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2019年(1-10月)「美容室」の倒産状況

 美容室の倒産が急増している。2000年以降で最多だった2018年を上回ることが確実になった。
美容室はコンビニエンスストアの4.5倍、約25万店が全国でしのぎを削っている。このため、激しい競争に晒され2019年1-10月累計の「美容室」倒産は92件(前年同期比29.5%増、前年同期71件)に達している。すでに、1-10月累計は2000年以降で最多を記録し、年間でも過去最多の2018年(1-12月)の95件を更新する勢いで推移している。
また、倒産ではないが、事業を停止した休廃業・解散も急増中だ。2016年に初めて年間200件を超え、2017年にいったん200件を割り込んだが、2018年は再び過去最多の242件を記録。倒産件数の2.5倍と急増している。
「美容室」は、参入障壁が比較的低く、典型的な労働集約型の業種である。人口減少が続き、顧客獲得が厳しさを増すなか、追い打ちをかけるように大手や低価格チェーン、1,000円カット店が台頭し、生き残りは厳しさを増している。

  • 本調査は、「日本標準産業分類 小分類」における「美容業」の倒産、休廃業・解散を集計、分析した。

「美容室」の1-10月倒産は92件

 2019年1-10月累計の「美容室」倒産は92件(前年同期比29.5%増)に達した。同期間での比較では、2000年以降の20年間で最多だった2011年同期(81件)を上回り、最多記録を更新した。
年間でも最多の2018年(1-12月)の95件に迫り、初めて100件を上回る勢いで推移している。

2018年「美容室」の休廃業・解散は242件

 一方、東京商工リサーチの企業情報データベース(379万社)で美容室の「休廃業・解散」を抽出したところ、2018年(1-12月)の休廃業・解散は242件を数え、過去20年間で最多だった。
休廃業・解散は2013年から大幅に増え、2016年に初めて200件を突破した。倒産と休廃業・解散の合計は、市場から撤退した「美容室」を示すが、急カーブで上昇が続いている。

美容室の倒産、休廃業・解散

負債額別、1億円未満が9割

 負債額別は、1億円未満が87件(前年同期比27.9%増、構成比94.5%)と小・零細規模が9割以上を占めた。1億円以上5億円未満は5件(同150.0%増、同5.4%)、 5億円以上はゼロ(前年同期1件)だった。

原因別、販売不振(業績不振)が8割

 2019年1-10月の原因別の最多は、「販売不振」が75件(前年同期比19.0%増)で全体の81.5%と大半を占めた。次いで、赤字累積の「既往のシワ寄せ」が7件(同75.0%増)、運転資金の欠乏など「過小資本」が3件(同200.0%増)の順だった。

形態別、破産が約9割

 形態別では、破産が81件(前年同期比22.7%増)と全体の88.0%を占めた。倒産した企業の大半が消滅型の破産を選択し、再建型の民事再生法は11件(構成比11.9%)にとどまった。

資本金別、1千万円未満(個人企業含む)が9割

 資本金別は、個人企業を含めた1千万円未満が88件(前年同期比31.3%増、構成比95.6%)で、美容室の倒産のほとんどは小・零細規模だった。1千万円以上5千万円未満は4件(同33.3%増、同4.3%)、5億円以上はゼロ(前年同期1件)だった。

 厚生労働省の2018年度衛生行政報告例によると、美容室(美容所)は全国で25万1,140施設、従業員数は53万3,814人を数える。国内コンビニエンスストア店舗が、2019年9月末で5万5,711店(日本フランチャイズチェーン協会調べ)で、美容室の店舗数はコンビニの約4.5倍に達する。
労働集約型の産業で、小・零細店舗には人手不足と人件費が重くのし掛かっている。さらに、1,000円カットなどの安価なライバル店も台頭し、一段と厳しい価格競争に巻き込まれている。
美容室が生き残るためには、予約システムのIT化など初期投資とコスト削減も必要だが、顧客ニーズに見合う柔軟なサービス提供がより重要になっている。
そのためには技術力やカリスマ性だけでなく、口コミやSNSなどを活用した顧客にアピールする力もまた求められている。

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