• TSRデータインサイト

中小企業基盤整備機構がセミナーを開催、伴走支援型融資で地域経済強化

 中小企業基盤整備機構(以下、中小機構)は2月25日、「地域を支える金融機関のあり方」セミナーを都内で開催した。経営者や金融機関の支援担当者ら約70人が参加した。
講師は、金融庁参与で中小機構中小企業応援士の森俊彦氏が務めた。また、茨城県信用組合の営業推進部の鈴木知里副部長と融資管理部の大津公美次席調査役も登壇し、地域金融支援の事例を説明した。
森氏は日本銀行入行後、金融機構局審議役、金融高度化センター長を歴任。
茨城県信組の鈴木氏と大津氏は、新規事業の立ち上げや未取引先・破綻懸念先への支援を担当している。

伴走支援型融資で地域経済を活性化

 中小企業は人口減少などで市場が縮小。地銀も105行のうち46行(2018年度、金融庁)の顧客向けサービス業務利益が赤字で、企業も銀行も経営環境は厳しさを増している。
森氏は、地域経済が疲弊する今、「事業性評価に基づき、企業に寄り添う伴走支援型融資が求められる」と強調した。伴走支援型融資で中小企業が成長し、営業キャッシュフローが持続的に改善。それを起点に金融機関の成長、地域経済の発展につながると説明した。
伴走支援型融資には、「企業がローカルベンチマーク(経営状態の把握)を用いて財務・非財務情報を見せる化し、金融機関も企業支援の内容を開示するなど、平時から信頼関係を構築しておくことが重要」(森氏)と述べた。


地域企業を支えるのが地域金融の使命

 茨城県信組の鈴木氏は、「抜本的な資金繰り支援と事業性評価でその企業の付加価値を評価するのがポイント」と説明。未取引先への融資に対し、「欠損があったが、技術力に光るものがあった。外部専門家と連携して特許取得や事業計画について策定し、融資を行った」と融資事例を示した。
大津氏は破綻懸念先の事業再生に携わった経験から「事業者へ何度もヒアリングを重ね、誠実さと収支管理の高さを評価。震災支援機構と協力し、覚悟を決めて融資した」と企業に寄り添い支援の輪が広がった事例を語った。

 森氏は、融資条件として企業の「誠実さ」、「やる気」、「きらっと光るもの」を見極めるよう促し、「この3条件がそろえば成長予備軍」と独自の視点を示した。
一方、企業にも主体性をもって「組織的、継続的に支援する顧客本位の金融機関を選択できる眼力の強化」を求めた。
厳しい環境でこそ、企業と金融機関が互いに「目利き力」を備え、地域経済の活性化につなげる取り組みが求められている。


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2020年3月4日号掲載予定「WeeklyTopics」を再編集)

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月の「人手不足」倒産が過去最多 「従業員退職」が前年の1.6倍増、初の年間300件超へ

2025年9月に「人手不足」が一因となった倒産は、調査を開始した2013年以降では月間最多の46件(前年同月比109.0%増)を記録した。また、2025年1-9月累計も、過去最多の285件(前年同期比31.3%増)に達し、人手不足はより深刻さを増していることがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

ケーキや和菓子は「高値の花」に、スイーツ店が苦境 倒産は過去20年で最多ペース、競合商品も台頭

街のスイーツ店が苦境に陥っている。材料コストの上昇、酷暑、人手不足が重なり、商品値上げによる高級化も購入機会の減少につながったようだ。2025年1-9月の菓子製造小売の倒産は、過去20年で最多の37件に達した。

3

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月「後継者難」倒産が過去2番目 332件 高齢化が加速、事業承継の支援が急務

代表の高齢化が進み、後継者が不在のため事業に行き詰まる企業が高止まりしている。2025年1-9月の「後継者難」倒産(負債1,000万円以上)は332件(前年同期比4.5%減)で、2年ぶりに前年同期を下回った。だが、2025年は過去最多だった前年同期の348件に次ぐ、過去2番目の高水準だった。

4

  • TSRデータインサイト

2025年 全国160万5,166社の“メインバンク“調査

全国160万5,166社の“メインバンク”は、三菱UFJ銀行(12万7,264社)が13年連続トップだった。2位は三井住友銀行(10万1,697社)、3位はみずほ銀行(8万840社)で、メガバンク3行が上位を占めた。

5

  • TSRデータインサイト

2025年度上半期の「円安」倒産30件 仕入コスト上昇が卸売業を直撃

2025年度上半期(4-9月)の「円安」関連倒産は、30件(前年同期比31.8%減)だった。上半期では、2022年度以降の円安では前年度の44件に次いで、2番目の高水準になった。

TOPへ