• TSRデータインサイト

キャスキッドソン、コロナ倒産に隠れたブランド戦略の迷走

 イギリス発の雑貨ブランド「キャスキッドソン」を日本で展開していたキャスキッドソンジャパン(株)(TSR企業コード:013146645、東京都)が4月22日、東京地裁に破産を申請した。負債額は約65億円で「新型コロナウイルス」関連倒産でも4番目の大型倒産だ。
イギリスの親会社が新型コロナの影響で経営破たんし、日本でも店舗の営業自粛を余儀なくされ、連鎖的に行き詰まった。多くの人が知る著名 ブランドだけに、突然の破たんで営業終了を惜しむ声は少なくない。

女性がこぞって持つ人気アイテム

 キャスキッドソンはレディース向けのバッグやポーチ、パスケースなどの服飾雑貨のブランド。小花や薔薇、野苺などをモチーフに、イギリスを象徴するクラシカルなデザインが特徴だ。2002年にセレクトショップのユナイテッドアローズが販売権を取得し、店頭に並べたことで人気に火がついた。
 斬新なデザインと、ビニールコーティングされた生地の独特の風合いで、ルイ・ヴィトンなどの高級ブランドとは雰囲気も値段も異なる存在感を築き、女性がこぞって持つ人気アイテムとなった。
 だが、セレクトショップのコーナーに置かれていた時代が、ブランドとしての「旬」だった。日本でのキャスキッドソン事業はその後、別のアパレル業者に移り、2015年以降はイギリス・キャスキッドソン社が全額出資するキャスキッドソンジャパン(=当社)による経営体制に代わった。
 この間、商業施設や駅ビルなどに直営店を出店し、全国44店舗を展開する規模に拡大した。だが、ブランドの陳腐化というジレンマに直面した。また、並行輸入品がディスカウントストアやネット通販でも手に入るようになり、急速に希少性も失われた。
 長年愛用したファンほど、キャスキッドソンが、誰もが持つブランドに「成長」したことで敬遠するようになった。当初、イギリスメイドだった商品の大半が中国での生産に切り替わった事や、雑誌とのタイアップでキャスキッドソンのブランドを冠したバッグが付録になったことも往年のファンをげんなりさせることに繋がった。


 マス・マーケットに打って出るには、大衆化によるブランド価値の棄損を避けられない面はある。だが、業容拡大と同時に、ブランドが持つポリシーや付加価値まで損なっては本末転倒だ。近年は店舗の不採算店の撤退と新規出店を繰り返し、そのペースが早まっていたことに試行錯誤の苦渋がうかがえた。
 世界中に店舗を展開し、年々拡大しながらも高付加価値を維持する人気ブランドは数多く存在する。不運にもキャスキッドソンは、新型コロナが日英両国を同時に直撃し、本家の親会社もろとも行き詰まった。だが、その根底にはブランドとしての戦略ミスも見え隠れする。
 抜群の知名度を誇っただけに、巧みな戦略が機能していればコロナ禍に飲み込まれず、また違った展開もあったかもしれない。


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2020年5月27日号掲載予定「取材の周辺」を再編集)

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「リファラル採用」 企業の半数に広がる 定着率はリファラルが新卒、転職エージェントを上回る

東京商工リサーチは、採用に関する企業向けアンケート調査を実施した。人手不足やAI・DXの普及で転職市場の活況が続き、近年はリファラルやアルムナイ採用も広がっている。特に、リファラル採用は、転職エージェントの紹介より従業員の定着率が高いと考える企業が多いことがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

大手ホテル好調 客室単価と稼働率が同時上昇 客室単価はコロナ禍の2倍超、稼働率は83.3%

インバウンド需要と国内旅行の復活で、大手ホテルの客室単価と稼働率が、コロナ禍以降で最高を更新した。 ホテル運営の上場12社(13ブランド)の2025年度の客室単価は、1万7,818円(前年度比8.6%増)で前年度より1,424円上昇した。稼働率は83.3%(前年度82.3%)で、高水準を維持した。

3

  • TSRデータインサイト

経営責任を取る事業再生、ジュピターコーヒーは黒字化へ ~ ネクスト・キャピタル・パートナーズ 単独インタビュー ~

2025年度の企業倒産は1万505件(前年度比3.5%増)で、2年続けて1万件を超えた。 こうしたなか、20年を超すファンド運営で事業再生を数多く手掛けてきたのがネクスト・キャピタル・パートナーズ(株)だ。浅野晃司・取締役執行役員に特色や取り組みを聞いた。

4

  • TSRデータインサイト

企業の7.8%で退職金「増額・導入」  「減額・廃止」企業は月給などへ、資産形成は自己責任

これまで「年功序列」や「終身雇用」が前提の日本の会社では、長く勤め上げてまとまった退職金を受け取ることが一般的だった。だが、東京商工リサーチ(TSR)のアンケート調査で、2023年以降の退職金制度は「増額・導入」が7.8%に対し、「減額・廃止」は1.9%だった。

5

  • TSRデータインサイト

サッカーW杯 日本代表を支える40社 売上1兆円以上8社 設立10年未満も

2026年6月11日、米国・カナダ・メキシコの3カ国共催で、史上最大規模のFIFAワールドカップが開幕する。5月15日、日本代表メンバー26名も発表され、関心が集まるなか、スポンサーシップやパートナーシップなど、サッカー日本代表・日本サッカー協会を支援する企業40社を調査した。

TOPへ