• TSRデータインサイト

【取材の周辺】電力小売のあくびコミュニケーションズ、「架空契約で販売奨励金」

 光通信回線や電力小売などのあくびコミュニケーションズ(株)(TSR企業コード:014228572、渋谷区、以下あくび社)の破産に衝撃が広がっている。
2月28日の破産開始決定後、管財人は「早ければ3月末にも電気の供給・インターネット接続サービス・通信サービスの提供停止が見込まれる」と公表。あくび社は不適切な勧誘などで総務省や消費者庁、経産省から度重なる行政処分を受けていた。さらに破産手続きの中で、架空請求や販売奨励金に頼った自転車操業などの問題も次々に浮かび上がった。
東京商工リサーチ(TSR)情報部が、消費者を巻き込んだあくびコミュニケーションズの倒産に迫った。

事業拡大と行政処分

 あくび社は2015年3月の設立で、プロバイダ事業の「AKUBINET」、光通信回線など「AKUBIヒカリ」、携帯通信用SIMレンタルなどの「AKUBIモバイル」など、事業を順次拡大していた。
2018年以降は、電力小売の「AKUBIでんき」もスタートし、売上高は2018年2月期の28億7,908万円から2019年同期は46億607万円へ急成長した。
ところが、2019年4月に「電気料金が安くなる」などと告げながら、実際は電力料金の一部しか安くならなかったとして消費者庁から一部業務停止命令を受けた。その後も、総務省や経産省から相次いで処分を受けた。
あくび社は、破産に至った原因について、相次ぐ処分でブランドイメージが悪化したことが大きい、と本末転倒の説明を行っていた。

不適切な会計処理と架空請求

 破産管財人などの調査が進むと、歪な収益構造と架空契約の疑いが明らかになった。
販売奨励金は本来、前受収益として期間の経過に応じ売上計上すべきだが、あくび社は受け取った時点で全額を計上。コスト管理がずさんで、顧客との契約を伸ばし続けないと資金繰りが破たんする状況だった。
販売の伸びが止まると、あくび社は禁断の架空契約で販売奨励金を獲得した。架空契約は顧客から月額利用料が入らない。
最終的にあくび社は、2019年末から顧客に架空請求を行うようになる。こうした不正な経営手法が早晩、行き詰まるのは誰の目にも明白だった。

 破産時、通信事業で約9,000件、電力小売り事業で約1万7,000件の顧客に対し、電力や通信が止まる事態に発展しかねなかった。このため、 破産管財人などの関係者が尽力し、電力はほぼすべての顧客を新たな電力小売事業者に契約を移行した。
通信事業も卸売業者に事業を譲渡し、障害を発生させることなく通信事業を終了した。
管財人は、現在も資産の換価や不正な資金の流れの調査を継続している。この手の不正な営業手法は、外部から見抜くのは難しい。そこを逆手にとった不正だったが、顧客から支持されなければ、生き残りは難しい。


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2020年8月21日号掲載予定「取材の周辺」を再編集)

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「リファラル採用」 企業の半数に広がる 定着率はリファラルが新卒、転職エージェントを上回る

東京商工リサーチは、採用に関する企業向けアンケート調査を実施した。人手不足やAI・DXの普及で転職市場の活況が続き、近年はリファラルやアルムナイ採用も広がっている。特に、リファラル採用は、転職エージェントの紹介より従業員の定着率が高いと考える企業が多いことがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

大手ホテル好調 客室単価と稼働率が同時上昇 客室単価はコロナ禍の2倍超、稼働率は83.3%

インバウンド需要と国内旅行の復活で、大手ホテルの客室単価と稼働率が、コロナ禍以降で最高を更新した。 ホテル運営の上場12社(13ブランド)の2025年度の客室単価は、1万7,818円(前年度比8.6%増)で前年度より1,424円上昇した。稼働率は83.3%(前年度82.3%)で、高水準を維持した。

3

  • TSRデータインサイト

経営責任を取る事業再生、ジュピターコーヒーは黒字化へ ~ ネクスト・キャピタル・パートナーズ 単独インタビュー ~

2025年度の企業倒産は1万505件(前年度比3.5%増)で、2年続けて1万件を超えた。 こうしたなか、20年を超すファンド運営で事業再生を数多く手掛けてきたのがネクスト・キャピタル・パートナーズ(株)だ。浅野晃司・取締役執行役員に特色や取り組みを聞いた。

4

  • TSRデータインサイト

企業の7.8%で退職金「増額・導入」  「減額・廃止」企業は月給などへ、資産形成は自己責任

これまで「年功序列」や「終身雇用」が前提の日本の会社では、長く勤め上げてまとまった退職金を受け取ることが一般的だった。だが、東京商工リサーチ(TSR)のアンケート調査で、2023年以降の退職金制度は「増額・導入」が7.8%に対し、「減額・廃止」は1.9%だった。

5

  • TSRデータインサイト

サッカーW杯 日本代表を支える40社 売上1兆円以上8社 設立10年未満も

2026年6月11日、米国・カナダ・メキシコの3カ国共催で、史上最大規模のFIFAワールドカップが開幕する。5月15日、日本代表メンバー26名も発表され、関心が集まるなか、スポンサーシップやパートナーシップなど、サッカー日本代表・日本サッカー協会を支援する企業40社を調査した。

TOPへ