• TSRデータインサイト

ワタベウェディングの事業再生ADR、対象債権者は5行1社

 ブライダル大手のワタベウェディング(株)(TSR企業コード:641093977、東証1部、以下ワタベ)は3月19日午後、事業再生ADRを申請し、受理されたと発表した。
コロナ禍で主力の海外挙式が実施不能になるなど業績が悪化し、2021年3月末に弁済期限が到来する借入金の返済が困難になっていた。今後、医薬品製造やホテル運営などを手掛ける興和(株)(TSR企業コード:400028000)の完全子会社となり、再建を目指す。
事業再生ADRは金融債務が対象で、商取引債権や一般顧客の前払債権などは対象外。
発表によると、ワタベは既存株式のうち、(株)千趣会(TSR企業コード: 570102243、東証1部)など大株主が保有する株式の一部を無償で、少数株主の株式は1株あたり180円で取得する。その上で、ワタベは興和に対して1株あたり40円で、総額20億円の第三者割当増資を実施する。5月27日開催予定の債権者会議で再生計画の成立を目指す。

ワタベウェディング・京都本店

ワタベウェディング・京都本店

  発表後、ワタベの担当者は東京商工リサーチの取材に応じた。一問一答は以下の通り。

Q.公表資料には、「10億円の融資枠を確保」と記載がある。プレDIPファイナンスとの認識で良いか。また調達先はどこか。

A.その認識で間違いない。引き受けはメインバンクの三菱UFJ銀行。

Q.申請前日の18日の株価は407円。一方、少数株主への対価は1株あたり180円。株主責任も含めて価格のバランス感は。

A.(スポンサーである興和に対する)割当額は1株あたり40円だ。少数株主の保護や市場動向などを考慮した。

Q.スポンサーも選定されており、「プレパッケージ型の事業再生ADR」との印象を受ける。

A.事業再生ADR手続きに入ることについて、書面ではないが「反対はしない」との意向を(対象債権者から)受けている。テクニカルには、メイン・準メインとの折衝で事業再生ADRを申請できるが、我々が大切にしている「ホスピタリティ」のイメージが「銀行と揉めている」と伝わると傷がつく。これは避けたかった。ADR手続きに入ることについて、(対象債権者と)これまでに相当な回数、話をしている。

Q.第三者割当で調達する資金使途について、「当面の賃料・人件費等、事業推進にかかる運転資金」と記載されている。成長資金への活用ではないのか。

A.コロナ禍という特殊要因がある。お客様は一生に一度のブライダルを控えた方々だ。ご迷惑をかけることは絶対にできない。この思いは一連の流れの根底にある。

Q.今後のリストラ費用について。

A.これまでに資産売却をしてきた。やりたくなかったが(国内の)希望退職の募集、海外のレイオフもやった。今後、多額のリストラ費用が発生することはないと思う。

Q.子会社の売却は。

A.将来キャッシュフローとの兼ね合いだが、今のところ想定していない。

Q.事業再生ADRの対象債権者は。

A.三菱UFJ銀行や京都銀行、日本生命など、金融機関5行、事業会社1社。

Q.債務免除の要請額は。

A.ノーコメント。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2021年3月23日号掲載予定「WeeklyTopics」を再編集)

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「社長の出身大学」 日本大学が15年連続トップ 40歳未満の若手社長は、慶応義塾大学がトップ

2025年の社長の出身大学は、日本大学が1万9,587人で、15年連続トップを守った。しかし、2年連続で2万人を下回り、勢いに陰りが見え始めた。2位は慶応義塾大学、3位は早稲田大学と続き、上位15校まで前年と順位の変動はなかった。

2

  • TSRデータインサイト

内装工事業の倒産増加 ~ 小口の元請、規制強化で伸びる工期 ~

内装工事業の倒産が増加している。業界動向を東京商工リサーチの企業データ分析すると、コロナ禍で落ち込んだ業績(売上高、最終利益)は復調している。だが、好調な受注とは裏腹に、小・零細規模を中心に倒産が増加。今年は2013年以来の水準になる見込みだ。

3

  • TSRデータインサイト

文房具メーカー業績好調、止まらない進化と海外ファン増加 ~ デジタル時代でも高品質の文房具に熱視線 ~

東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースによると、文房具メーカー150社の2024年度 の売上高は6,858億2,300万円、最終利益は640億7,000万円と増収増益だった。18年度以降で、売上高、利益とも最高を更新した。

4

  • TSRデータインサイト

ゴルフ練習場の倒産が過去最多 ~ 「屋外打ちっぱなし」と「インドア」の熾烈な競争 ~

東京商工リサーチは屋外、インドア含めたゴルフ練習場を主に運営する企業の倒産(負債1,000万円以上)を集計した。コロナ禍の2021年は1件、2022年はゼロで、2023年は1件、2024年は2件と落ち着いていた。 ところが、2025年に入り増勢に転じ、10月までの累計ですでに6件発生している。

5

  • TSRデータインサイト

解体工事業の倒産が最多ペース ~ 「人手と廃材処理先が足りない」、現場は疲弊~

各地で再開発が活発だが、解体工事を支える解体業者に深刻な問題が降りかかっている。 2025年1-10月の解体工事業の倒産は、同期間では過去20年間で最多の53件(前年同期比20.4%増)に達した。このペースで推移すると、20年間で年間最多だった2024年の59件を抜いて、過去最多を更新する勢いだ。

TOPへ