「昭和食堂」運営の海帆、増資発表も厳しい資金繰りが続く
「新型コロナウイルス」直撃で、飲食業界は厳しい環境に晒されている。居酒屋「なつかし処 昭和食堂」などを展開する(株)海帆(TSR企業コード:402341732、名古屋市中村区、東証マザーズ)は10月13日、投資事業組合への第三者割当増資で6億3,000万円を調達することを発表した。
業績悪化のなかでコロナ禍に見舞われ、2020年3月期で債務超過に転落。上場廃止の猶予期間に入り、GC注記も記載されている。
仕入代金や家賃支払が遅れ、税金の納付猶予制度など、上場企業とはいえ深刻な資金繰り難から抜け出せずにいる。金融機関からの新規の資金調達も困難で、増資に踏み切った。
東京商工リサーチ情報部は海帆に取材を求めたが、期日までに対応は得られなかった。
海帆は2003年5月設立の新興企業で、積極的な出店で事業を拡大。2015年4月に東証マザーズに上場した。居酒屋のほか、焼き肉や天ぷらなどの新業態にも進出。2017年3月期(連結)は、売上高63億4,066万円を計上した。だが、その後は不採算店の閉鎖などで減収が続き、2020年3月期(単体)は新型コロナの影響もあって、売上高は39億7,782万円に落ち込み、6億9,560万円の当期純損失を計上。債務超過に転落し、GC注記も記載した。
新型コロナが追い打ち、深刻な資金繰り悪化
海帆は、緊急事態宣言による休業や宣言終了後も客足は戻らず、第1四半期の売上高は前年同期比83.6%以上減と激減。6月末時点の現預金は4,600万円に減少した。
このため仕入代金や家賃の支払を保留し、税金の納付猶予制度を活用していた。さらに、7月に投資会社から繋ぎ資金として調達した4億円の返済期日を9月末から10月末に延長するなど、苦しい資金繰りが表面化していた。
だが、4億円の返済見通しが立たないうえ、金融機関からの資金調達も難しく、投資事業組合から約6億3,000万円の調達を決議した。
綱渡りの資金繰りが続く
だが、綱渡りの資金繰りが続く。増資資金の調達予定日は11月で、延長した10月末期限の4億円の返済原資はメドがたっていない。
海帆によれば、中長期的な返済期限の延長に至らなかった場合、「担保権の実行により、物上保証人である当社代表取締役久保氏が保有する当社株式232万8,700株が質権設定されており、質権設定された当社株式での弁済となる可能性がある」という。
「一刻の猶予もない」として、大規模ディスカウントの新株予約権の発行を決めた。調達予定の6億3,000万円のうち、4億円は借入金の返済。残りは11月から来年3月までの人件費や地代家賃、仕入代金などに充てる予定。人件費や家賃は月間1億円弱の運転資金が必要で、厳しい資金繰りが続く。
海帆によると、7月の売上高は約7,500万円、9月見込みも約7,800万円と回復が遅れ、売上高で運転資金を補えていないという。
客数回復による売上増とコスト削減を急ぐが、当面は多忙な資金繰りが続きそうだ。
(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2020年10月16日号掲載予定「WeeklyTopics」を再編集)
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