• TSRデータインサイト

2020年3月期決算 上場企業2,034社 「外国法人等株式保有比率」調査

 2020年3月期決算の上場企業2,034社で、外国法人等株式保有比率(以下、外国法人等比率)が2年連続で低下したことがわかった。
上場企業2,034社の外国法人等比率の中央値は9.46%で、前年同期(9.55%)より0.09ポイント低下した。調査対象の2011年同期から7年連続で上昇していたが、2019年同期に初めて低下し、2年連続の低下となった。
産業別では、外国法人等比率の最高は、電気・ガス業の16.50%(前年同期17.58%)。最低は、小売業の3.68%(同5.05%)で、前年同期より1.37ポイント低下した。
企業別での外国法人等比率では、最高が東証2部上場の価値開発(本社・東京)の78.25%で、唯一、70%台だった。2019年3月に第三者割当増資を実施し、2019年同期には78.21%に急上昇した。次いで、シャープ67.63%(前年同期67.75%)、日産自動車65.57%(同61.12%)と続く。資本提携や経営再建による第三者割当増資で、高水準になっている。
一方、外国法人等比率が10%未満は1,056社(構成比51.9%)。前年同期から保有比率が低下したのは1,044社(同51.3%)で、それぞれ半数を占めた。
2011年3月期は4.00%(1ドル=82.84円)にとどまっていた外国法人等比率は、その後の円安で2018年同期は9.67%に上昇した。ここ数年は、円安傾向も弱まり、2年連続で保有比率が低下した。今後、米中問題、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大による経済活動へ影響などもあり、投資家が資金確保に向けて売却に動くのか、経営不振に陥った国内企業が外国法人等に支援を求めるのか、保有比率の動向が注目される。

  • 本調査は東証などすべての証券取引所に株式上場する企業を対象に、3月期決算の2011年同期から2020年同期まで10期連続で比較可能な企業を抽出。8月11日までに有価証券報告書を提出した2,034社(変則決算企業は除く)。
  • 有価証券報告書で「株式等の状況」の所有者別状況(普通株式)の外国法人等を集計した。
  • 産業・業種分類は証券コード協議会の定めに準じた。

2年連続で保有比率が低下

 2020年3月期の上場企業2,034社の外国法人等比率の中央値は9.46%だった。前年同期の9.55%より0.09ポイント低下し、2年連続で前年同期を下回った。
2012年後半に円高から円安に為替相場がシフトし、円安で業績好調な企業が増えた2018年3月期は9.67%まで上昇した。しかし、2019年4月以降の為替相場は1ドル=110円を下回り、輸出企業を中心に好調だった上場企業の業績は伸び悩み、保有比率低下の要因になったとみられる。

外国法人株式保有

保有比率別 10.0%未満が5割

 上場企業2,034社の外国法人等比率は、10.0%未満が1,056社(構成比51.9%、前年同期1,039社)で5割を占めた。次いで、10.0%以上20.0%未満が480社(同23.5%、同471社)、20.0%以上30.0%未満が295社(同14.5%、同305社)、30.0%以上40.0%未満が139社(同6.8%、同157社)、40.0%以上50.0%未満が48社(同2.3%、同48社)の順。
50.0%以上60.0%未満は11社(同0.5%、同7社)、60.0%以上は5社(同0.2%、同7社)で、50.0%以上は16社(同0.7%、同14社)と2社増加した。

外国法人株式保有2

 2020年に入り、新型コロナ感染拡大が国内外の企業業績に影を落としている。拡大をたどってきた外国法人比率は、2019年4月以降は為替相場が1ドル=110円を下回り、外国法人等の投資も停滞感がみえる。
近年、株主総会前に企業価値の向上を求めて経営に提言する「もの言う株主」(アクティビスト)が話題に上がるが、これまでは企業の株式持ち合いや、取引金融機関が安定株主として大株主の位置にあった。
今後、グローバルビジネスが広がり外国法人等の保有比率が高まれば、上場企業はこれまで以上に企業価値の向上や企業統治、法令順守への対応が求められることになる。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月の「人手不足」倒産が過去最多 「従業員退職」が前年の1.6倍増、初の年間300件超へ

2025年9月に「人手不足」が一因となった倒産は、調査を開始した2013年以降では月間最多の46件(前年同月比109.0%増)を記録した。また、2025年1-9月累計も、過去最多の285件(前年同期比31.3%増)に達し、人手不足はより深刻さを増していることがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

ケーキや和菓子は「高値の花」に、スイーツ店が苦境 倒産は過去20年で最多ペース、競合商品も台頭

街のスイーツ店が苦境に陥っている。材料コストの上昇、酷暑、人手不足が重なり、商品値上げによる高級化も購入機会の減少につながったようだ。2025年1-9月の菓子製造小売の倒産は、過去20年で最多の37件に達した。

3

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月「後継者難」倒産が過去2番目 332件 高齢化が加速、事業承継の支援が急務

代表の高齢化が進み、後継者が不在のため事業に行き詰まる企業が高止まりしている。2025年1-9月の「後継者難」倒産(負債1,000万円以上)は332件(前年同期比4.5%減)で、2年ぶりに前年同期を下回った。だが、2025年は過去最多だった前年同期の348件に次ぐ、過去2番目の高水準だった。

4

  • TSRデータインサイト

2025年 全国160万5,166社の“メインバンク“調査

全国160万5,166社の“メインバンク”は、三菱UFJ銀行(12万7,264社)が13年連続トップだった。2位は三井住友銀行(10万1,697社)、3位はみずほ銀行(8万840社)で、メガバンク3行が上位を占めた。

5

  • TSRデータインサイト

2025年度上半期の「円安」倒産30件 仕入コスト上昇が卸売業を直撃

2025年度上半期(4-9月)の「円安」関連倒産は、30件(前年同期比31.8%減)だった。上半期では、2022年度以降の円安では前年度の44件に次いで、2番目の高水準になった。

TOPへ