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2019年全上場企業 「不適切な会計・経理の開示企業」調査

 2019年(1-12月)に「不適切な会計・経理(以下、不適切会計)」を開示した上場企業は70社(前年比29.6%増)、案件は73件(同35.2%増)だった。集計を開始した2008年以降、最多の2016年の社数57社、案件数58件をそれぞれ上回り、過去最多を更新した。
 不適切会計の開示は、2008年は25社だった。その後、増勢をたどり、2016年に過去最多の57社を記録した。2017年は53社、2018年は54社と落ち着いていたが、2019年は再び増加に転じ70社と過去最多記録を塗り替えた。
 2019年に不適切会計を開示した70社では、東証1部が49社(構成比70.0%)と7割を占めた。
 内容別では、最多が経理や会計処理ミスなどの「誤り」で31件(同42.5%)。次いで、子会社で不適切会計処理などの「粉飾」が28件(同38.3%)だった。産業別では、最多が「製造業」の30社(同42.9%)。次いで、サービス業の11社(同15.7%)と続く。
 上場大手企業の相次ぐ不適切会計の発覚で、コンプライアンス意識が高まっている。金融庁や東証は、ガバナンスのさらなる向上に向けた指針整備を進め、企業側でも確実に履行できる体制作りが求められている。

  • 本調査は、自社開示、金融庁・東京証券取引所などの公表資料を基に、上場企業、有価証券報告書提出企業を対象に「不適切な会計・経理」で過年度決算に影響が出た企業、今後影響が出る可能性を開示した企業を集計した。
  • 同一企業で調査期間内に2回内容を異にした開示の場合、社数は1社、件数は2件としてカウントした。
  • 業種分類は、証券コード協議会の業種分類に基づく。上場の市場は、東証1部、同2部、マザーズ、JASDAQ、名古屋1部、同2部、セントレックス、アンビシャス、福岡、Qボードを対象にした。

開示企業数 2019年は70社(73件)

 2019年(1-12月)に不適切会計を開示した上場企業は70社で、(株)MTGと(株)すてきナイスグループ、ユー・エム・シー・エレクトロニクス(株)の3社は、それぞれ2件ずつ開示した。
 上場企業は国内市場の成熟から、メーカーは売上拡大を海外市場に求める動きを強めている。だが、拡大する営業網にグループ会社のガバナンスが徹底せず、子会社や関係会社に起因する不適切会計の開示に追い込まれる企業が増えた。
 (株)MTGは2019年5月、中国子会社の不適切会計を開示したが、同年11月にも韓国子会社での不適切会計の可能性について開示した。
 企業会計は、当然だが厳格な運用を求められる。だが、経営側に時価会計や連結会計など厳格な会計知識が欠如すると、現場で会計処理を誤る事例も生じる。この背景には会計処理の高度化(能力不足)だけでなく、現場の人手不足も要因の一つにあげられる。こうした状況を改善できずに不適切会計を開示した企業もある。藤倉コンポジット(株)は中国子会社の不適切会計処理を開示したが、要因には中国実務に精通する人材不足があったことを理由の一つにあげている。

「不適切会計」開示企業推移

内容別 「誤り」が最多の31件

 内容別では、最多が「誤り」で31件(構成比42.5%)だった。(株)明豊エンタープライズは、外部からの指摘で中国プロジェクト貸付債権に関する貸倒引当金の計上を過年度に遡り実施を迫られた。
 次いで、「架空売上の計上」や「水増し発注」などの「粉飾」で28件(同38.3%)。(株)テーオーホールディングスの子会社は、取引先への請求額を水増し請求し、売掛金を過大に計上していたことを8月7日に公表している。
 また、子会社・関係会社の役員、従業員の着服横領は14件(同19.2%)だった。「会社資金の私的流用」、「商品の不正転売」などで、個人の不祥事にも監査法人は厳格な監査を貫いている。

「不適切会計」内容別

発生当事者別 「会社」が30社でトップ

 発生当事者別では、最多は「会社」の30社(構成比42.9%)だった。会計処理手続の誤りや事業部門での売上の前倒し計上などのケースがあった。
 「子会社・関係会社」は25社(同35.7%)で、子会社による売上原価の過少計上や架空取引など、見せかけの売上増や利益捻出のための不正経理が目立つ。「会社」と「子会社・関係会社」を合わせると55社で、社数全体の約8割(同78.6%)と大半を占めた。

「不適切会計」企業 発生当事者別

市場別 東証1部が49社でトップ

 市場別では、「東証1部」が49社(構成比70.0%)で最も多かった。次いで、「ジャスダック」が9社(同12.9%)、「東証2部」が6社(同8.6%)と続く。
 2013年までは新興市場が目立ったが、2015年から国内外に子会社や関連会社を多く展開する東証1部の増加が目立つ。

「不適切会計」企業 市場別

産業別 最多は製造業の30社

 産業別では、「製造業」の30社(構成比42.9%)が最も多かった。製造業は、国内外の子会社、関連会社による製造や販売管理の体制不備に起因するものが多い。
 サービス業では、元役員や元社員が不明瞭な外部取引を通じてキックバックを行い着服横領したケースなどがあった。


 2019年の不適切会計の開示は70社、案件数73件で、いずれも過去最多を記録した。
 2015年5月に発覚した東芝の不適切会計を契機に、監査の信頼性確保が強く求められるようになった。金融庁は2019年9月、監査法人に対し、財務諸表に不適切な事項がある時に記載される「限定付き適正意見」を株主にもわかりやすく伝わるよう意見の理由の明記を求め、2020年3月期から適用する。なお、金融庁は東芝などの会計不祥事を受け、2016年から一定期間ごとに監査法人の交代を義務づけるローテーション制度を検討していた。だが、負担が増加する企業側には反対が根強く、金融庁は監査法人のローテーション制度の導入を見送る方針を固めたと報道されている。
 年が明けた2020年1月にも、不二サッシ(株)(東証2部)、(株)ジェイホールディングス(ジャスダック)、(株)東芝(東証2部)が、相次いで連結子会社での不適切な取引や会計処理があったことを公表した。特に、東芝は東証1部への復帰を控えていたが、今回の不適切会計(循環取引)が発覚したことで、影響がどれほど出るのか注目される。
 経済のグローバル化で、海外子会社との取引に伴う不適切会計も増加した。また、現場や状況を無視した売上目標の達成へのプレッシャーから、不正会計に走る担当者は後を絶たない。
 コーポレートガバナンスやコンプライアンスの意識改善が掛け声倒れに終わらないためには、上場、未上場を問わず不適切会計を防ぐ風通しの良い組織づくりが求められている。

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