上場企業「新型コロナウイルス影響」調査 (3月27日正午現在)
2020年1月の「東日本大震災」関連倒産は3件(速報値:1月31日現在)で、前年同月(6件)を2カ月ぶりに下回り、半減した。
震災当月の2011年3月以来、震災関連倒産は107カ月連続で発生、累計件数は1,943件(1月31日現在)に達した。
なお、2019年度(4-3月)の累計倒産件数は34件(前年同期比19.0%減、前年同期42件)にとどまり、収束傾向をみせている。しかし、震災発生から9年弱を経てもなお、影響を引き摺った企業の破たんが依然として散見される。
1月の倒産事例
(株)ヤマニシ(TSR企業コード:141012153、法人番号:7370301001364、宮城県)は、創業以来、新造船事業、船舶修繕事業などを行い、2010年3月期には売上高198億2,122万円を計上していた。しかし、2011年3月に発生した東日本大震災で本社事務所および工場の1階部分が全壊し、ドック岸壁崩壊などと合わせて被害総額は約28億3,900万円におよんだ。以降は、国や金融機関からの支援を受けて2013年2月に新造船工場が完成、2019年3月期の売上高は111億7,644万円と、2011年3月期以来の100億円台を計上、最終利益も1,660万円と、2010年3月期以来の黒字を確保した。しかし、過去の赤字による債務超過からは脱却できず、再建の見通しが立たないため、1月31日、東京地裁に会社更生法の適用を申請した。
2020年1月の地区別は、関東2件、東北1件だった。
累計件数1,943件の都道府県別で、最も多かったのは東京の571件。次いで、宮城186件、北海道85件、岩手83件、福島81件、神奈川と茨城が各79件、千葉77件、福岡71件、栃木と群馬が各61件、静岡50件、山形48件、埼玉と大阪が各46件と続く。東北6県の倒産件数は455件(構成比23.4%)だった。
産業別では、最も多かったのが宿泊業や飲食業などを含むサービス業他の516件(構成比26.5%)。次いで、製造業452件(同23.2%)、卸売業354件(同18.2%)、建設業224件(同11.5%)、小売業185件(同9.5%)、運輸業80件、情報通信業64件と続く。
被害型で分類すると、「間接型」1,721件(構成比88.5%)に対して、「直接型」が222件(同11.4%)だった。
「新型コロナウイルス」の感染拡大で、上場企業の売上、利益でそれぞれ1兆円超が消えた。
国内外で感染者数が拡大するなか、上場企業が相次いで今期業績の下方修正を開示した。それによると、業績影響の数値を開示した135社の減少額合計が売上、利益ともに1兆円を超えた。
3月27日正午までに、新型コロナウイルス関連で情報開示した上場企業は765社に達した。また、自主的な開示はないが、東京商工リサーチの独自調査で工場や事業所、店舗の稼働休止など何らかの影響が判明した上場企業が18社あった。合計783社の上場企業が、新型コロナウイルスの対応を明らかにした。これは全上場企業3,778社の20.7%にとどまる。
- ※本調査は、2010年1月23日から、全上場企業の適時開示、HP上の「お知らせ」等を基に集計。
- ※「影響はない」、「影響は軽微」は除外し、「新型コロナウイルス」の記載はあっても、直接的な影響を受けないケースは除外した。
原油価格下落の影響を受け、石油元売り、大手商社などが多額の損失計上
情報開示した765社のうち、決算短信や月次売上報告、業績予想の修正などで新型コロナウイルスによるマイナス影響に言及したのは192社だった。このうち、135社が、売上高や利益の減少などで業績予想や、従来予想と実績値との差異による下方修正を公表した。業績の下方修正分のマイナスは合算すると、売上高が1兆1,944億円、最終利益が1兆1,177億円に達した。
このほか、292社が「影響の懸念がある」、「影響を精査中」、「影響を確定することは困難として織り込んでいない」とし、まだ業績下方修正した企業の2倍以上の企業が影響額を明らかにできていない。
石油元売り大手のJXTGホールディングス(株)(TSR企業コード:298259230)は、「新型コロナウイルス感染拡大症拡大に起因する原油・同価格の下落や国内外における石油・石化製品の需要・マージン等の状況」から、原油および石油製品等の在庫評価損(2,500億円)などが発生。今期の最終利益を、前回の1,550億円の黒字から4,550億円引き下げ、3,000億円の赤字予想とした。売上高も航空船舶輸送の減少などを理由に、前回予想から3,500億円引き下げた。
大手商社では、丸紅(株)(TSR企業コード:570197708)が、原油価格の急激な下落で資源関連の事業会社の減損損失などを見込み、当期損失1,900億円(前回予想は2,000億円の最終黒字)を計上する見込み。三井物産(株)(TSR企業コード:291022189)も、油田事業を中心に石油・ガス開発事業で「固定資産の減損損失(500~700億円程度)を認識する可能性がある」とした。
このほか、具体的な業績への影響額は発表していないが、国際石油開発帝石(株)(TSR企業コード:296619175)や富士石油(株)(TSR企業コード:295602473)などの石油関連企業も、原油価格下落に伴う在庫評価損などの悪影響の可能性を公表した。
工場や事業拠点閉鎖の動き 中国以外の地域で増加
工場の操業停止・休業延長などは45社、また店舗・事業拠点の休業は52社だった。感染源となった中国国内での工場操業や事業再開が増える一方、ここにきて欧米など、中国以外の工場の操業停止や事業拠点の休業などを公表する企業が増加している。化粧品生産などを手掛ける(株)日本色材工業研究所(TSR企業コード:291145132)はフランス子会社と化粧品製造ラインの操業を暫定的に2週間休止すると発表した。欧米で感染が急拡大し、現地での生産・販売活動に支障をきたす企業が出てきた。
従業員などに感染者が出たことを公表した企業は62社。この他、感染防止のために在宅勤務やテレワークや時差出勤の実施、従業員の働き方の変更を公表した企業が54社あった。実際に感染者が発生した際の企業としての対応策や、BCP(事業継続計画)に対する重要性が増している。
製造業、サービス業、小売業で7割
業種別では、製造業が最も多く317社(構成比40.4%)を占めた。サプライチェーンの乱れや人手確保の問題などから正常稼働には至っていないケースも多い。次いで、サービス業117社(同14.9%)、小売業110社(同14.0%)と続き、上位3業種で約7割を占めた。
また、運輸業は28社(3.5%)だったが、このうち新興航空会社の(株)スターフライヤー(TSR企業コード:662009819)は3月25日、需要減退による来期の見通しが不透明なことから運転資金への充当を目的に41億円の資金を金融機関から借り入れると発表した。
移動制限や自粛の影響で航空需要が急激に縮小するなか、観光や宿泊関連に限らず航空輸送関連企業への影響も甚大となっている。