• TSRデータインサイト

第3回過剰債務に関するアンケート 中小企業の「過剰債務率」が過去最悪の35.7%

 東京商工リサーチは8月2日~11日にかけて、債務の過剰感についてアンケート調査を実施した。「コロナ前から過剰感がある」は13.2%、「コロナ後に過剰となった」は19.6%で、32.9%の企業が「過剰債務」であると回答した。「過剰債務」と回答した企業割合は、前回調査(2021年6月)の31.6%から1.3ポイント上昇し、2021年4月に調査を開始して以降で最悪となった。
 中小企業(資本金1億円未満、個人企業等)に限ると、「過剰債務」と回答した企業は35.7%にのぼった。前回調査(34.2%)から1.5ポイント悪化した。国や自治体、金融機関の資金繰り支援で倒産は抑制されている。だが、資金繰りが一時的に緩和しても、業績不振から抜け出せない企業が水面下で過剰債務に直面している実態を改めて浮き彫りにした。
 「過剰債務」と回答した企業の割合が高い業種は、飲食店の79.6%、宿泊業の78.0%、娯楽業の65.3%など、コロナが直撃した対面型サービス業が上位を占めた。こうした業種は、サービスを在庫としてストックできず、消失した需要をコロナ収束後も取り戻すことが難しい。このため、過剰債務の解消の原資となる短期的な利益確保も難しい状況が想定され、業種ごとに寄り添ったきめ細やかな支援が必要になっている。

  • 本調査は、2021年8月2日~11日にインターネットによるアンケート調査を実施し、有効回答9,105社を集計・分析した。
    前回調査は、2021年6月15日公表(アンケート期間:6月1日~9日)。
    資本金1億円以上を大企業、1億円未満(個人企業等を含む)を中小企業と定義した。

Q1.貴社の債務(負債)の状況は、次のうちどれですか?(択一回答)

中小企業の3社に1社が「過剰債務」
 本調査では、負債比率や有利子負債比率など財務分析の数値に限定せず、債務の過剰感を聞いた。
 「コロナ前から過剰感」は13.2%(9,105社中、1,210社)、「コロナ後に過剰感」は19.6%(1,788社)で、合計32.9%が「過剰債務」と回答した。
 規模別で、 「過剰債務」と回答したのは大企業が16.7%(1,373社中、230社)に対し、中小企業は35.7%(7,732社中、2,768社)で、20ポイント近く差が開いた。
 「過剰感があったが、コロナ後に解消」は、大企業が1.7%(24社)、中小企業が2.0%(156社)で、いずれも僅かにとどまった。

KAM


業種別「過剰債務率」 飲食店や宿泊業が上位に
 「コロナ前から過剰感」、および「コロナ後に過剰感」と回答した企業を業種別で分析した(業種中分類、回答母数20以上)。
 「過剰債務」率の最高は、飲食店で79.6%(64社中、51社)だった。次いで、宿泊業の78.0%(50社中、39社)、娯楽業の65.3%(52社中、34社)と続く。旅行や葬儀、結婚式場などの「その他の生活関連サービス業」は60.4%(48社中、29社)だった。
 飲食店や宿泊業は、休業協力への協力金や「Go To トラベル」、「Go To イート」など複数の支援策が実施されたが、それでも「過剰債務率」が高かった。人流抑制、三密回避が広がり、コロナ禍の影響が深刻なことを示している。

KAM

Q2. 「コロナ前から過剰感」、「コロナ後に過剰感」と回答された方に伺います。債務(負債)の状況が、貴社の事業再構築への取り組みに影響を与えていますか?(択一回答)

「過剰債務」が事業再構築の足かせ 3社に1社
 Q1で「コロナ前から過剰感」、「コロナ後に過剰感」と回答した企業に事業再構築への取り組みを聞いた。2,757社から回答を得た。
 「事業再構築の意向はない」は30.0%(829社)だった。一方、過剰債務が足かせで「取り組むことができない」は15.4%(425社)、「取り組み規模を縮小した」は18.9%(522社)だった。過剰債務を抱える企業のうち、34.3%が事業再構築にマイナスの影響を訴えている。
 規模別では、過剰債務が事業再構築の足かせになっている企業の割合は、大企業で32.3%(201社中、65社)、中小企業で34.5%(2,556社中、882社)だった。

KAM


  政府のコロナ関連支援で、2021年1月-7月の企業倒産(負債1,000万円以上)は3,520件と前年同期(4,790件)を26.5%下回った。ただ、感染拡大に伴う度重なる緊急事態宣言、まん延防止等重点措置の発令で、対面型サービスを展開する業種は苦境が続く。
 現状、「実質無利子・無担保融資」などの貸付型支援、「新型コロナ特例リスケジュール」などのリスケ型支援で資金繰り破たんが回避されている。だが、業績回復が遅れた結果、水面下では返済猶予などの支援策が過剰債務を誘発する結果になっている。
 「コロナ前から過剰感」および「コロナ後に過剰感」と回答した「過剰債務」企業は、全体の32.9%(規模問わず)にのぼり、調査開始から最悪を記録した。特に、経営基盤がぜい弱な中小企業では35.7%と3分の1を超え、事態は悪化の一途をたどっている。
 国内ではワクチン接種が広がり、グローバルな景気回復の中で、国内経済の活性化には生産性の向上や商取引の円滑化は欠かせない。だが、足元では「過剰債務」を訴える企業が3社に1社あり、債務が事業再構築の足かせになっていると回答している。このままでは政府の描く事業再構築が理想倒れに終わる恐れも出てきた。成長戦略と同時に、過去の債務への抜本的な対応が必要な時期が迫っている。

記事の引用・リンクについて

記事の引用および記事ページへのリンクは、当サイトからの出典である旨を明示することで行うことができます。

(記載例) 東京商工リサーチ TSRデータインサイト ※当社名の短縮表記はできません。
詳しくはサイトポリシーをご確認ください。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

ゴールデンウィーク明け、「退職代行サービス」の利用は慎重に

長かったゴールデンウィークが終わる。職場「復帰」を前に例年4月の新年度からGW明けにかけ、退職する人の話題が持ち上がる。この時期の退職代行サービスの利用も増加するという。4月に実施した「退職代行に関する企業向けアンケート調査」から利用するリスクの一端が浮き彫りになった

2

  • TSRデータインサイト

トーシンホールディングスの「信用調査報告書」

5月8日に東京地裁に会社更生法の適用を申請した(株)トーシンホールディングス(TSRコード:400797887、名古屋市、東証スタンダード)を取り上げる。

3

  • TSRデータインサイト

2025年度「医療・福祉事業」倒産、過去最多 ~ 健康と生活を支援する事業者の倒産急増 ~

生活に不可欠な医療機関や介護事業者の倒産が急増している。バブル経済1988年度(4-3月)以降の38年間で、2025年度は金融危機、リーマン・ショックを超える478件と最多を記録した。

4

  • TSRデータインサイト

2026年4月「人手不足」倒産 33件発生 春闘の季節で唯一、「人件費高騰」が増加

2026年4月の「人手不足」倒産は33件(前年同月比8.3%減)で、3カ月ぶりに前年同月を下回った。 4月の減少は2022年以来、4年ぶり。

5

  • TSRデータインサイト

2025年度の「早期・希望退職」 は2万781人 約7割が「黒字リストラ」、2009年度以降で4番目の高水準

2025年度に「早期・希望退職募集」が判明した上場企業は46社(前年度51社)で、人数は2万781人と前年度(8,326人)の約2.5倍に急増したことがわかった。社数は前年度から約1割(9.8%減)減少したが、募集人数は2009年度以降で4番目の高水準となった。

TOPへ