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震災から10年 東北6県「東日本大震災後の企業業績」調査

 2011年3月11日の東日本大震災から、間もなく10年を迎える。道半ばだが復興特需などを背景に、東北の企業業績は着実に回復している。だが、景気をけん引した建設業はピークアウトがうかがえ、2019年度は震災から初めて売上高が前年を割り込んだ。2020年度も新型コロナ感染拡大の影響で大幅減収が見込まれている。
 東北の企業売上高は、2009年度を100.0とした場合、復興景気で増収をたどり、2018年度は122.8に達した。だが、復興予算の減少などで景気をけん引した建設業に加え、製造業や卸売業が減収に転じ、2019年度は震災から初めて前年を下回った。
 また、利益は2010年度、2011年度は大きく落ち込んだが、復興需要を追い風に2012年度は214.9と急回復した。ただ、2017年度の368.4をピークに減少に転じ、ピークアウトが鮮明になってきた。
 東北の企業業績は全国を上回る好調ぶりを維持したが、2019年度に転換期を迎えた。さらに、新型コロナのダメージも重なり、震災から10年を迎える東北経済は停滞局面に差し掛かっている。

  • 本調査は、東京商工リサーチの企業データベース(約480万社)を活用し、東北(青森県、岩手県、秋田県、宮城県、山形県、福島県)6県の2009年度から直近の2019年度まで、連続で業績の比較が可能な企業を対象とした。
    決算期変更などで12カ月決算と異なる場合や、対象期間のうち1期でも売上高または利益金が入手できていない企業は除外した。利益は当期純利益を指す。
    決算年度について、2009年度は2009年4月-2010年3月が決算期の企業を対象とし、以降の決算期も同様とした。

2019年度は売上高、利益ともに減少

 売上高は、2012年度109.3、2013年度115.9と伸び幅を広げ、その後も緩やかに増加をたどり、ピークの2018年度は122.8に達した。だが、消費増税や人件費上昇などが懸念材料となった2019年度は122.0と前年を下回り、増収から減収に転じた。
 利益は、震災の起きた2010年度は17.7と大幅に落ち込んだ。震災関連の特別損失が発生し、2011年度までその影響は長引いた。2012年度は売上回復に伴い214.9と急回復し、2017年度は368.4まで高まった。その後、人件費のコストアップなどで減益に転じ、2019年度は277.9と2013年度(282.3)の水準まで低下した。

0219震災10年①

主な産業別売上高推移 震災前より増加、躍進した建設業はピークアウトが鮮明に

 建設業は2010年度は減収だったが、復旧工事で2011年度は106.8と急回復。その後も着実に売上高を伸ばし、2016年度には151.3に達した。2017年度以降は、2009年度を大きく上回るが、復興予算の削減が直撃し、2019年度まで3年連続で減収となった。
 製造業は、2011年度から2012年度にかけて減収だったが、その後の円安や採算性向上などで持ち直した。2019年度は基幹産業の水産加工などの不振で減収に転じた。
 卸売・小売業は個人消費の回復を追い風に2011年度以降伸びを見せたが、消費増税などを背景に2015年度は減少。2019年度も消費増税の影響などで卸売業が減収を余儀なくされた。

全国と比較し、東北は減益が鮮明に

 東北と全国を比較した売上高推移は、2011年度は震災の影響が残り、東北が103.6、全国が106.3だった。2012年度以降は復興とともに東北が逆転し、全国との差を広げた。しかし、2019年度は東北、全国ともに減収へ転じた。
 利益推移は、東北は2010年度17.7、2011年度17.8と大きく落ち込んだ。2012年度以降、復興需要を背景に全国を上回る急回復となったが、2018年度から全国を下回る状況が続く。


 東日本大震災から10年を迎える。東北の企業売上高は震災時から1.2倍に伸びたが、「東日本大震災」関連倒産は2020年5月を除き、毎月発生。東北や周辺地域での経済毀損も大きく、2021年1月で全国46都道府県で1,977件を数える。
 未曾有の災害に巻き込まれた企業は、人材、商圏、設備、財務などの基盤喪失が大きく、震災前の状態に戻ることが難しい企業も少なくない。このため変化への耐性はまだ十分でなく、2019年度は景気後退の中で売上高、利益ともに震災後、初めて前年度を下回った。
 復興庁は、2021年度から2025年度を「第2期復興・創生期間」と位置付け、産業再生で業績回復の遅れた業種や観光、人材確保支援などに重点を置く。だが、新型コロナ感染拡大の影響は長引き、復興と新型コロナの負担が東北に重くのしかかっている。東北が震災を乗り越えるには経済復興は欠かせない。今後も、地元に寄り添った切れ目のない支援が求められる。

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