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酒類の提供自粛や休業が居酒屋を直撃 9割が減収、赤字は約7割(2020年度)

 新型コロナ感染拡大に伴う緊急事態宣言は、19都道府県で9月30日までの延長が決定した。一方で、酒類提供を含む制限緩和の議論も始まったが、居酒屋の経営環境は厳しい状態が続いている。
 コロナ禍の影響が直撃した2020年度だったが、主な「酒場,ビヤホール(居酒屋)」運営会社は、売上高が3,903億7,400万円(前期比45.6%減)、最終利益は1,110億2,700万円の赤字(前期は103億6,500万円の赤字)だった。コロナ禍で居酒屋は約3,300億円の売上が蒸発し、赤字幅は約1,000億円拡大した。
 また、減収企業は92.1%(前期43.8%)、赤字企業は69.4%(同28.0%)に達した。
 居酒屋は酒類提供を前提としており、緊急事態宣言下での営業時間の短縮などにより酒類の提供が困難になると、業績悪化に直結する。対象地域では休業協力金などの支給はあるが、コロナ禍の収束が見通せず、顧客の生活様式も変化し、これまでのビジネスモデルの見直しも求められている。

  • 本調査は、TSR企業データベース390万社から、日本標準産業分類の「酒場,ビヤホール」を抽出、分析した。
    最新決算期を2020年4月期-2021年3月期とし、前期(2019年4月期-2020年3月期)、前々期(2018年4月期-2019年3月期)と比較可能な主要「酒場,ビヤホール」317社を集計対象とした。

居酒屋 減収9割、赤字は約7割

 居酒屋317社の最新期決算(2020年4月期-2021年3月期)の売上高合計は、3,903億7,400万円(前期比45.6%減)、最終利益の合計は1,110億2,700万円の赤字(前期は103億6,500万円の赤字)だった。
 売上高は2019年度は前期比2.7%増だったが、2020年度はコロナ禍での外出や会食の自粛、緊急事態宣言に伴う休業・時短営業で実質的に酒類提供が制限されたこともあり、大幅な減収となった。
 利益合計は2期連続の赤字となった。2019年度は人手不足による人件費高騰などで収益が圧迫され、前期比249.0%減で赤字に転落。2020年度は新型コロナの影響で、さらに赤字幅が拡大した。

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減収企業が92.1%に、前期から倍増

 最新期の減収は292社(前期139社)で、全体の92.1%に達した。減収企業率は、前期の43.8%から48.3ポイント増と大幅に増えた。一方、増収は14社(構成比4.4%、前期124社)にとどまり、構成比は前期の39.1%から34.7ポイント減少した。時短・休業要請に伴う客の減少が、居酒屋の業績に直撃した格好だ。

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赤字企業が約7割、前期から約2.5倍に増加

 最新期で最終利益が赤字の居酒屋は、220社(構成比69.4%)で約7割を占めた。前期(89社)の約2.5倍に増加し、コロナ禍に伴う経営環境の激変で赤字に転落した居酒屋が激増した。

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減収企業の9割以上が前期比10%以上の大幅減収

 売上高の伸長率は、317社のうち、273社(構成比86.1%)が前期比10%以上の大幅減収だった。
 以下、減収率5~10%未満が13社(同4.1%)、同0~5%未満が6社(同1.8%)の順。
 売上が前期比50%以下は71社(同22.3%)で、最大の落ち込みは81.1%減だった。
 20時までの時短営業要請や感染防止対策での客席減少が、営業機会の損失に繋がり、深刻な影響を与えている。
 増収・横ばい企業の最多は増収率0~5%未満の17社(同5.3%)。次いで、同10~100%未満が5社(同1.5%)、同5~10%未満が3社(0.9%)だった。

減収減益が全体の8割、前期の3倍以上に

 最新期の減収減益は262社で、前期の80社から3.2倍と大幅に増加。構成比では8割以上(82.6%)を占めた。
 前期は72社だった増収増益はわずか4社にまで減少し、居酒屋の多くがコロナ禍での厳しい環境で苦戦を強いられたことが明らかになった。
 一方、増収減益は9社(前期49社)減収増益は23社(同40社)だった。


 2020年の居酒屋の倒産は、過去最多の174件を記録した。2021年はコロナ関連の各種支援効果などで、1-8月累計で100件(前年同期比12.2%減)と沈静化している。
 だが、コロナ禍の営業制限で居酒屋の業績は大幅に悪化している。居酒屋と同様、営業制限で業績悪化が続く飲食業の減収企業の割合は80.3%だったが、居酒屋は92.1%で11.8ポイント上回っている。赤字企業の割合も、飲食業全体では49.4%だったが、居酒屋は69.4%と1.4倍に跳ね上がり、営業時間の短縮や夜間の営業制限が業績悪化を加速したことがわかる。
 また、夏場にきて緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の地域外で、飲食業倒産が目立ち始めた。コロナ禍で消費者行動が変わるなか、支援なしの事業継続が難しい実態も浮き彫りになっている。
 ワクチン接種や陰性証明を前提とした行動制限緩和の方針も浮上しているが、外出自粛の長期化や在宅勤務の浸透で、居酒屋がコロナ以前の売上に回復できるかは不透明だ。
 減収や赤字が継続すると、体力の脆弱な企業は淘汰が進むことも懸念される。コロナ禍が直撃した居酒屋には、業態転換や新規事業への進出を促すだけでなく、アフターコロナの生活様式を見据えた幅広い支援が求められる。

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