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電力自由化が晒される試練、新電力の経営危機が浮上

 電力需給のひっ迫で電力価格が高騰し、電力小売事業者(以下、新電力)が苦境に立たされている。
年末年始以降、仕入れ(調達)価格が一時的に急騰し、逆ザヤが続いた。足元では一時の異常値は落ち着いたが、寒波襲来などによる電力需要の度合いによっては、しばらく流動的な状況が続くとみられる。
新電力では、秋田県鹿角市が出資する(株)かづのパワー(TSR企業コード:131989260、鹿角市)が2月中旬で売電事業を休止する。また、楽天グループが展開する「楽天でんき」は、新規契約などサービスの一時停止を発表した。新電力にかつてない厳しい経営環境が立ちはだかっている。

電力新事業者

 発電設備を持たない新電力の大半は、日本卸電力取引所(JEPX)を通じて大手電力から出た余剰電力を調達する。ところが、今シーズンは記録的な寒波や発電燃料の液化天然ガス(LNG)が不足し、需給バランスが崩れた。年明け以降、JEPX市場のスポット価格は通常時の10倍前後に高騰した。単純計算では仕入コストが10倍に膨らんだことになる。
この影響で、新電力との間で「市場連動型」の料金プランを選択した消費者の電気料金が跳ねあがる可能性が出ている。これは同時に、新電力各社の深刻な経営悪化を意味する。

「インバランス」料金発生で3月危機説

 新電力は顧客の電力需要を予測してJEPXから電力を調達するが、顧客の電力使用が調達を上回った場合は、電力会社が不足分を穴埋めする。
この措置により、顧客への電力供給がストップされずにすむ仕組みだが、後日、新電力は不足した電力分の費用を、ペナルティーとして電力会社に支払わなければならない。
計画と実需の乖離を意味する「インバランス」のペナルティー料金は市場での調達額より割高となり、新電力各社は例え高値でも市場での購入に走り、さらに価格が高騰する悪循環を招く構図となった。
JEPXを通じた日々の電力取引は、約定から2日後に支払う必要がある。一方、インバランス料金は締め後、翌々月の第5営業日が電力会社への支払い日となっている。
年始以降に発生したインバランス料金は3月5日が最初の支払期日となる。新電力各社は高騰した電力価格の調達資金でキャッシュアウトが深刻化するが、ここにインバランス料金の支払いが襲いかかり、「3月危機説」が囁かれているのだ。

新電力56社が価格高騰への対応要望を提出

 卸電力価格の高騰を受けて経済産業省は緊急的な対応措置として1月17日の電力供給分よりインバランス料金単価に上限(200円/kWh)を定めることを決定した。
1月18日、新電力56社は連名で経産大臣宛てに「卸電力市場の取引価格の長期高騰に対する対応要望」を提出した。
このなかで、新電力側は価格の需給曲線などの情報公開を求めたほか、価格が高騰した期間のインバランス料金で電力会社が得た想定外の利得還元や、インバランス単価の見直しなども求めた。
要望に賛同した新電力56社のうち、50社が社名を公表している。東京商工リサーチが保有する企業データベースに基づき、50社の経営動向を調査したところ、業歴別では5年未満が最多で16社と約3割、10年未満では31社と約6割を占めた。資本金別でも、5千万円未満が31社で、業歴が浅く、過小資本で経営体力が乏しい企業が多い。
直近業績から3年分を遡って比較できる企業は32社。売上高・利益の推移をみると、最新期は増収、黒字は確保したが、売上高は前期比0.8%増にとどまり、利益は前期比92.4%減と、頭打ち感が鮮明になっている。
今回の新電力各社の要望に対し、「自由競争の下でスタートした電力小売自由化の原理原則に反する」と否定的な声も多い。調達価格が低位で推移していた時期は恩恵を受けてきたからだ。それだけになおさら、新電力の切迫した資金事情が透けて見える。
経産省の担当者に取材したところ、この要望について当初「検討の余地があれば、適切に対応する」とのコメントにとどまっていた。
こうしたなか1月29日、経産省は電力卸価格の高騰に対する新たな対応を発表した。このなかで電気料金が高騰した顧客に対し、支払猶予などの対応策をとることを要件に、3月に支払うインバランス料金の分割払い(最大5カ月間)を認めるなど、新電力支援に向けた新たな動きも出ている。

 2016年4月、電力の小売自由化が鳴り物入りでスタートした。それまで地域の電力会社10社が独占供給してきた一般家庭向け電力販売が一般企業に解禁され、利用者はライフスタイルや価値観、価格に合わせ自由に販売会社やプランを選択できるようになった。
新電力の登録事業者は全国で約700社にまで膨らみ、巨大な市場が生まれた。
参入バブルの様相も見せたが、新規市場の競争は厳しい。これまで新電力の経営破たんでは日本ロジテック(協)(TSR企業コード:298943107、2016年4月破産)や福島電力(株)(TSR企業コード:022632840、2018年8月破産)などが発生している。だが、水面下では当初 目論んだ事業計画通りにいかず、サービス休止や、そもそも本格稼働に至っていない登録事業者も相当数あるとみられる。
新電力は熾烈な競争に加え、調達コストの肥大化という二重の試練に晒されている。
電力小売自由化から間もなく4年。業界内での再編や淘汰のリスクが、これまでになく高まっている。


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2021年2月2日号掲載予定「WeeklyTopics」を再編集)

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