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FATF第4次審査、金融機関や弁護士の一部で対策が不十分と指摘

 8月30日、FATF(金融活動作業部会)の対日審査報告書が公表された。第4次審査では日本の法制度や実効性が審査され、一定程度、マネロン対策は評価された。しかし、テロ資金の資産凍結や金融機関の顧客管理などの対策が不十分と指摘され、米国や中国などと同じ3段階評価のうち2番目の「重点フォローアップ国」となり、課題の残る結果となった。

 FATFは、マネロン・テロ資金供与対策のための国際基準の策定・履行を担う多国間の枠組み。金融庁によると、FATFの第4次審査結果は40の法令等整備状況「TC」のうち、非営利団体(NPO)の悪用防止の1項目が4段階で「不適」と評価された。テロ資金供与に悪用されるリスクがある一部のNPOに対し、具体的措置を講じていないとされた。
また、法人の実質的支配者を正確かつ最新の情報を入手する対策の不備など10項目が下から2番目に低い評価となった。
有効性「IO」では、国際協力や疑わしい取引に関する情報等の活用など3項目が4段階で上から2番目だった。金融機関等の監督など、残る全ては下から2番目の低評価だった。

審査結果は3段階評価の真ん中

 今回の審査対象29カ国のうち、日本や米国、カナダ、中国、韓国など19カ国が「重点フォローアップ国」と評価された。スペインやイタリア、英国など8カ国は「通常フォローアップ」、アイスランドとトルコの2カ国は「観察対象国」と評価された。
対日審査報告書では、大規模銀行など一定数の金融機関は、マネロン・テロ資金供与リスクについて適切な理解を有しているとした。
だが、一部の小規模な金融機関は理解が限定的と指摘。金融庁も「できている金融機関とできない金融機関の差が広がっている」とし、業界の底上げが必要との認識を示した。
報告書では会社の基本情報は、株主に関する詳細な情報を含めて、会社自身や法人登記から入手できるが、会社が保有する情報を適時に入手できるかどうかは明らかでなく、基本情報の提供を怠った場合の罰則は、一貫して適用されていないとの課題を指摘した。

リスクベースでのモニタリング

 FATFの審査結果を受け、政府は行動計画の概要を公表した。国のリスク評価書の刷新、金融機関等に対するリスクベースでの検査監督の強化、商業登記所が株式会社の実質的支配者情報を保管し、その旨を証明する制度の開始、大量破壊兵器拡散にかかわる居住者の資産凍結に関する検討などを進める。また、NPOのリスク評価を行い、リスクベースでのモニタリングもスタートする計画などを2022年までに進める。

 今回のFATFの対日審査報告書では、弁護士や不動産業者などDNFBPs(指定非金融業者・職業専門家)の対策不備も指摘された。
規模が小さく、予算や経験不足など対策が難しい金融機関やDNFBPsも多いが、資金洗浄対策は「待ったなし」だ。金融機関などの意識向上や対策強化の遅れは、国際的な金融の信頼が低下し、取引制限にも繋がりかねない。


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2021年9月1日号掲載予定「WeeklyTopics」を再編集)

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