• TSRデータインサイト

【取材の周辺】有楽商事、破たんの決定打は「コロナによるスポンサー辞退」

 4月30日、群馬県内で3店舗のパチンコ・パチスロホールを運営していた(有)有楽商事(TSR企業コード:270161660)が負債55億円を抱え、東京地裁に破産を申請した。
 新型コロナの感染拡大で4月14日から全店舗を臨時休業していたが、営業再開の見込みが立たず事業継続を断念した。新型コロナの関連倒産では群馬県で初めて、パチンコホールでは全国2番目となった。
 臨時休業で売上が立たず、さらに先行きも見通せなくなったことが表面上の原因といわれる。だが、昨年から水面下で進めていたスポンサー交渉が新型コロナの影響で破談になったことが決定打となった。

「5号機問題」、「出玉規制」

 有楽商事が東京地裁に提出した「破産申請書」によると、2007年の5号機問題、2018年の出玉規制などで来店客数の減少が続いていた。厳しい営業の一方、集客のために新台入替に伴う設備投資などで借入金が肥大化。資金繰りがひっ迫し、2017年以降はたびたび金融機関に借入金の元本返済猶予などのリスケを要請していた。
 経営悪化を打開するため、昨夏以降、FA(フィナンシャルアドバイザー)なども投入し、スポンサー探しを進めていた。ところが、「従前より債務者の事業の関心を抱いていた有力なスポンサー候補(同業者)は、今般のコロナウイルス感染症の拡大を受けて、令和2年4月1日にスポンサー候補から辞退した」(破産申請書より)という。
 このため、改めてスポンサーを募ったが、政府の緊急事態宣言で「休業要請を受けてパチンコ業界全体が苦境に立たされ」たことで、万事休すとなった。

増勢強める「パチンコホール」の倒産

 休業要請に応じない一部の店舗の存在が大きくクローズアップされ、パチンコ業界は「3密」の温床のようにみられた。パチンコ店が批判覚悟で営業を続けた根底には、長年にもわたる市場縮小という経営環境の厳しさが横たわる。
 また、移ろいやすい客を繋ぎとめるには恒常的な設備投資も欠かせない。事業を継続するには投資負担が必要だが、それが重くのしかかる中小規模ほど資金繰りが苦しい環境にある。
2 020年1-4月累計の「パチンコホール」倒産は、前年同期比2倍の10件と増勢を強めた。これに新型コロナが追い打ちをかけ、経営体力の差があぶり出されている。



(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2020年5月28日号掲載予定「取材の周辺」を再編集)

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

ハンバーガー店の倒産、最多更新 ~ 材料高騰、大手と高級店の狭間で模索 ~

年齢を問わず人気のハンバーガー店が苦境だ。2024年は1件だった倒産が、2025年は8月までに7件に達し、過去最多の2014年の年間6件を上回った。

2

  • TSRデータインサイト

2025年「全国のメインバンク」調査 ~GMOあおぞらネット銀行 メイン社数の増加率2年連続トップ~

「2025年全国企業のメインバンク調査」で、GMOあおぞらネット銀行が取引先のメインバンク社数の増加率(対象:500社以上)が2年連続でトップとなった。

3

  • TSRデータインサイト

タクシー業界 売上増でも3割が赤字 人件費・燃料費の高騰で二極化鮮明

コロナ禍を経て、タクシー業界が活況を取り戻している。全国の主なタクシー会社680社の2024年度業績は、売上高3,589億5,400万円(前期比10.6%増) 、利益83億3,700万円(同11.1%増)で、増収増益をたどっている。

4

  • TSRデータインサイト

「葬儀業」は老舗ブランドと新興勢力で二極化 家族葬など新たな潮流を契機に、群雄割拠

全国の主な葬儀会社505社は、ブランド力の高い老舗企業を中心に、売上高を堅調に伸ばしていることがわかった。 ただ、新たに設立された法人数が、休廃業・解散や倒産を上回り、市場は厳しい競争が繰り広げられている。

5

  • TSRデータインサイト

2025年 全国160万5,166社の“メインバンク“調査

全国160万5,166社の“メインバンク”は、三菱UFJ銀行(12万7,264社)が13年連続トップだった。2位は三井住友銀行(10万1,697社)、3位はみずほ銀行(8万840社)で、メガバンク3行が上位を占めた。

TOPへ