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2019年(1-10月)「粉飾決算」倒産調査

 2019年(1-10月)の「コプライアンス違反」倒産のうち、「粉飾決算」が一因となった倒産(以下、「粉飾倒産」)は16件(前年同期8件)と、前年同期の2.0倍に増加した。
また、倒産に至らないが、支払遅延や借入金延滞で粉飾決算の発覚も急増している。
粉飾決算は、企業が金融機関からの融資を受けたり、取引先の信用維持のため決算書を良くみせるために行う。粉飾決算に手を染めるきっかけは様々だが、「海外での投資失敗の隠蔽」や「赤字のため取引先から支払条件が厳しくなった」などの事業上の要因だけでなく、最近は「税金滞納の解消のため」、「代表者の相続税を支払うため」など、事業承継や税金滞納などに起因した時代を反映したケースも目立つ。
「粉飾決算」に起因する倒産は 1-10月累計で16件を数え、すでに2018年(1-12月)の9件を上回り、2017年以来、2年ぶりに20件台に乗せる可能性が出てきた。特に、今年の特徴は、発覚した粉飾決算の期間が40年間、15年間、10年間など、長期にわたることだ。金融機関にリスケ要請する際のヒアリングや、長期の粉飾でも業績悪化を糊塗できなくなった企業が告白するケースも増えている。金融機関や取引企業の「粉飾倒産」への疑惑は、ますます強まっている。

  • 本調査は2019年1-10月度の企業倒産から、「コンプライアンス違反」倒産のうち、「粉飾決算」を一因とした倒産をまとめた。

「粉飾決算」に起因する倒産 前年同期比2.0倍に急増

 2019年1-10月の「粉飾決算」倒産は16件で、前年同期(8件)の2.0倍に急増している。すでに、前年(1-12月)の9件を上回り、2017年(1-12月)以来、2年ぶりに20件台に達する勢いだ。
また、倒産には至らないが、粉飾決算が発覚するケースも相次いでいる。
形態別では、破産が10件(構成比62.5%)で最も多かった。このほか、民事再生法が4件(同25.0%)、特別清算と銀行取引停止処分が各1件(同6.2%)だった。
「粉飾倒産」の半数以上を、清算型が占めた。ビジネスの世界でも、コンプライアンス重視の風潮が年々強まっているが、粉飾決算を一因とする民事再生法は信用失墜が大きいだけに自力再建は難しく、スポンサーによる再建を選択する企業が多い。
都道府県別では、東京都が5件(同31.2%)で最多。次いで、埼玉県が3件、福岡県と大阪府、千葉県が各2件、鳥取県、富山県が各1件だった。
負債別では、「10億円以上」が7件で最も多い。「1億円以上5億円未満」が6件、「5億円以上10億円未満」が3件だった。

コンプライアンス違反(粉飾)倒産 暦年推移

産業別 卸売業が最多の7件

 産業別で、最多は卸売業の7件(構成比43.7%)。前年同期1件から7倍増と急増している。
その他、建設業、製造業、サービス業他が各2件(同12.5%)、農・林・漁・鉱業、小売業、運輸業が各1件(同6.2%)だった。
最多の卸売業の倒産事例では、海外進出の投資失敗で抱えた赤字を隠蔽するため15年間にもわたり粉飾決算を続けた(株)サンヒット(埼玉県、負債82億4,300万円)は、20行を超える取引金融機関ごとに決算書を作成していた。だが、他行用に作成した決算書を別の金融機関に提出したことで粉飾決算が発覚したといわれる。

資本金別 1千万円以上5千万円未満が5割

 資本金別では、「1千万円以上5千万円未満」が10件(構成比62.5%)で最多。次いで、「5千万円以上1億円未満」が4件、「1億円以上」と「1百万円以上5百万円未満」が各1件。
資本金1億円以上の倒産事例では、(株)ひびき(埼玉県、負債77億900万円)は、税金滞納を解消するため、架空売上で粉飾し納税資金を金融機関から調達。その後も震災などで売上減に陥り、これを隠蔽するため架空売上を計上していた。債権者説明会では多重リースも指摘された。

 粉飾決算に起因する倒産が急増しているが、現状は氷山の一角に過ぎないとの見方もある。
2003年5月に個人情報保護法が成立し、顧客情報保護の観点から金融機関同士の横のつながりが希薄になっており、これを悪用したとみられる粉飾決算も少なくない。
2019年に入り、40年間、15年間、10年間と、長期間にわたり粉飾決算を行ってきてきた企業が次々に発覚している。粉飾決算に手を染めた企業では、倒産には至らないがバンクミーティングで告白したり、私的整理や再生支援協議会などの支援機関に頼る企業もある。
粉飾決算を隠し続けることは出来ない。金融機関に事業性評価が浸透し、度重なるヒアリングで粉飾決算が露呈するケースもあり、今後も「粉飾倒産」の発覚が増える可能性は高い。

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