• TSRデータインサイト

マレリにマザーサンが買収提案、私的整理の協議の行方は ~ 「マザーサンの提案は選択肢の一つ」 ~

 自動車部品大手のマレリホールディングス(株)(TSRコード:022746064、マレリHD)は5月26日、私的整理を協議するために都内で集会を開催した。
 関係者によると、金融債務削減とインドのマザーサン・グループによる株式取得のスキームが提案された。ただ、外資系金融機関の一部は反対しているとみられ、協議がまとまるかは不透明だ。
 集会後、マレリHDの関係者が東京商工リサーチ(TSR)の取材に応じ、「マザーサンの買収提案は選択肢の一つだ。それしかないような報道がなされているが、一択ではない」とコメントした。
 マレリグループの取引先は、全国2,942社にのぼる。日産自動車(株)(TSRコード: 350103569)とマレリグループの経営不振が重なり、影響が自動車部品のサプライチェーンに広がることが懸念される。


私的整理の行方

 マレリHDは2024年末に始まった借入金の返済について猶予を受けており、資金繰りの安定化には至っていない。メインのみずほ銀行などの邦銀側と、米投資会社などの外資側で、支援方法をめぐる駆け引きが続く。
 この間、主力取引先のステランティスや日産の経営不振もあり、支援策がまとまらず、マレリHDの信用不安も増大した。事業会社のマレリ(株)(TSRコード: 291139833)は、追浜工場の不動産売却などのリストラ策を講じ、資金繰り改善を目指していた。しかし、民事再生(簡易再生、2022年)後に残った金融債務は約6,500億円と重く、激変する自動車業界のなかで、単独の再建が難しい状況が続いている。
 こうしたなかで5月26日、金融機関を集めて私的整理の計画についての協議だったが、インドのマザーサン・グループが株式や金融債権を買い取るスキームが公表された。

マザーサンのみが選択肢ではない

 関係者によると、邦銀側はスキームを支持したが、外資の一部が反対している。6月上旬に再度、意見を集約して協議する。私的整理は全会一致が条件だ。
 一方、マレリHDの関係者は、マザーサンの買収提案だけが支援策ではなく、「複数の選択肢がある」とコメントした。また、邦銀と外資の対立について、「対立とは少し違う。(私的整理の集会に参加しなかった)彼らの意向も聞いている」と答えた。信用不安については、「信用リスクを懸念して簡易再生後から今日に至るまで取引中止となったケースは複数ある。メーカーに対して部品を円滑に供給するため、資金が必要な調達先、中小企業の一部に対しては前払いで決済している」と、払拭に努めている。



 マレリHDは、一連の報道への対応を検討しているとみられる。積極的な情報開示に加え、取引先とサプライチェーンを維持できる再建策がまとめられるか、自動車部品業界の行く末を占う事案になりそうだ。


閉鎖されたマレリ「追浜工場」(5月12日撮影)

閉鎖されたマレリ「追浜工場」(5月12日撮影)



(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2025年5月28日号掲載「取材の周辺」を再編集)

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月の「人手不足」倒産が過去最多 「従業員退職」が前年の1.6倍増、初の年間300件超へ

2025年9月に「人手不足」が一因となった倒産は、調査を開始した2013年以降では月間最多の46件(前年同月比109.0%増)を記録した。また、2025年1-9月累計も、過去最多の285件(前年同期比31.3%増)に達し、人手不足はより深刻さを増していることがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

ケーキや和菓子は「高値の花」に、スイーツ店が苦境 倒産は過去20年で最多ペース、競合商品も台頭

街のスイーツ店が苦境に陥っている。材料コストの上昇、酷暑、人手不足が重なり、商品値上げによる高級化も購入機会の減少につながったようだ。2025年1-9月の菓子製造小売の倒産は、過去20年で最多の37件に達した。

3

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月「後継者難」倒産が過去2番目 332件 高齢化が加速、事業承継の支援が急務

代表の高齢化が進み、後継者が不在のため事業に行き詰まる企業が高止まりしている。2025年1-9月の「後継者難」倒産(負債1,000万円以上)は332件(前年同期比4.5%減)で、2年ぶりに前年同期を下回った。だが、2025年は過去最多だった前年同期の348件に次ぐ、過去2番目の高水準だった。

4

  • TSRデータインサイト

2025年 全国160万5,166社の“メインバンク“調査

全国160万5,166社の“メインバンク”は、三菱UFJ銀行(12万7,264社)が13年連続トップだった。2位は三井住友銀行(10万1,697社)、3位はみずほ銀行(8万840社)で、メガバンク3行が上位を占めた。

5

  • TSRデータインサイト

2025年度上半期の「円安」倒産30件 仕入コスト上昇が卸売業を直撃

2025年度上半期(4-9月)の「円安」関連倒産は、30件(前年同期比31.8%減)だった。上半期では、2022年度以降の円安では前年度の44件に次いで、2番目の高水準になった。

TOPへ