2021年の周年企業
2021年は、全国で3,696社が創業100周年を迎える。主な100周年企業は、三菱電機、小松製作所、医療機器大手のテルモ、日本初の生協であるコープこうべ、スーパーのイズミヤ、自転車部品のシマノ、自動車部品のトピー工業など、錚々たる顔ぶれが並ぶ。
この他、大塚製薬などの「大塚グループ」、酒類販売のカクヤスグループ、建材商社の吉田産業(青森県)、自動車部品メーカーの広島アルミニウム工業(広島県)、医療器材のカワニシホールディングス(2021年1月1日、オルバヘルスケアホールディングスに変更予定、岡山県)など、全国各地に有力企業がある。
100年前の1921(大正10)年、第1回「ア式蹴球全國優勝競技會(現:天皇杯JFA全日本サッカー選手権大会)」が開催され、公益財団法人日本サッカー協会が創立された。2021年は新型コロナウイルス感染拡大で延期した東京五輪・パラリンピックの開催が予定されている。
さらに、200周年(1821年創業)は、山都酒造(熊本県)など2社。300周年(1721年創業)は鉄鋼商社の釜屋(三重県)など4社。最も古い400周年(1621年創業)は、線香メーカーで知られる天年堂(福岡県)の1社。
一方、創業50周年(1971年創業)は、預金者保護目的の預金保険機構、日本マクドナルドなど、時代を反映した2万8,160社を数える。
2021年に創業100年超の老舗企業は、100周年の3,696社が加わり、4万186社に達する。
- ※東京商工リサーチの企業データベース(約390万社)から、2021年に創業100周年など「周年」を迎える企業(個人企業・各種法人を含む)を抽出し、分析した。50周年以外は、100周年単位でまとめた。
周年企業 100周年は3,696社
2021年に周年(50周年および100年単位)を迎える企業は、全国で3万1,863社ある。内訳は、50周年が2万8,160社(構成比88.3%)、100周年が3,696社(同11.6%)、200周年が2社、300周年が4社、400周年が1社。
最も古い周年企業は、1621(元和7)年創業の線香で知られる天年堂(福岡県)が創業400周年を迎える。同社ホームページによると、「天年堂は、元和7年、丹波福知山より初代久留米藩主有馬豊氏の入封に伴い、御用商人としてこの地に移りました」と記している。
次いで、300周年は、鉄鋼や工作機械販売などを展開する釜屋(三重県)など4社。釜屋は1721(享保6)年に創業され、当時は釜、家庭建築金物及び農機具の販売を手掛けていたとされる。
200周年は、1821(文政4)年創業の山都酒造(熊本県)など2社。
50周年は預金保険機構や日本マクドナルド、太陽鉱油など2万8,160社と一気に増える。
産業別周年企業 最多は100周年が製造業、50周年は建設業
周年企業を産業別でみると、創業50周年は建設業が1万779社(構成比38.2%)でダントツに多い。次いで、サービス業他の4,487社(同15.9%)、製造業の3,619社(同12.8%)、卸売業の3,222社(同11.4%)、小売業の2,851社(同10.1%)の順。
100周年は、製造業の895社(同24.2%)がトップで、小売業の883社(同23.8%)、卸売業の757社(同20.4%)、建設業の579社(同15.6%)と続く。
周年企業は時代を映し、周年を重ねるごとに製造業の強さが光り、技術力を磨きながら事業を継続している。
地区別 100周年は関東がトップ、近畿が続く
地区別では、50周年の最多は関東の9,865社(構成比35.0%)。次いで、近畿が4,377社(同15.5%)、中部が3,899社(同13.8%)で続く。100周年も、最多は関東の1,035社(同28.0%)。次いで、近畿が721社(同19.5%)、中部が599社(同16.2%)の順だった。
都道府県別では、50周年は東京都が3,493社(同12.4%)、大阪府が2,167社(同7.7%)と続く。100周年は、東京都384社(同10.3%)、大阪府320社(同8.6%)、愛知県242社(同6.5%)の順。
老舗企業 全国で4万186社が業歴100年以上
2020年の業歴100年超の老舗企業は、3万6,490社あった。これに2021年に創業100年を迎える3,696社が仲間入りし、2021年の業歴100年超は4万186社になる見通しだ。
宗教法人などを除く老舗企業の業歴では、578年創業で社寺建築を手がける最古の建設会社、金剛組(大阪府)が2021年で業歴1444年を数える。次いで、華道「池坊」の一般財団法人池坊華道会(京都府)が業歴1435年、世界最古の宿とされる西山温泉慶雲館(山梨県)が業歴1317年、温泉旅館の古まんが業歴1305年、旅館運営の善吾楼は業歴1304年と、創業1000年を超える老舗が上位にランクインした。
2020年は新型コロナウイルス感染拡大で、日本だけでなく世界がコロナ対応に追われた。国内では、政府や自治体が相次いで支援策を打ち出し、企業倒産は抑制された。だが、インバウンド需要が消失し、感染防止の観点から国内移動の制約が強まった。さらに年末にかけて第三波が押し寄せ、消費関連業種を中心に、苦境に追い込まれた。特に、老舗企業の大半を占める小・零細企業ほど経営的な打撃を受けている。
2021年に創業100周年を迎える企業は3,696社ある。関東大震災や第2次世界大戦、バブル崩壊、リーマン・ショック、東日本大震災、そして新型コロナなど、災害や不況などを乗り越えてきた。100年、200年、300年と周年を積み重ねた企業は、屋台骨を支える事業と柔軟な発想を持ち、そして何より顧客の信用を得ている。強みと弱みを知り、取捨選択を織り交ぜ、時代や流行に沿った経営を続けてきたことが武器だ。
新型コロナで疲弊する企業は多い。2020年は後継者不在の企業倒産も目立った。さらに、「休廃業・解散」も最多を記録した。老舗企業は、こうした時代のエポックを乗り越え、何代もの後継者が事業を引き継いでいる。苦難の時代を乗り越え、事業承継のノウハウを持つ老舗企業が、華やかにみえる経済の表舞台の土台をしっかり支えている。
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