• TSRデータインサイト

【取材の周辺】卒業・入学式シーズンを前に 苦境続くフォーマルウェア

 3月に入り、卒業や入学シーズンが間近に迫ってきた。
 不振が続くアパレル業界だが、フォーマルウェアの専門業者にもかき入れ時の高揚感はない。1年以上続くコロナ禍で、この春も学校の式典の多くは三密回避で規模を縮小。リモート開催も広がっている。
 コロナ禍で需要が消失した「フォーマルウェア」ブランドは苦境に喘いでいる。


 婦人フォーマル大手の(株)東京ソワール(TSR企業コード: 291181210、東証2部、非連結)が発表した2020年12月期決算は、前期比3割減の売上高102億4,200万円、営業赤字は22億5,000万円だった。
 卒業・入学式等のイベント縮小や中止、商業施設の休館などで販売機会が減少し、業績が悪化。同期決算で初めて「継続企業の前提に関する重要事象」を記載した。
 高級婦人服の(株)ラピーヌ(TSR企業コード:570221234、東証2部)も、新型コロナの影響を色濃く受けた。経営陣交代による経営てこ入れや、債務の返済猶予などで立て直しに取り組むが、2021年2月期の連結売上高は前期比4割減の50億円、営業赤字21億円を見込んでいる。

業界老舗のサンクローバーが民事再生

 中堅メーカーでは経営破たんも発生した。
 レディースフォーマル専門の(株)サンクローバー(TSR企業コード:470033860、岐阜市)は2月25日、負債16億円を抱え岐阜地裁に民事再生法を申請した。
 1968年設立の老舗で、業界では知られた存在だった。専門店や百貨店向け卸のほか、自社ブランド「ドレスデコ」を展開し、バブル期の年商は30億円以上を誇った。しかし、近年は市場縮小の煽りを受けて苦戦が続き、2019年5月期の売上高は16億円に減少。さらに、2020年5月期は期末のコロナ禍が直撃し、売上高は12億円台に落ち込んだ。
 その後も、結婚式や法事、入学や卒業式など、フォーマルウェアを着る行事が激減。金融機関などからコロナ関連融資1億2,000万円を導入したが、その資金も底を尽いた。


産業別 最多が建設業の70件

 2021年春の卒業・入学式は、小学校から中・高・大学まで、出席は「1家族につき1名」が全国的な潮流だ。2年連続の縮小開催により、フォーマルウェア需要はさらに冷え込んでいる。
 コロナ収束で今年こそ通常開催を、と淡い期待を寄せた業界関係者の落胆は察するに余りある。加えて、首都圏では3月7日以降も緊急事態宣言が再々延期になり、春の学校行事の開催は流動的だ。
 フォーマルウェアは、百貨店の苦戦や冠婚葬祭の簡素化、カジュアル化などで、厳しい環境が続いてきた。そこに、式典イベントの中止・縮小が各地に広がった。
 長引くコロナ禍で、企業体力は削がれている。稼ぎ時を失ったフォーマルウェア業界は、中小・大手を問わず疲弊感が増し、破たんリスクは否が応でも高まっている。

フォーマル

‌2月に民事再生法を申請したサンクローバー

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月の「人手不足」倒産が過去最多 「従業員退職」が前年の1.6倍増、初の年間300件超へ

2025年9月に「人手不足」が一因となった倒産は、調査を開始した2013年以降では月間最多の46件(前年同月比109.0%増)を記録した。また、2025年1-9月累計も、過去最多の285件(前年同期比31.3%増)に達し、人手不足はより深刻さを増していることがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

ケーキや和菓子は「高値の花」に、スイーツ店が苦境 倒産は過去20年で最多ペース、競合商品も台頭

街のスイーツ店が苦境に陥っている。材料コストの上昇、酷暑、人手不足が重なり、商品値上げによる高級化も購入機会の減少につながったようだ。2025年1-9月の菓子製造小売の倒産は、過去20年で最多の37件に達した。

3

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月「後継者難」倒産が過去2番目 332件 高齢化が加速、事業承継の支援が急務

代表の高齢化が進み、後継者が不在のため事業に行き詰まる企業が高止まりしている。2025年1-9月の「後継者難」倒産(負債1,000万円以上)は332件(前年同期比4.5%減)で、2年ぶりに前年同期を下回った。だが、2025年は過去最多だった前年同期の348件に次ぐ、過去2番目の高水準だった。

4

  • TSRデータインサイト

2025年 全国160万5,166社の“メインバンク“調査

全国160万5,166社の“メインバンク”は、三菱UFJ銀行(12万7,264社)が13年連続トップだった。2位は三井住友銀行(10万1,697社)、3位はみずほ銀行(8万840社)で、メガバンク3行が上位を占めた。

5

  • TSRデータインサイト

2025年度上半期の「円安」倒産30件 仕入コスト上昇が卸売業を直撃

2025年度上半期(4-9月)の「円安」関連倒産は、30件(前年同期比31.8%減)だった。上半期では、2022年度以降の円安では前年度の44件に次いで、2番目の高水準になった。

TOPへ