を集めた。
 当初、スポンサー支援による再生を目指したが、20年6月末で営業をストップ。それでも5カ月後の11月、裁判所に「再生計画案」を提出、債権者集会では賛成多数で可決し、再生計画が認可された。
 民事再生の申請から1年10カ月。「事業実体なき再生計画」はどういう経緯で作られ、現在に至るのか。その後の顛末を追った。

エル・エム・エス

‌エル・エム・エスが入居していたビル
(2019年11月TSR撮影、現在ビルは解体されている)

不適切な取引先支援を支えきれず

 エル・エム・エスは「管理型」の民事再生事件だ。管理型は、裁判所から保全管理人を選任され、代表取締役に代わって会社の経営権や財産の管理処分権など強い権限を持つ。
 長年、前社長が主導して売掛金や貸付金の名目で取引先に資金援助を続け、決算を粉飾するなどガバナンス面で問題を抱えていた。こうした経緯もあって保全管理人がその後の経営全般を掌握する管理型の民事再生が選択された。
 問題となった資金支援はもともと得意先が潰れないように救済する目的だった。だが、自身の力量を超えた支援が資金繰りを圧迫し、不良債権が滓のように沈殿した。
 当然だが、エル・エム・エスの破たんで、支援先とされた複数の取引先が連鎖的に行き詰まった。

コロナ禍でスポンサー契約が頓挫

 一方で、これまでの当社の実績や広範囲にわたる商圏、事業性を評価する声もあった。当初は複数の企業がスポンサーとして関心を寄せた。申請直後に開催した債権者向け説明会でも、スポンサー候補としてすでに数社から打診が来ていることを明かし、会社側は再建への意欲を見せていた。
 スポンサーへの事業譲渡を目標に交渉を重ね、20年3月には、医療関連商社とのスポンサー契約がまとまりかけた。
 ところが、折しも新型コロナウイルスの感染が国内でも拡大し、社会経済が大きく混乱した時期と重なった。「スポンサー候補者においても従前の経営計画を実現できるか見通せなくなり、5月の連休明けになって、スポンサー候補者から事業譲渡の交渉を進めることは無理であるとの意向表明を受けるに至った」(再生計画案より)。
 またこの間、コロナ禍に加え、主要取引先との取引終了などで事業価値が大きく毀損し、事業継続の見通しが立たなくなった。
 これ以上のスポンサー探しが難しい状況に追い込まれ、ついに事業継続をあきらめ、20年6月末で全事業を停止した。
 同日、従業員の大部分を解雇し、残務処理を経て7月末には本社事務所や倉庫を引き払った。

一転、「清算型再生計画」へ

 スポンサー不在などの理由で、再生計画が作れない場合、大半の民事再生手続は廃止され、裁判所の職権で破産へ移行する。
 だが、稀に清算を前提とした計画(清算型再生計画)を作ることがある。エル・エム・エスの選択もこれだった。
 清算型再生計画は、破産手続きに移行した場合と比べ、債権者に有利かどうかがポイントになる。当社の場合、債権者への再生債権の弁済率を16.0%(少額債権30万円までは100%弁済)確保し、清算した場合の予想破産配当率15.58%をわずかに上回った。
 スポンサー支援を目指した当初の計画から大きく軌道修正し、換価した財産を債権者に弁済した後に解散・清算する清算型へ変更した。
 こうして20年11月に迎えた債権者集会。「清算型再生計画案」は賛成212名、反対はわずか8名で賛成可決された。

計画通りに弁済、清算へ

 もし、再生計画が反対多数で認可されなかったとしても、破産に移行して清算される。当社の場合、すでに事業停止しており、民事再生でも破産でも結果にさほど変わりはない。
 債権者側からすれば、この計画に反対したところで何のメリットもない。これが賛成多数で可決された理由かも知れない。
 21年3月、エル・エム・エスは債権者へ弁済を実施した。この8月には法人税の課税減額を目的に資本金を2億9,800万円から1,000万円に減資した。民事再生手続きは計画通りに着々と清算に向かっている。


 「たら、れば」を言っても無意味だが、もし、コロナ禍のタイミングでなければ、再生計画は違った結果になったかもしれない。
 ただ、清算型に切り替え、約150名の従業員が全員解雇され事業も霧消した。民事再生手続きは、「清算」として近いうちに終結を迎える。この事実は重い。
 民事再生は再生型の倒産法で、破産は消滅型に分類される。企業倒産に関わる人ならば常識だが、今回のようなケースに遭遇すれば、両者のボーダーラインは実はあいまいで紙一重と感じるだろう。
 逆に、破産の場合でも経営陣や資本を一新した第2会社を作り、事業や従業員を丸ごと移管させるケースもある。こうなると会社が消滅型でも、従業員や取引先の立場からすると再生型ともいえるだろう。関わり方や立場・視点によって再生か消滅かの意味合いは大きく変わってくる。
 「何のための再生か」、「誰のための再生か」。様々なステークホルダーの立場で突き詰めて考えると、会社再建への評価は一面的にみることができない。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2021年9月16日号掲載予定「取材の周辺」を再編集)

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