• TSRデータインサイト

2019年「倒産企業の財務データ分析」調査

 2019年(1-12月)に倒産した企業は、57.2%が最新期で減収決算となり、生存企業の46.9%を10.3ポイント上回った。また、自己資本に対して利払いや返済が必要な負債の比率である有利子負債構成比率は74.3%と高く、支払利息が営業利益を約2割上回り、本業の儲けを打ち消している。
 倒産企業のうち、最終赤字を計上した割合は、前期43.4%から最新期52.8%に上昇し、自己資本比率10%未満が約8割(79.2%)を占めた。売上低迷と収益悪化が、倒産のトリガーになっていることがわかった。
 2019年は11年ぶりに倒産が前年を上回り、2020年も新型コロナウイルスの感染拡大が企業活動に悪影響を及ぼしている。特に、業績悪化が加速しており、財務が脆弱な企業の動向が注意される。

  • 本調査は、2019年に倒産した企業で、東京商工リサーチの財務情報に3期連続で財務データが収録された545社(個人企業を含む)と、生存企業35万7,538社の財務データを比較、検証した。最新決算期は2019年1月期~12月期まで。

2019年の倒産企業 約6割が最新期に「減収」

 2019年に倒産した545社の最新期の売上高合計は2,929億5,923万円(前期比1.8%増)で、545社のうち、「減収」が312社(構成比57.2%)と約6割を占めた。一方、生存企業35万7,538社では、「減収」は16万7,767社(同46.9%)で、倒産企業より10.3ポイント低かった。売上減から抜け出せない企業が倒産しやすいことを示している。

最新期-前期 増減収率

赤字企業率 倒産企業52.8%、生存企業22.1%

 最新期での赤字企業率(当期純損失の企業対象)は、倒産企業545社では52.8%(288社)と過半数を超えた。一方、生存企業35万7,538社では22.1%(79,086社)にとどまる。倒産企業と生存企業の差は30.7ポイントに広がり、収益格差が鮮明になった。
 倒産企業の赤字企業率は、前々期38.9%→前期43.4%→最新期52.8%で、倒産は業績悪化に歯止めがかからない企業に集中している。一方、生存企業の赤字企業率は前々期21.6%→前期21.6%→最新期22.1%で、対照的にほぼ横ばいで推移している。

赤字企業率

倒産企業の営業利益率 平均▲0.9%

 営業利益率(売上高に占める営業利益の割合)は、最新期の平均で生存企業が5.2%に対し、倒産企業は▲0.9%(▲はマイナス)だった。本業で収益をあげられない状況を示している。
 倒産した545社のうち、営業黒字の企業は前々期59.2%(323社)→前期56.3%(307社)→最新期52.2%(285社)と減少推移をたどっている。生存企業35万7,538社は、前々期72.7%→前期72.2%→最新期71.6%と、対照的に微減にとどまる。

営業利益率

倒産企業の人件費 2期連続で増加

 倒産企業の人件費合計(給料手当+役員報酬)は、前々期→前期5.6%増、前期→最新期7.9%増と2期連続で増加、生存企業の同1.8%増、同1.3%増に比べ、大幅に増加している。
 倒産企業の従業員数は、前々期→前期0.02%増、前期→最新期1.4%減と縮小している。従業員退職など人手不足に直面し、人材をつなぎとめるため人件費抑制が難しかったとみられる。

利払いを利益で賄えない『ゾンビ企業』の割合、倒産企業は生存企業の5.5倍

 営業利益支払利息率(営業利益に対する支払利息の割合)は、生存企業の最新期平均は29.3%と営業利益で賄えている。一方、倒産企業は118.7%と、支払利息が営業利益を上回る異常値となっている。これは、過剰債務による金利負担増、営業利益の減少などが考えられる。
 利払いを営業利益で賄えない企業を、国際決済銀行(BIS)は破たん予備軍として『ゾンビ企業』と定義している。生存企業のゾンビ企業率(※)は最新期で6.1%にとどまるが、倒産した企業では33.6%と、5.5倍に達している。

  • 営業利益支払利息率が100%を超えた企業数を、営業黒字企業数で除して算出。
  • ゾンビ企業率

倒産企業の有利子負債構成比率 生存企業の2.5倍

 借入依存度を示す、有利子負債構成比率(総資産に対する長短借入金、社債などの割合)が、倒産企業の最新期平均は74.3%だった。生存企業は29.0%で、その差は2.5倍に開いた。
 倒産企業の有利子負債構成比率は、前々期69.6%→前期72.5%→最新期74.3%と高止まり傾向が続いていた。倒産直前に有利子負債の急増はみられず、中長期にわたり過大な有利子負債を抱え、それを削減できない企業が倒産しやすいことを示す。倒産企業は自己資金が脆弱で、運転資金等を借入金に依存する。そこにリスケ(返済猶予)が重なり、過剰な有利子負債が固定化した状況が透けてみえる。安易なリスケの功罪でもある。

有利子負債構成比率

倒産企業の自己資本比率▲3.8%、債務超過企業が61.4%

 企業の基礎体力や安全性を示す自己資本比率(総資産に占める自己資本の割合)は、倒産企業の最新期平均が▲3.8%だった。この比率は低いほど借入金等への依存度が高く、比率のマイナスは債務超過を示す。業種により標準値は異なるが、生存企業の最新期は39.1%で、倒産企業の財務内容の脆弱さがひと際目立つ。
 最新期の自己資本比率が30%以上の企業は、生存企業が20万1,032社(構成比56.2%)と約6割だったのに対し、倒産企業は26社(同4.7%)に過ぎず、圧倒的な差がついた。一方、債務超過は生存企業の5万9,469社(同16.6%)に対し、倒産企業は335社(同61.4%)と6割を超えた。

自己資本比率


 消費増税による消費マインドの冷え込み、後継者難や人材確保難を含む人手不足など、中小企業を取り巻く環境は厳しさを増している。そこに新型コロナウイルスの感染拡大が追い打ちをかけている。2019年は11年ぶりに企業倒産が前年を上回り、底打ち感が高まっている。財務脆弱な企業の体力は疲弊しており、新たな支援策が急務になる一方で、支援後の改善指導がこれまで以上に必要とされている。

記事の引用・リンクについて

記事の引用および記事ページへのリンクは、当サイトからの出典である旨を明示することで行うことができます。

(記載例) 東京商工リサーチ TSRデータインサイト ※当社名の短縮表記はできません。
詳しくはサイトポリシーをご確認ください。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

モームリ運営会社、退職代行サービスの営業再開を発表

4月23日、退職代行サービス「モームリ」を運営する(株)アルバトロス(TSRコード:694377686、横浜市)はモームリの再開を発表した。なお、アルバトロスの代表取締役には谷本慎二氏に代わって浜田優花氏が4月1日付で就任している。

2

  • TSRデータインサイト

「在留資格の厳格化」 企業の5%が廃業検討 ビザの厳格化で、外国人企業の半数近くが影響

「経営・管理」の在留資格の厳格化の影響が広がっている。2025年10月許可基準が見直しされ、従来の資本金要件が500万円から3,000万円以上へ6倍に引き上げられた。さらに、これまでなかった申請者又は常勤職員のいずれかが日本語能力を有するなどの要件も加わり関係企業は対応を迫られている

3

  • TSRデータインサイト

「退職代行」からの連絡、企業の3割取り合わず 有給や退職日の交渉などの通知を3割が経験

ことし2月、大手退職代行サービスの代表らが弁護士法違反の疑いで逮捕された。4月に入り、退職代行の話題も出始めたが、弁護士や労働組合以外の「退職代行」業者から連絡があっても、3割(30.4%)の企業が非弁行為が含まれる可能性があり、取り合わないことがわかった。

4

  • TSRデータインサイト

ケフィア事業振興会、破産配当率は約1.1% ~ 「オーナー商法」破産から7年、約3万人に配当 ~

「オーナー商法」として社会問題化し、出資法違反で逮捕者も出した(株)ケフィア事業振興会(TSRコード:298080745)の破産手続きが終結に近づいている。破産管財人の資料によると、ケフィア事業振興会の配当率は約1.1%で、金額は11億円を超える配当になる見込みだ。

5

  • TSRデータインサイト

2026年「ゾンビ企業って言うな!」 ~ 金利引き上げ、窮境にある企業がより窮境に ~

東京商工リサーチ(TSR)・分析チームによる最新結果が出た際、思わず口をついた言葉だ。TSRが保有する財務データ(決算書)を基に経営が苦しいと思われる企業をゾンビ企業と定義して分析した。財務データが出揃った2024年度は、直近10年で最悪となった。

TOPへ