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【取材の周辺】老舗醤油メーカー「とら醤油」、時代の変化とコロナの影響で民事再生

 「とらのマークは、ママのご自慢」のとら醤油(株)(TSR企業コード:710073771、倉敷市)が5月19日、岡山地裁に民事再生法の適用を申請した。負債総額は4億1,079万円だった。
 食生活の変化に取り残され、業績不振から借入金に依存した経営を続け、中小企業再生支援協議会(支援協)に支援を要請した。2017年12月に金融債務の返済猶予を受けたが、「新型コロナウイルス」が追い打ちをかけ、自力再建の断念に追い込まれた。


県下有数の老舗企業の衰退

 とら醤油は、今から160年前の1860年、水や大豆など豊潤な土地と原料に恵まれた倉敷市酒津で三宅醤油店として創業した。
 醤油と味噌の醸造元だったが、工場の近代化や同業から事業を譲り受け、扱い品を増やしていった。1999年8月期の売上高は6億313万円を計上、地元では食卓の必需品になっていた。だが、時代とともに食生活も変わり、醤油市場は縮小を続けた。さらに健康志向の高まりで減塩醤油や、鮮度を保つパッケージ開発などの差別化も求められた。
 これを商機にした全国ブランドの大手メーカーが参入すると、地域ブランドは一気にシェア競争に巻き込まれた。とら醤油もつゆ、ドレッシングなど、醤油以外の商品に手を広げたが、結果は出なかった。
 貧すれば鈍するで、売上確保の販売奨励費や多品種化がコストアップを招き、2013年8月期は売上高4億3,641万円に対し、2,757万円の営業損失の計上を余儀なくされた。

コロナが追い打ち、先行き不透明感が漂う

 2017年12月、支援協スキームで金融機関に要請した約3億2,000万円のリスケ期日が今年6月に迫っていた。経営改善計画で固定費削減や販売奨励費を見直したが、2019年8月期も売上高は3億5,591万円にとどまり、1,169万円の赤字で、改善は進まなかった。
 そこに新型コロナが襲った。1,000件以上の販路を持つ業務用売上が柱だっただけに、外出自粛で飲食店やイベント向けが急減。リスケ返済も難しく、再建計画は挫折した。
 民事再生申請後、とら醤油のホームページには、「主要仕入先の支援を受け再建を図る」と記載されている。だが、関係者は声をそろえ、現状を「今は言えない」と言葉を濁す。
 とら醤油に6月11日、新たな債権、動産譲渡登記が設定された。民事再生手続き中の譲渡登記の目的は不明だが、債権者の支援に温度差があるのか、成り行きが注目される。


 レナウンなど時代の変化についていけない老舗や名門企業が、新型コロナで苦境に陥るケースが目立つ。新型コロナは終息が見通せず、感染リスクを避けた「新しい生活様式」は、生産性向上への取り組みが遅れた老舗企業に重い課題を突きつけている。
 伝統を守り、コロナ禍を乗り越えられるか。とら醤油と債権者の着地点が注目される。


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2020年6月15日号掲載予定「取材の周辺」を再編集)

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