• TSRデータインサイト

化粧品大手各社、軒並み減収 インバウンド消失と外出自粛・マスク生活が直撃

 長引く「新型コロナウイルス」感染拡大で化粧品業界が苦境にあえいでいる。外出自粛、インバウンド需要の消失で化粧品ニーズが変わったためだ。
(株)コーセー(TSR企業コード:290050723、東証1部)と(株)ノエビアホールディングス(TSR企業コード:662279069、東証1部)が発表した直近の四半期決算では、いずれも前年同期比10%以上の減収だった。外出自粛やテレワークの浸透の余波はアパレル業界だけでなく化粧品業界にも広がっている。

マスクで「スキンケア意識の高まり」も

  1月29日にコーセーが発表した2021年3月期第3四半期決算は、売上高が2041億3500万円(前年同期比18.0%減)、営業利益が111億4100万円(同70.6%減)だった。インバウンド需要の消失と外出自粛が化粧品販売を直撃した。コーセーの担当者は東京商工リサーチの取材に対して「外出自粛が落ち着いた中国市場の需要は復調している」と話す。だが、国内は長引くマスク生活で、口紅などマスクの下に隠れる部分に使用する商品の不調が深刻だという。
一方、シワ改善美容液やマスクで覆われない目元向けのアイメイク商品は「比較的堅調に推移」(同担当者)と期待を寄せている。また、「マスクが当たる部分はどうしても肌の調子が不安定な状態になる。そのためスキンケアへの意識が高まっている」(同)とトレンドの変化を説明する。
(株)カネボウ化粧品(TSR企業コード: 291520677)を傘下に持つ花王(株)(TSR企業:290030129、東証1部)は2月3日、2020年12月期決算(通期)を発表した。売上高は、ハンドソープや消毒液などの衛生用品が伸長したが、1兆3819億9700万円(前年比8.0%減)だった。営業利益が1755億6300万円(同17.1%減)だったものの、化粧品事業に限っては売上高が2341億円(同22.4%減)、営業利益26億円(同93.7%減)と新型コロナの影響をダイレクトに受ける結果となった。2021年12月期も新型コロナの影響が継続するとの見通しから、化粧品事業は売上高を2490億円と予想。2020年12月期比で6.7%増と見込むが、コロナ前の2019年12月期(3015億円)までの水準には戻らないとみる。

大手が軒並み減収

 ノエビアHDは1月29日、2021年9月期第1四半期決算を発表した。売上高は138億7200万円(前年同期比10.3%減)、営業利益は30億2500万円(同10.5%減)だった。そのうち、化粧品事業の売上高は109億2900万円(同10.0%減)で、売上高の約8割を占める化粧品分野の落ち込みが響いた。
(株)ポーラ・オルビスホールディングス(TSR企業コード:296846023、東証1部)は2020年12月期第3四半期の売上高が前年同期比24.0%減、(株)資生堂(TSR企業コード:290076870、東証1部)は同22.8%減だった。化粧品とサプリメントが主力の(株)ファンケル(TSR企業コード:350606404、東証1部)の2021年3月期第3四半期の化粧品事業の売上高は前年同期比17.9%減と、大手は軒並み10-20%前後の減収となっている。
業界大手の資生堂は、主力の化粧品だけでなく、ヘアサロンの休業などでヘアケア類の需要も落ち込み、2020年12月期は120億円の最終赤字を見込む(2月9日通期決算を発表予定)。大手各社は外国人観光客が多く訪れた百貨店の化粧品コーナーにブランドテナントを出店している。
インバウンド需要が消失し、来期も業績の落ち込みが避けられない状況だが、しばらく我慢の経営が続きそうだ。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2021年2月2日号掲載予定「WeeklyTopics」を再編集)

化粧品大手各社は減収減益

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2024年度「他都道府県への本社移転」 1万6,271社 TSMC効果?九州が転入超過トップ、県別トップは埼玉県

2024年度に他都道府県に本社・本社機能を移転した企業は1万6,271社(前年度比18.7%増)で、前年度から大きく増加した。コロナ禍からの人流回復や需要変化に合わせ、本社移転の動きが活発化している。

2

  • TSRデータインサイト

創光科学の「破産開始決定」が取消しに ~上場子会社、複雑に絡まり合う利害関係 ~

東証プライム上場の医療機器メーカー、日機装(株)(渋谷区)は5月15日、連結子会社の創光科学(株)(渋谷区)の破産開始決定の取消しに関する経過を開示した。 破産手続きを巡り、2年にわたる親会社VS創業者の異例の抗告合戦へと発展した事件は、最高裁の判断でようやく決着した。

3

  • TSRデータインサイト

警備業界は大手2社の寡占化が進む 人手不足で倒産・休廃業が過去最多

全国の主な警備会社828社の2024年の業績は、売上高が1兆9,180億円(前年比2.6%増)、最終利益は1,604億円(同15.6%増)と、堅調に推移している。 業界市場は拡大しているが、大手の寡占化が進み、中小・零細事業者は人手不足でコストが上昇し、経営環境は厳しさを増している。

4

  • TSRデータインサイト

「雇調金」不正受給 倒産率は平均の約31倍 不正公表1,699件、サービス業他が45%

全国の労働局が4月30日までに公表した「雇用調整助成金」(以下、雇調金)等の不正受給件数は、2020年4月からの累計が1,699件に達した。不正受給総額は551億6,918万円にのぼる。

5

  • TSRデータインサイト

マレリにマザーサンが買収提案、私的整理の協議の行方は ~ 「マザーサンの提案は選択肢の一つ」 ~

自動車部品大手のマレリホールディングス(株)は5月26日、私的整理を協議するために都内で集会を開催した。 集会後、マレリHDの関係者が東京商工リサーチの取材に応じ「マザーサンの買収提案は選択肢の一つだ。それしかないような報道がなされているが、一択ではない」とコメントした。

TOPへ