• TSRデータインサイト

「有限会社」業績動向調査

  古い、小さいイメージの「有限会社」が元気だ。全国13万2,178社の「有限会社」の2019年売上高は合計16兆1,870億1,700万円(前年比1.5%増)で、消費増税など厳しい経営環境下でも2年連続で増収を持続した。
2006年5月に施行された新会社法で、「有限会社」の新設や「有限会社」への組織変更はできなくなった。このため、現在ある「有限会社」を最後に、事業継続しない限り「有限会社」は消える運命にある。
「有限会社」は、売上高1億円未満が全体の約7割(構成比66.0%)、従業員5人未満が5割(同54.3%)と小規模企業が大半を占める。だが、業歴100年以上が1,633社、2019年の売上高100億円以上も8社あることもわかった。

  • ※ 本調査は、東京商工リサーチの企業データベース(379万社)のうち、2019年1月期-2019年12月期(2019年)を最新期とし、3期連続で売上高と当期純利益を比較可能な「有限会社」13万2,178社を抽出し、分析した。

2年連続の増収増益と好調な「有限会社」

  「有限会社」 13万2,178社の売上高合計は、2019年まで2年連続の増収をたどっている。
2017年の売上高合計は、15兆6,641億4,300万円で、2018年は前年比1.7%増の15兆9,355億7,100万円と伸ばした。2019年も好調を持続し、同1.5%増の16兆1,870億1,700万円と、16兆円台に乗せた。
当期純利益も堅調で、2018年は同5.0%増の3,467億4,000万円、2019年も同6.4%増の3,689億9,400万円を確保した。

有限会社①

倒産や廃業などは年1万6,138社

  「有限会社」の倒産は、2008年の5,070件以降、11年連続で減少し、2019年は前年比2.4%減の1,827件にとどまった。
一方、休廃業・解散は、2012年に1万件(1万559件)を上回り、2018年には1万5,900件まで上昇。2019年は1万4,311件とやや減少したが、依然として高止まりの水準が続く。
好調な「有限会社」がある一方、後継者難や業務を変革できない「有限会社」は多いことを示している。
なお、2019年に倒産と休廃業・解散した「有限会社」は合計1万6,138社(前年比9.1%減)だった。

売上高1億円未満が約7割

  「有限会社」の売上高別は、1億円未満が8万7,312社(構成比66.0%)で最多、10社のうち、約7社が売上高1億円未満の小規模事業者だ。
次いで、1億円以上5億円未満が4万721社(同30.8%)、5億円以上10億円未満が3,013社(同2.2%)。
10億円以上50億円未満が1,081社(同0.82%)、50億円以上100億円未満が43社(同0.03%)、100億円以上は8社(同0.01%)の順で、売上高10億円以上は全体のわずか0.8%にとどまった。

有限会社②

損益別 黒字が約8割

  損益別では、2019年の黒字企業が10万944社(構成比76.3%)で約8割が黒字だった。赤字企業は、3万1,234社(同23.6%)。
2018年と比べ、黒字企業は641社増加し、堅実経営が多いようだ。

産業別 建設業が全体の6割

  産業別では、建設業が7万5,503社(構成比57.1%)で約6割を占めた。老舗の規模が小さい建設業は、法人格を変更せず「有限会社」を使い続けている。
次いで、サービス業他の1万3,383社(同10.1%)、製造業の1万2,025社(同9.1%)、小売業の1万911社(同8.2%)の順。
金融・保険業(452社)や情報通信業(1,019社)は「有限会社」が少なかった。

業歴別 100年以上が1,633社

  業歴別では、100年以上の老舗企業が1,633社(構成比1.2%)あった。歴史のある法人格だけに100年以上の企業も多い。
最多は、10年以上50年未満の9万1,469社(同69.2%)で7割を占めた。
10年未満の15社は、休眠していた「有限会社」を再開したため。

従業員数別 10人未満が8割以上

  従業員数別では、5人未満が7万1,770社(構成比54.3%)で最多だった。次いで5人以上10人未満が4万54社(同30.3%)、10人以上50人未満が1万9,305社(同14.6%)の順。
100人以上は105社(同0.08%)にとどまる。

都道府県別 最多は東京、最少は奈良

 都道府県別の最多は、東京都の1万302社(構成比7.7%)。次いで、神奈川県の9,141社(同6.9%)、愛知県の8,466社(同6.4%)、千葉県の7,555社(同5.7%)、静岡県の6,198社(同4.6%)の順だった。
最も少なかったのは、奈良県の487社(同0.3%)、次いで佐賀県の545社(同0.4%)、和歌山県の704社(同0.5%)。

都道府県別で全体の企業数と「有限会社」の比率を算出した。
企業比率の最多は、大分県(2,593社)の8.1%。以下、鳥取県(1,198社)が7.4%、島根県(1,594社)が7.1%の順。
逆に比率が低かったのは、京都府(938社)の1.1%、奈良県(487社)が1.5%、大阪府(4,397社)が1.6%と近畿圏は「有限会社」の比率が低かった。

※企業数は「平成28年経済センサス活動調査」を参照。

 2006年5月に新会社法の施行で有限会社法が廃止され、「有限会社」の新設や有限会社への組織変更ができなくなった。ただ、現在の有限会社は、設立から少なくとも14年を経過した企業であり、一定の信用度を持っている。
規模の小さな会社が多いが、技術力や実績を持つ縁の下の力持ちのような会社が「有限会社」には多い。株式会社や合同会社に負けず、戦いを挑む「有限会社」だが、新型コロナウイルスに深刻な影響を受けているケースも多い。すでに2019年には倒産と休廃業・解散の合計は1万6,138社で、次第に有限会社が少なくなっている。
日本経済の成長に、有限会社も貢献してきた。新型コロナで各地の企業が疲弊する今こそ、長年の技術や信頼を培ってきた「有限会社」の検証からヒントが生まれるかも知れない。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「社長の出身大学」 日本大学が15年連続トップ 40歳未満の若手社長は、慶応義塾大学がトップ

2025年の社長の出身大学は、日本大学が1万9,587人で、15年連続トップを守った。しかし、2年連続で2万人を下回り、勢いに陰りが見え始めた。2位は慶応義塾大学、3位は早稲田大学と続き、上位15校まで前年と順位の変動はなかった。

2

  • TSRデータインサイト

内装工事業の倒産増加 ~ 小口の元請、規制強化で伸びる工期 ~

内装工事業の倒産が増加している。業界動向を東京商工リサーチの企業データ分析すると、コロナ禍で落ち込んだ業績(売上高、最終利益)は復調している。だが、好調な受注とは裏腹に、小・零細規模を中心に倒産が増加。今年は2013年以来の水準になる見込みだ。

3

  • TSRデータインサイト

文房具メーカー業績好調、止まらない進化と海外ファン増加 ~ デジタル時代でも高品質の文房具に熱視線 ~

東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースによると、文房具メーカー150社の2024年度 の売上高は6,858億2,300万円、最終利益は640億7,000万円と増収増益だった。18年度以降で、売上高、利益とも最高を更新した。

4

  • TSRデータインサイト

ゴルフ練習場の倒産が過去最多 ~ 「屋外打ちっぱなし」と「インドア」の熾烈な競争 ~

東京商工リサーチは屋外、インドア含めたゴルフ練習場を主に運営する企業の倒産(負債1,000万円以上)を集計した。コロナ禍の2021年は1件、2022年はゼロで、2023年は1件、2024年は2件と落ち着いていた。 ところが、2025年に入り増勢に転じ、10月までの累計ですでに6件発生している。

5

  • TSRデータインサイト

解体工事業の倒産が最多ペース ~ 「人手と廃材処理先が足りない」、現場は疲弊~

各地で再開発が活発だが、解体工事を支える解体業者に深刻な問題が降りかかっている。 2025年1-10月の解体工事業の倒産は、同期間では過去20年間で最多の53件(前年同期比20.4%増)に達した。このペースで推移すると、20年間で年間最多だった2024年の59件を抜いて、過去最多を更新する勢いだ。

TOPへ