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「アパレル関連の倒産動向」調査(2021年1-5月)

 2019年の消費増税や暖冬に加え、2020年から続く新型コロナウイルス感染拡大がアパレル関連業界に暗い影を落としている。2021年1-5月の繊維工業、繊維製品卸・小売業(以下、アパレル関連)の倒産は132件(前年同期比35.6%減)と低水準にとどまっている。政府のコロナ関連支援の資金繰り緩和効果が下支えしているが、同期間に倒産した132件のうち、コロナ関連倒産は46件(構成比34.8%)を占め、長引くコロナ禍でアパレル関連の疲弊感は強まっている。
 アパレル関連の倒産に占めるコロナ関連倒産の比率は、2021年2月53.3%、5月52.0%と今年に入り高い水準を記録している。業種別では、卸売業41.6%、小売業39.1%と、それぞれ約4割を占めている。相次ぐ緊急事態宣言の発令で、外出自粛や店舗の時短営業、来店客の減少が業績の足かせとなっているようだ。
 コロナ関連支援や金融機関の柔軟な対応で倒産は抑制されている。だが、1年以上続くコロナ禍で生活様式や流通の変化に対応が遅れた小売業、卸売業を中心に、コロナ倒産が目立ち始めた。ワクチン接種が全国で進むが、コロナ収束はまだ見通せない。この状況が長引くと夏物衣料だけでなく、秋冬物への影響も避けられず、さらにコロナ倒産が増勢をたどる可能性が強まっている。

  • 本調査は、日本産業分類の「繊維工業」「繊維・衣服等卸売業」「織物・衣服・身の回り品小売業」を「アパレル関連」とし、2021年1-5月の倒産を集計、分析した。

コロナ倒産比率、2021年は2月53.3%、5月52.0%と増加が目立つ

 アパレル関連のコロナ関連倒産は2020年3月以降、毎月発生し、2020年(1-12月)は、77件だった。1回目の緊急事態宣言が発令された2020年5月は、裁判所の一部業務縮小などでアパレル関連の倒産は31件(前年同月比35.4%減)と前年同月から3割減少した。だが、このうちコロナ関連倒産は13件を占め、コロナ倒産比率は41.9%に跳ね上がった。
 宣言解除後、コロナ倒産比率は30.0%を下回っていたが、2021年は2月53.3%、5月52.0%と急増している。新型コロナウイルスの感染拡大から1年以上が経過し、消費者の生活様式の変化に伴い、ネット通販などの商流の変化で苦境に追い込まれた企業の息切れが表面化した格好だ。  アパレル関連は、外出自粛や百貨店、小売店の休業や時短営業で販売が落ち込み、小売業の不振が卸売業に連鎖し、さらに製造業にも影響が波及している。6月20日に3度目の緊急事態宣言が沖縄県を除き解除されたが、外出自粛や在宅勤務の広がりは定着しており、コロナ関連の倒産は今後、本格化する事態も危惧されている。

アパレルコロナ関連

業種別 卸売・小売業でコロナの影響色濃く

 2021年1-5月の倒産件数は、「繊維・衣服等卸売業」が60件(前年同期比28.5%減)、「繊維工業」が26件(同29.7%減)、「織物・衣服・身の回り品小売業」は46件(同45.2%減)とそれぞれ大幅に減少した。新型コロナ関連の支援策が奏功し、倒産が抑制されている。
 コロナ倒産比率は、アパレル関連全体では3分の1(構成比34.8%)を占めた。そのなかで、「繊維・衣服等卸売業」は41.6%、「織物・衣服・身の回り品小売業」は39.1%と、約4割が新型コロナの影響を受けている。
 一方、「繊維工業」のコロナ倒産比率は11.5%で2業種より低水準だった。受注減や採算性の低下などで業績不振に陥り、コロナ前に事業を停止しているケースが目立った。ただ、卸売や小売の販売不振が長期化しており、次第に繊維工業へのダメージも高まっている。

負債額別 コロナ倒産比率は10億円以上が高水準

 倒産の負債額別では、1千万円以上5千万円未満が69件(構成比52.2%)で最も多く、半数を占めた。5千万円以上1億円未満が24件(同18.1%)で、負債1億円未満の倒産が7割(70.4%)を超えた。一方、10億円以上(前年同期比60.0%減)の大型倒産と5億円以上10億円未満(同55.5%減)は、各4件で前年同期の半数以下にとどまった。
 ただ、負債10億円以上のコロナ倒産の構成比が75.0%に達し、最も高かった。フォーマルウェア卸の(株)サンクローバー(岐阜県)は2月25日、岐阜地裁に民事再生法の適用を申請した。コロナ禍で百貨店や商業施設の休業に加え、卒業・入学式の中止などが業績悪化に拍車をかけた。こうした中堅以上の企業ほど、コロナ禍の影響が業績面を直撃しているようだ。


 全業種の新型コロナウイルス関連倒産は累計1,425件(負債1,000万円以上、2021年5月末時点)を数え、2021年1月からは5カ月連続で月間100件を超えている。
 アパレル関連は累計123件(構成比8.6%)で、飲食業、建設業に次いでコロナ禍の影響を受け続けている。
 2020年1-5月のアパレル関連のコロナ倒産は20件で、(株)レナウン(東京都)など「織物・衣服・身の回り品小売業」が12件(構成比60.0%)と6割を占めた。一方、2021年1-5月のアパレル関連のコロナ倒産は46件で、そのうち「繊維・衣服等卸売業」が25件(同54.3%)と最も多く、徐々に川下から川中へコロナ禍の影響が遡及してきている。
 東京商工リサーチが実施した「第16回『新型コロナウイルスに関するアンケート』調査」(2021年6月21日発表)によると、コロナ収束後の売上について、「コロナ前より売上高が落ちており、コロナ後も回復はしない」と回答したのは、全業種中「繊維工業」が8位(28.2%)、 「織物・衣服・身の回り品小売業」が9位(26.6%)と高水準だった。アフターコロナの業績回復が見通せないだけに、アパレル関連の「あきらめ」倒産の増加が現実味を帯びてきた。

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