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最新版!「新型コロナ」企業向け支援策

 「新型コロナウイルス」関連破たんが増加の一途をたどっている。4月27日までに全国で100件発生したが、2月は2件、3月は23件、4月は27日までで75件と急増が際立つ。業種別では、最多がインバウンドに依存した宿泊業で21件、次いで飲食業15件と、「個人消費」関連が中心だ。

 4月10日、東京商工リサーチ(TSR)が発表した「新型コロナに関するアンケート」(第3回)調査では、全国1万7,896社から回答があり、97.5%の企業が「すでに影響が出ている」、または「今後影響が出る可能性がある」と回答した。さらに3月の売上は、「すでに影響が出ている」と回答した企業で、8割近くが前年割れだった。
中小企業(資本金1億円未満)は、20%以上の減収が4割を占めた。資金繰りについて「影響がある」と回答した企業は47.2%と半数を占め、このうち4割以上(41.3%)が現在の状況が続くと「3カ月以内に決済に不安が生じる」恐れがあると回答した。 こうしたなか、政府は4月7日、事業規模108.2兆円の経済対策を閣議決定した。経済産業省や厚生労働省、金融庁も相次いで中小企業支援策を打ち出している。
企業向け支援策は、「持続化給付金」と「資金繰り支援」が柱になっている。

持続化給付金

 「持続化給付金」は融資でなく、現金の支給だ。感染拡大で大きな影響を受ける事業者に事業全般に広く使える給付金が支給される。給付額は法人200万円、個人事業者100万円で、対象は新型コロナの影響で売上が前年同月比で50%以上減少し、資本金10億円以上の大企業を除く法人、フリーランスを含む個人事業主となっている。
売上減少の計算方法は、

 前年の総売上-(前年同月比▲50%月の売上×12カ月)

前年同月比▲50%月の対象期間は2020年1月から2020年12月で、任意の月を中小企業が選択する。これは2020年の12カ月のうち、1カ月でも売上が前年同月比で50%以上減少すると支給対象となる。
なお、創業間もないベンチャー企業などは対象外だが、案内よると「昨年創業した方などに合った対応も検討している」としている。
申請は補正予算が成立後、1週間程度で受付を開始する予定。給付は電子申請の場合、申請後2週間程度を想定している。

資金繰り支援

 「資金繰り支援」は、10種類のメニューがあり、売上減少幅に応じて利用可能な支援策が異なる。いくつかを紹介する。

◇売上5%以上減少で利用可能
①セーフティネット5号(相談窓口:民間金融機関、各信用保証協会)。借入債務の80%を信用保証協会が保証。保証限度額は2.8億円。要件を満たせば保証料・金利ゼロ。
② 新型コロナウイルス感染症特別貸付(相談窓口:日本政策金融公庫)。貸付額は中小事業3億円、国民事業0.6億円。返済期間は設備資金20年、運転資金15年、返済の据置期間5年以内。
◇売上高10%以上減少で利用可能(対象:生活衛生関係営業)
③衛生環境激変対策特別貸付(相談窓口:日本政策金融公庫)。貸付額は1,000万円、返済期間は運転資金7年、返済の据置期間2年以内。
◇売上高15%以上減少で利用可能
④危機関連保証(相談窓口:民間金融機関、各信用保証協会)。借入債務の100%を信用保証協会が保証。保証限度額は2.8億円。要件を満たせば保証料・金利ゼロ。
◇売上高20%以上減少で利用可能
⑤セーフティネット4号(相談窓口:民間金融機関、各信用保証協会)。借入債務の100%を信用保証協会が保証。保証限度額は2.8億円。要件を満たせば保証料・金利ゼロ。
資金繰り支援では、創業1年1カ月未満、及び店舗や業容が拡大しているベンチャー、スタートアップなどで、それぞれ売上要件の考え方が示されている。日本政策金融公庫と信用保証協会ともに、最近1カ月の売上高と過去3カ月(最近1カ月を含む)の平均売上を比較する。

「借換」、「リスケ」など

 経済産業省は、支援策をまとめたパンフレット「新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆様へ」をホームページで公表している。そこでは金融機関に対し、配慮を要請している(抜粋)。

① 日本公庫等の既往債務の借換
日本政策金融公庫(沖縄含む)の「新型コロナウイルス感染症特別貸付」や商工組合中央金庫の「危機対応融資」について、既存の貸付や融資に係る債務を対象とした借換を可能とし、実質無利子化の対象にする。
②新型コロナ特例リスケジュール(リスケ)
新たに新型コロナの影響を受けた中小企業者に対して、中小企業再生支援協議会が窓口相談や金融機関との調整を含めた特例リスケジュール計画策定支援を行う。
③金融機関等への配慮要請
新型コロナの影響により、中小企業の資金繰りに重大な支障が生じることがないよう、関係機関と連携し、政府系金融機関等に対し、要請を計4回実施した。3月6日の要請には大臣名で事業者の資金繰りに最大限のスピードで万全の対応を行うことなど、資金繰りに万全を期すよう配慮を要請した。

資金繰り支援の申し込みは全国で始まったが、各自治体の窓口には多くの経営者が訪れている。審査手続きに時間を要し、一刻の猶予もない事業者に融資が間に合うか不透明だ。
都内では、新宿区は多数の相談に処理が追い付かず、申請まで2カ月待ちのケースもある。給付はこれより先になる。
TSRの「新型コロナに関するアンケート」(第3回)では、中小企業の4割が3カ月以内の決済に不安を感じており、このタイムラグは深刻といえる。セーフティネット保証の焦付は、巡り巡って国民負担となる。とはいえ、苦境に直面している中小企業の救済には速やかな融資が求められる。
「持続化給付金」や「資金繰り支援」、「金融機関へ配慮要請」に加え、全国銀行協会は「手形・小切手等の取扱い」について、支払期日を過ぎた手形・小切手であっても、取立や決済を行えるようにする、などを決めた。
また、東京地方裁判所などは、申立ては受け付けるが、緊急性のある事件以外は処理を停止することを公表している。
4月の補正予算の成立を受け、「持続化給付金」の受付がスタートする。


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2020年4月28日号掲載予定「WeeklyTopics」を再編集)

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