• TSRデータインサイト

スルガ銀行の不正融資問題、「代物弁済」スキームで決着

 女性向けシェアハウス「かぼちゃの馬車」など、投資用不動産向け融資で不正融資が発覚したスルガ銀行とシェアハウスオーナーとの話し合いが決着した。
3月25日、スルガ銀行とシェアハウスオーナー247名から委任を受けた弁護団(以下、被害弁護団)は、不動産購入向けの融資と不動産の事実上の「相殺」で合意した。
スルガ銀行がオーナーに解決金を設定して融資の一部と相殺。スルガ銀行は融資残高を他社に譲渡する。オーナーは不動産を当該他社に代物弁済し、借入債務を解消する。対象オーナーは257名(連帯債務者含む)で、物件数は343棟。ローン残高は約440億円。

スルガ銀行の不正融資問題は、女性向けシェアハウス「かぼちゃの馬車」を展開していた(株)スマートデイズ(TSR企業コード:294730672)が2018年1月、オーナーへのサブリース賃料の支払いの完全停止を公表したことで表面化した。翌2月には被害弁護団が発足。同年9月7日、スルガ銀行の第三者委員会が書類改ざんや偽装に幹部や多くの行員が関与していた事実を公表し、岡野光喜・代表取締役会長(当時)ら一部役員の善管注意義務違反も認定していた。
この間、スルガ銀行と被害弁護団は断続的に交渉を重ね、2019年9月11日に被害弁護団はスルガ銀行に早期解決を求める調停を東京地裁に申し立てた。これを受けて11月5日、東京地裁が解決への勧告を行い、債権譲渡と代物弁済のスキームを前提に投資家など三者間で詰めの作業を進めていた。
スルガ銀行は、2020年3月期決算で本スキームの実行に伴う約89億円の貸倒引当金戻入益を計上する。通期の業績予想(連結)は、経常収益1,205億円(従来予想は1,175億円)、最終利益270億円(同210億円)へ修正した。
被害弁護団は、現在受任している以外のオーナーからの相談も受け付け、今回のスキームでの解決に向け取り組む方針。

スルガ銀行の不正融資問題、「代物弁済」スキームで決着

スルガ銀行前でのオーナーの抗議活動(2018年9月撮影)

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

M&A総研の関わりに注目集まる資金流出トラブル ~ アドバイザリー契約と直前の解約 ~

東京商工リサーチは、M&Aトラブルの当事者であるトミス建設、マイスHD、両者の株式譲渡契約前にアドバイザリー契約を解約したM&A総合研究所(TSRコード: 697709230、千代田区)を取材した。

2

  • TSRデータインサイト

中小企業、中高年の活用に活路 「早期・希望退職」は大企業の2.8%が実施

 「早期希望・退職」をこの3年間実施せず、この先1年以内の実施も検討していない企業は98.5%だった。人手不足が深刻化するなか、上場企業の「早期・希望退職」募集が増えているが、中小企業では社員活用の方法を探っているようだ。

3

  • TSRデータインサイト

【解説】秀和システムの法的整理、異変察知は「船井電機より前」

(株)秀和システム(TSRコード:292007680、東京都)への問い合せは、船井電機(株)(TSRコード:697425274、大阪府)の破産の前後から急増した。ところが、あるベテラン審査マンは「ERIが弾けた時からマークしていた」と耳打ちする。

4

  • TSRデータインサイト

1-6月の「訪問介護」倒産 2年連続で最多 ヘルパー不足と報酬改定で苦境が鮮明に

参議院選挙の争点の一つでもある介護業界の倒産が加速している。2025年上半期(1-6月)の「訪問介護」の倒産が45件(前年同期比12.5%増)に達し、2年連続で過去最多を更新した。

5

  • TSRデータインサイト

2023年度「赤字法人率」 過去最小の64.7% 最小は佐賀県が60.9%、四国はワースト5位に3県入る

国税庁が4月に公表した「国税庁統計法人税表」によると、2023年度の赤字法人(欠損法人)は193万650社だった。普通法人(298万2,191社)の赤字法人率は64.73%で、年度集計に変更された2007年度以降では、2022年度の64.84%を下回り、最小を更新した。

TOPへ