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ジャパンディスプレイ 10月は営業黒字、9月中間期は1,000億円超の債務超過

 経営再建中の(株)ジャパンディスプレイ(TSR企業コード:294505385、以下JDI)の2019年10月(単月)の営業利益、最終利益はともに黒字だった。固定資産の減損や人員削減が奏功した。営業黒字は2018年10-12月期以来、3四半期ぶり。
11月13日、都内で会見した菊岡稔・代表取締役社長は「製品ポートフォリオの改善や研究開発・設備投資の厳選などで黒字定着を目指す」と述べ、構造改革の成果を強調した。

1,000億円超の債務超過に

 同日、JDIは2020年3月期中間決算(連結)を発表した。売上高は、主要顧客の米アップル向け販売が伸長し、2,377億6,200万円(前年同期比11.0%増)だった。
損益は、営業外費用で出資先の(株)JOLED(TSR企業コード:300600798)に関わる41億6,700万円の持分法による投資損失を計上。また、特別損失で白山工場を中心とした固定資産の減損や人員削減など、事業構造改善費用637億4,700万円を計上し、最終利益は▲1,086億7,200万円となった。この結果、純資産は▲1,061億1,200万円に沈んだ。

新たな支援候補

 債務超過の解消に向け、従来からの支援の枠組みであるSUWAコンソーシアムとの出資交渉を進めるとともに、「中国系ではない長期投資を前提とした独立系民間ファンド」(菊岡社長)と接触していることを明らかにした。
民間ファンドについては、一部で「いちごアセット」と報道されているが、14日、JDIの担当者は東京商工リサーチ(TSR)の取材に対し、「当社から発表したものではない」と語るにとどめた。いちごアセットはTSRの取材に対し、「コメントは差し控える」とした上で「2006年の創業以来、(投資先の)中長期的な持続的成長の支援を基本方針としており、今後も方針に変わりはない」とコメントした。
JDIは、他社からの資本注入の枠組み合意を10月末までに完了させることを前提に、モバイル事業の分社化や(株)INCJ(TSR企業コード:033865507)を保証人とした2019年12月30日が期日の1,070億円のコミットメントライン契約を締結していた。しかし、支援の枠組みが交渉過程で大きく変容し、新たな出資候補者との交渉も始めたことから、「分社化に必要な交渉をストップし、INCJからの保証1,070億円の延長に向けた交渉を開始した」(菊岡社長)ことを明らかにした。

固定費が大幅に減少

 JDIは、今期に入り工場資産の減損として528億円など、合計637億円の構造改革を実施してきた。構造改革は第2四半期までに完了し、「構造改革前に月160億円程度だった固定費は約120億円にまで減少した」(菊岡社長)という。
ただ、事実上操業がストップしている白山工場を閉鎖した場合、違約金や補助金の返還など、最大120億円の追加損失リスクがある。
また、持分法の投資損失を計上したJOLEDについて、JDIの担当者は「(JDIは)JOLEDの発行済み株式27%を保有している。営業活動などで協業関係にあるが、(互いの)債務の保証はしていない」と述べた。


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2019年11月15日号掲載予定「WeeklyTopcs」を再編集)

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