• TSRデータインサイト

2019年「粉飾決算」倒産調査

 2019年(1-12月)の「コンプライアンス違反」倒産のうち、「粉飾決算」が確認された倒産(以下、粉飾倒産)は18件(前年9件)と、前年から2倍に急増した。
 粉飾決算に手を染めたきっかけは様々だが、「海外での投資失敗の隠蔽」や「業績低迷(赤字)で取引先からの支払条件が厳しくなった」などの事業上の要因だけでなく、「代表者の相続税を支払うため」など、事業承継に絡む時代を反映した要因も少なくない。
 また、30年にわたり粉飾決算を続けていた(株)開成コーポレーション(埼玉県・破産)のように、粉飾決算の期間が30年、15年、10年など、長期にわたるケースも目立った。
 粉飾決算は、資金繰りが維持されている間は発覚しにくい。だが、人件費の負担などから資金繰りがひっ迫し、金融機関に借入返済のリスケ(返済猶予)を要請する際、粉飾決算が発覚するケースが増えている。また、倒産ではないが粉飾を続けてきた企業のなかには、金融機関に粉飾決算を明らかにしたうえで、私的整理の形で再建を目指す企業も散見される。
 金融機関は収益環境が厳しく、「粉飾決算」への対応を強めている。

  • 本調査は2019年(1-12月)の「コンプライアンス違反」倒産のうち、裁判所への申請書類や会社・代理人弁護士への取材で「粉飾決算」が判明したものをまとめた。
  • 2019年に金融機関に支援を要請した企業は、粉飾決算を40年続けてきたことを告白し、支援を受けて再建を目指している(倒産には未集計)。また、2020年1月に民事再生法の適用を申請した企業は、35年間の粉飾が判明した。

「粉飾決算」に起因する倒産 前年比2倍に急増

 2019年(1-12月)の「粉飾決算」倒産は18件だった。これは前年(9件)に比べ2.0倍と急増し、2017年(25件)以来、2年ぶりに前年を上回った。
 形態別では、最多が破産の11件(構成比61.1%)で全体の6割を占めた。このほか、民事再生法が5件(同27.7%)、特別清算と銀行取引停止処分が各1件だった。
 「粉飾倒産」では3社に2社が清算型を選択している。最近はコンプライアンス意識が高まり、粉飾決算に伴う信用失墜は大きいものがある。このため、再建型の民事再生法ではスポンサーによる信用補完で再建を目指す企業が増えている。
 都道府県別では、東京都が6件(構成比33.3%)で最も多かった。次いで、埼玉県が4件、福岡県と大阪府、千葉県が各2件、鳥取県、富山県が各1件だった。
 負債別では、「10億円以上」が9件で最も多い。このほか、「1億円以上5億円未満」が6件、「5億円以上10億円未満」が3件だった。

『粉飾倒産』推移

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2025年3月期決算(6月20日時点) 役員報酬1億円以上の開示は117社・344人

2025年3月期決算の上場企業の株主総会開催が本番を迎えた。6月20日までに2025年3月期の有価証券報告書を510社が提出し、このうち、役員報酬1億円以上の開示は117社で、約5社に1社だった。

2

  • TSRデータインサイト

「想定為替レート」 平均1ドル=141.6円 前期比1.9円円高を想定、4期ぶり円安にブレーキ

主な株式上場メーカー98社の2025年度決算(2026年3月期)の期首ドル想定為替レートは、1ドル=140円が48社(構成比48.9%)と約5割にのぼった。平均値は1ドル=141.6円で、前期に比べ1.9円の円高となった。

3

  • TSRデータインサイト

代金トラブル相次ぐ、中古車販売店の倒産が急増

マイカーを売却したのに入金前に売却先の業者が破たん――。こうしたトラブルが後を絶たない。背景には、中古車価格の上昇や“玉不足”で経営不振に陥った中古車販売店の増加がある。倒産も2025年1-5月までに48件に達し、上半期では過去10年間で最多ペースをたどっている。

4

  • TSRデータインサイト

日産自動車の役員報酬1億円以上開示は5人 内田前社長の報酬額は3億9,000万円

 経営再建中の日産自動車が、2025年3月期決算の有価証券報告書を提出した。報酬額1億円以上の個別開示の人数は5人で、前年と同数だった。

5

  • TSRデータインサイト

2024年上場企業の「個人情報漏えい・紛失」事故 過去最多の189件、漏えい情報は1,586万人分

2024年に上場企業とその子会社が公表した個人情報の漏えい・紛失事故は、189件(前年比8.0%増)で、漏えいした個人情報は1,586万5,611人分(同61.2%減)だった。 事故件数は調査を開始した2012年以降、2021年から4年連続で最多を更新した。

TOPへ