最新の赤字法人率 65.4%で9年連続改善
国税庁が2021年3月26日に公表した「国税庁統計法人税表」(2019年度)によると、赤字法人(欠損法人)は181万2,332社だった。全国の普通法人276万7,336社のうち、赤字法人率は65.4%(前年度66.1%)で、前年度から0.7ポイント改善した。2011年から9年連続で改善し、調査を開始した2005年以降では最低となった。
都道府県別の赤字法人率は、ワーストが徳島県の73.0%(前年度73.7%)で、2007年度から13年連続のワーストとなった。一方、最も低かったのは沖縄県の60.8%(同59.7%)で、4年連続のトップとなった。地区別では、東北を除く8地区で赤字法人率が改善した。
産業別では、最も高かったのは小売業の73.9%(同74.7%)。以下、金融・保険業69.0%(同69.5%)、サービス業他68.0%(同68.5%)の順。赤字法人率が上昇したのは、10産業のうち、農・林・漁・鉱業、製造業、運輸業、卸売業の4産業だった。国土強靭化基本計画やオリンピック特需の恩恵を受けた建設業のほか、情報通信業などを中心に、収益改善が進んだ。
赤字法人率はリーマン・ショック後の2010年度に75.7%を記録したが、その後は改善し9年間で10ポイント以上低下した。ただ、新型コロナが影響した2020年度は、深刻な本業悪化に対して給付金や助成金が決算上の収益にどの程度寄与したか注目される。
- ※赤字法人率は、普通法人を対象に赤字(欠損)法人数÷普通申告法人数×100で算出した。
普通法人は会社等(株式会社、合名会社、合資会社、合同会社、協業組合、特定目的会社、相互会社)、企業組合、医療法人などを含む。
赤字法人率65.4% 9年連続の改善で調査開始以来最小に
2019年度の全国の普通法人276万7,336社のうち、赤字法人は181万2,332社(年2回の複数納税を含む)だった。赤字法人率は65.4%で、前年度より0.7ポイント低下し、赤字法人数も4,176社(前年度比0.2%減)減少した。
赤字法人率は、リーマン・ショック後の2010年度に75.7%を記録した。その後、9年連続で減少をたどっている。特に、2012年度から2017年度までは6年連続で1.0ポイント以上改善したが、 2018年度は0.5ポイントの改善にとどまり、2019年度は0.7ポイントの改善となった。
ただ、2020年度は新型コロナの感染拡大が深刻化しており、企業業績に与える影響が懸念される。
都道府県別 39都道府県で赤字法人率が改善
都道府県別では、赤字法人率が前年度より改善したのは39都道府県だった。また、全国の赤字法人率の65.4%を上回ったのは22都府県、下回ったのは25道府県だった。
赤字法人率の最低は、4年連続で沖縄の60.8%(前年度59.7%)。次いで、佐賀62.1%(同63.4%)、青森62.2%(同61.0%)、大阪62.3%(同63.3%)、福岡62.7%(同63.4%)の順。
建設投資に占める公共工事の割合が高い沖縄では、公共工事受注のため赤字決算を避ける傾向があるほか、観光やインバウンド需要が好調で赤字法人率の低さに影響したとみられる。ただ、赤字法人率は2年連続で悪化し、3年ぶりに60%台に乗せた。
赤字法人率のワーストは、徳島の73.0%(同73.7%)で、13年連続でワーストが続いている。次いで、長野70.0%、栃木68.9%、香川68.8%の順。
徳島は、地場産業の木工関連の不況に加え、少子高齢化や人口減少で飲食業などのサービス業他の業績低迷が続くほか、医療法人・福祉関係では競合もあり、赤字法人率の高さに繋がっている可能性がある。
赤字法人数、34道府県で減少
都道府県別の赤字法人数は、34道府県で減少した。減少率の最大は、福島で前年度比2.3%減(2万5,396→2万4,807社)。次いで、富山の同1.58%減(1万2,420→1万2,223社)、神奈川の同1.53%減(12万566→11万8,716社)、和歌山の同1.3%減(9,907→9,777社)の順。
一方、増加率では、沖縄が前年度比6.1%増(1万4,827→1万5,743社)、熊本が同2.7%増(2万3,051→2万3,695社)、高知が同1.9%増(7,567→7,715社)、青森が同1.7%増(1万1,798→1万2,008社)の順で、8県のうち、5県が増加した九州の増加が目立った。
全国8地区で改善、悪化は東北のみ
地区別の赤字法人率は、東北を除く8地区で前年度より改善した。東北は2018年度から2年連続で赤字法人率が上昇した。
赤字法人率が最も低かったのは、北海道の62.8%(前年度63.5%)で、3年連続。次いで、北陸63.6%、近畿63.8%、九州64.3%、東北65.3%、中国65.7%、中部65.8%、関東66.4%と続き、最も赤字法人率の高い地区は四国の68.7%だった。
産業別 農・林・漁・鉱業、製造業、運輸業、卸売業で悪化
産業別の赤字法人率では、最高が小売業の73.9%(前年度74.7%)で、唯一70%を超えた。次いで、金融・保険業69.0%(同69.5%)、サービス業他68.0%(同68.5%)。10産業中6産業で改善し、4産業で悪化した。
最も赤字法人率が悪化したのは、農・林・漁・鉱業の1.0ポイント増(67.4→68.4%)。最も改善したのは建設業の2.0ポイント減(58.5→56.5%)だった。
2019年度の赤字法人率は2011年度以降9年連続で改善し、65.4%と調査開始以来、最小を更新した。2019年度はまだ新型コロナの影響を受けていない企業も多く、2020年のオリンピックに向けた特需やアベノミクスによる好景気で企業の業績改善が進んでいた。
一方で、東北では2018年度以降2年連続で赤字法人率が上昇するなど、企業業績の地域間格差も現れており、収益性の向上が課題となっている。 こうしたなか、2020年度は新型コロナウイルス感染拡大による企業業績への影響が本格化する。事業環境の悪化は継続するが、一方で、給付金や助成金が利益の底上げにも繋がっており、赤字法人率の推移が注目される。