• TSRデータインサイト

破産した老舗百貨店「大沼」、会見で「消費増税で資金繰りが悪化」と釈明

 業歴320年を誇る山形県唯一の百貨店「大沼」を運営する(株)大沼(TSR企業コード: 210002948)は1月27日、関連会社とともに山形地裁に破産を申請し同日、破産開始決定を受けた。
 27日14時より大沼は「山形グランドホテル白鳥の間」で記者会見を開いた。席には、両社の代表取締役だった長澤光洋氏が立った。申請代理人等の姿はなく、長澤代表がひとりで対応する異例の展開となった。


 大沼は何回かの決済不調(デフォルト)を重ねていたが、長澤代表は「1月27日以降も決済が控えていた。そして、1月20日前後に資金繰りが無理とわかった」と述べ、謝罪した。だが、その準備をいつから始めていたかは語らなかった。
 長澤氏は、報道陣から破産申請に至った要因を尋ねられると、「2019年10月の消費増税や台風の影響により購買意欲が急激に落ちた」と回答した。その上で、「現金で買う顧客が減り、クレジット決済が多くなったため、日次の資金繰りに影響が出た」と、増税後の販売不振とクレジット決済の増加を理由にあげた。また、「(過去の決済不調で)大手を中心にこれまで月1回の支払いが、月2~3回へと条件を変更されたことも大きかった」と、信用低下の影響を付け加えた。
 破産申請タイミングを問われると、「(1月)27日から月末にかけ約4億円の支払債務があるが、とても履行できない」と資金枯渇を理由に挙げた。
 マイルストーンターンアラウンドマネジメント(株)(TSR企業コード:296291099、東京都、以下MTM)との関係について長澤氏は、「MTMの資金還流問題で資金繰りがおかしくなった」と述べ、MTMに責任の一端があるとの認識を示した。
 さらに、「実はMTMに招聘されて(社長に)就任した時、すでに社長を辞めようと思った。大沼の株式の流れが金融商品取引法関連に引っかかると思った。2019年6月以降は無理だと思っていたが、支援者から止められていた」と振り返った。事実上、経営に責任を持てない「代表取締役」だったと認めた格好だ。


 1月27日の破産開始決定で、大沼が発行した「全国百貨店共通商品券」と大沼友の会の「買い物券」は利用できなくなった。
 長澤氏は、「商品券の発行残高は約5億円。供託金で50%は保全される」と述べたが、顧客に大きな影響が出るのは避けられない。
 大沼の取引先の1社は、「大昔の繁栄を謳歌した頃のプライドを捨てきれなかった」との見解を示す。名門ホテルでの会見にプライドの片鱗をみたということだろう。
 「大沼」は県民に親しまれていた。だが、実態は時代に取り残され、過去の栄光にすがるだけの古い百貨店の姿がそこにあった。

会見する長澤光洋・代表取締役

‌会見する長澤光洋・代表取締役


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2020年1月29日号掲載予定「WeeklyTopcs」を再編集)

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

【破綻の構図】マツオインターナショナル~膨らんだ債務と抜本再生への移行~

婦人服ブランド「ヴィヴィアン タム」「慈雨(じう)」「t.b2」などを展開し、ピーク時には国内外で約400店を構えていたマツオインターナショナル(株)(TSRコード:292635265、以下マツオ)が12月11日、大阪地裁に会社更生法の適用を申請した。

2

  • TSRデータインサイト

交響楽団の収益悪化、来場者戻らずコスト上昇 ~ 綱渡りの自助経営、草の根のムーブメントへの期待 ~

交響楽団が存立の危機に立たされている。多くの交響楽団で収入が落ち込んでおり、赤字が目立つ。会場費や団員などの人件費、楽器の輸送コストなどが上昇のうえ、寄附金や補助金による収入は頭打ちで綱渡りの運営だ。東京商工リサーチは、3期連続で業績が比較できる20団体を調査した。

3

  • TSRデータインサイト

地場スーパー倒産 前年同期の1.5倍に大幅増 地域密着型も値上げやコスト上昇に勝てず

2025年1-11月の「地場スーパー」の倒産が22件(前年同期比46.6%増)と、前年同期の約1.5倍で、すでに前年の年間件数(18件)を超えた。

4

  • TSRデータインサイト

長渕剛さん側、イベント会社の破産申立に続き代表を刑事告訴 ~長渕さん「徹底追求」、イベント会社代表「横領でない」と反論~

歌手の長渕剛さんが代表を務める個人事務所の(株)オフィスレン(渋谷区)が、イベント運営を委託していたダイヤモンドグループ(株)(東京都中央区)の代表を業務上横領罪で刑事告訴したことがわかった。東京商工リサーチの取材で長渕さん側が明らかにした。

5

  • TSRデータインサイト

「ペット・ペット用品小売業」倒産が過去2番目の14件 実質賃金の低迷と物価高がペットの世界にも影響

2025年11月の「ペット・ペット用品小売」の倒産は、1件(前年同月ゼロ)にとどまったが、1-11月累計は14件(前年同期比27.2%増)に達した。

TOPへ