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日本アイ・ビー・エム山口社長 × 東京商工リサーチ河原社長(前編) ~ コロナ禍でのIT活用法とビジネスのこれから ~

 東京商工リサーチ(TSR)とシステム構築などで30年以上にわたり携わりのある日本アイ・ビー・エム(IBM)の山口明夫社長にTSR社長の河原光雄が、加速化するデジタル化の活用をテーマに話を聞いた。量子コンピューターやDX(デジタルトランスフォーメーション)など、日本IBMが世界をリードする取り組みについても話題が広がった。

リモート勤務で業務のあり方「平等に」

 (河原社長) コロナ禍も1年半が経とうとしています。この間、多くの企業がビジネス上で大転換の時期を迎えています。御社にとって、この1年はどのようなものになりましたか。

(山口社長) 転換というよりも、多くの人が予測してきた“リアルの世界”から“バーチャルの世界”への移行が急速に進みました。これまで漠然と「対面で仕事をする機会が少なくなる」と言ってきたものが、実際に地理的・物理的なことに関係なく、仕事ができる環境になりました。コロナ前までは、「5年ぐらい先の話になるのではないか」と考えていたことに、急遽、取り組まなくてはならなくなり、一気に加速しました。

(河原社長) お客様のニーズはどのように変化しましたか。

(山口社長) 現在、私たちが携わっている数千人規模の大型プロジェクトを例に挙げると、従来ならリモート勤務への移行に5年、10年かかったであろうところを1カ月以内にやろうと決め、始まったものがあります。当社の社員だけではなく、メーカーを含めたビジネスパートナーの方を皆、リモート環境へ移すには大変早い動きが求められました。バーチャルの世界でも仕事ができる機運が広がりました。

(河原社長) 弊社はメーカーではなく、「情報の移動」がメインです。ただ、元々「リモートしやすい環境」と言いながら、コロナ前までは全員出社していました。コロナ禍になり、在宅で出来ることは、しっかり在宅でしようという流れになりました。山口社長がおっしゃるように、(業務のバーチャル化は)早まったと考えられますね。

(山口社長) 弊社でも業務の在り方が大分変わりました。一言でいうと「平等」になりました。これまでは、出張や夜も働くことができる人が評価される傾向にあった。リモート勤務が進み、時間や移動距離に制約があった人、例えば育児や出産、介護などをしながら働いている人や、ハンディキャップがある人など、いろいろな事情で移動することが難しい人たちが能力をより発揮しやすくなりました。会議もリモートで行っていて、本当に必要な場合を除いて移動する必要がなくなりました。能力のある人の頑張りがしっかりと表に出てくるようになりました。

(河原社長) 本来の生産性が表面化するようになった、ということですね。

(山口社長) リモート勤務が広がったことで、「学びの機会」も拡大しました。多くの会議や研修は、従来は東京で行われており、東京やその近郊にいる社員が参加しやすい状況でした。それもリモートになり、地方にいても学ぶ機会を得られるようになりました。これには多くの社員から「すごく良くなった」という声を聴きます。

(河原社長) 映像にすることで、時間に関係なく研修を受けることができますね。

(山口社長) 間違いなく社員が教育を受けられる時間が増えました。自ら勉強する人が増え、コロナ禍で社員全体のスキルが向上しました。これまでは新幹線に乗り、わざわざ東京に行って2~3時間の研修を受け、2時間かけて帰っていました。しかし、好きな時間に学ぶことができるようになり、移動する手間が大幅に省け、その分の時間を自分のために有効に使えるようになりました。とても大きな変化です。

ビジネスの「予測」とは

 (河原社長) 御社はセミナーイベントを多数開催されていますが、運営面での変化はございましたか。

(山口社長) お付き合いのなかったお客様のアクセスが大幅に増えました。これまでだと、ホテルなど大きな会場でイベントを開いても、お越し頂いた方にしか伝わりませんでしたが、Web上で幅広い層に向けて開催したら、従来の4倍、5倍のお申し込みをいただきました。

(河原社長) 従来に比べて、多くの方が御社の活動を知る機会が増えましたね。

(山口社長) また、クライアント企業からの関心も高まりました。今まであるお客様とは、IT部門や関連業務の部門としか繋がりがありませんでしたが、Web上でイベントを開催することによって、別の事業部門の方にも幅広くご参加いただけるようになりました。これまでご参加のなかったお客様について、新たなデータの取得にもつながります。どういう方が、どのようにアクセスをしてくださったとか、どこの講演で入場されて退出された、など。そのような動きから、新たなお客様の興味やニーズも把握できます。チャネルがすごく広くなったと実感します。弊社の営業の仕方も今後、バーチャルとフェイストゥフェイス双方の特性を生かした新たな形に変わっていくでしょう。

(河原社長) 業務のリモート化で時間も距離感も大幅に縮まったということですね。私たちも昨年1年間、大口の営業先に訪問できなくなりました。大企業は特にリモート化が進みました。ただ、今まで1対1でやり取りしていたお客様とリモートでミーティングするようになって、数名対数名という形式で臨めるようになりました。それは良いことだと実感しています。

(山口社長) 私たちも企業のトップにご参加いただくセミナーを開催する際、リモートにしたことでその画面の先に、多くのご担当者が座られるようになりました。スタッフの方や他の役員もいらしてくださる。そうすると、こちらからの情報が伝わりやすくなります。もし、細かいお話が必要な際は、個別に訪問すれば良く、営業の際も必ずしも毎回対面で行う必要はありません。

(河原社長) コロナ禍で、時代の変化が急激に進んでいると頓(とみ)に実感しています。私が入社したのは1976年。当時は、カラーコピーすらなく青焼きで印刷、そういう時代でした。35年ほど前に「IBM3090」 というコンピューターを、弊社に導入しました。それ以来、さまざまな製品、システムを活用させてもらっています。

(山口社長)私が入社したのが1987年なので、その1年前から弊社のメインフレームを導入くださったのですね。その後、アウトソーシングのサービス、インテグレートデータサービスなど、時代に合った形でご利用くださっている。

(河原社長) お客様からのニーズも調査から、データベースに移行しています。また、オンラインで即時に企業情報をご覧いただく「tsr-van2」があり、日々、多くのお客様にご利用いただいています。山口社長から見て、TSRはどのようにお映りになっていますか。

(山口社長) TSRさんはデータの宝庫です。今、多くの企業がデータベースに参入したいと考えているものの、データ自体が不足している企業が少なくありません。集めるためにはどうすべきか課題になっています。TSRさんは過去から現在まで、豊富なデータでビジネスをスタートできる。その価値は非常に大きいと思います。

(河原社長) データをどのように活用するのか、我々も工夫しないといけません。社会に求められるためには、どうすれば良いのか。今、お客様から「過去のことより将来のことが知りたい」という声も多く寄せられます。予測ビジネスが求められているのです。
 「どのような会社にセールスすれば良いのか?」という要望から、「この会社は将来、大丈夫なのか?」という声まで。私どもの持っている情報は財務面やその会社の経歴が基本です。「今、その会社さんは風邪をひいてらっしゃいますよ」とは言えても、「将来的に伸びますよ」とは易々と言いにくい状況です。こうした幅広い声に応えるためにテクノロジーを活用してビジネスを展開できるか、大変興味深いところです。

(山口社長) 「将来」という観点では様々な形で臨むことができます。ただ、世の中にはあらゆる情報があります。企業決算などの情報がある一方で、気象がビジネスに与える影響、SDGsのように今後長期に渡る取り組みの情報もあります。他にも、様々な要素を総合的に判断しなければなりません。
 例えば、温暖化によって気温が1度上昇した場合、それによって売れるものが変わり、その地域で売れ筋だったものが売れなくなる、そうなるとビジネスが変わります。こうした予測は非常に重要です。農家は作物がどんどん変わってきます。マンゴーは、昔は宮崎で栽培されていましたが、今では和歌山でも作れるようになったと聞きます。逆に、栽培できなくなったものもあります。虫もこれまで発生しなかった種が発生し、地域や場所によって殺虫剤の売れ行きが変わります。すると、企業活動はどのように変容するのか、興味深いところかと思います。

(続く)

IBM対談前編

‌IBM・watsonを前に(左:山口社長、右:河原社長)

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