• TSRデータインサイト

米アンダーアーマー社に捜査報道、総代理店ドーム「報道内容以外は聞いていない」

 スポーツウェアを展開する米国Under Armour, Inc.(DUNS: 111578985、本社:メリーランド州、米アンダーアーマー社)が、業績を実際よりよく見せかけていた疑惑で捜査を受けていることが明らかになった。
 米ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)は、米国連邦当局が会計処理を調査していることを関係者が明らかにしたと報じた。WSJによると、米アンダーアーマー社は「会計慣行と情報開示は適切であると強く信じている」とコメントしている。
 米アンダーアーマー社は、2016年度まで年20%増の増収を維持していたが、2018年度の売上高は51億9,318万ドルと前期比4%増にとどまっていた。


 日本国内の総代理店である(株)ドーム(TSR企業コード:293700320、江東区)も苦戦が続いている。
 ドームは、「読売ジャイアンツ」と2014年から5年間のパートナーシップ契約を結ぶなど、積極的な営業施策で知名度が上昇。売上高は2017年12月期の売上高は459億円をあげていた。しかし、2018年12月期の売上高は、426億円(前年同期比約7%減)に沈んだ。ドームCEOの安田秀一氏は2019年9月、東京商工リサーチ(TSR)の単独取材に応じ、「ブランドの鮮度が落ちている」との認識を示していた。また、安田CEOは、2019年12月期は「減収減益」の見通しを示し、旧型の在庫積み上がりなどによる業績悪化を認めていた。
 ドームは9月13日、全額自社で投資した旗艦店「UNDER ARMOUR BRAND HOUSE 新宿」をオープンし、国内需要の巻き返しを図っている。
 だが、9月25日にドームは、手掛けるサプリメント「アイアンSP」が、世界反ドーピング機関が禁止物質に指定する成分が検出されたと公表。ドームは「ドーピング検査で陽性反応が出る可能性は極めて低い」としたが、製品の回収や返金対応に追われた経緯がある。
 また、読売ジャイアンツとのパートナーシップ契約は2019年12月に期限を迎えるが、ドームの担当者は「(今後について)どうなるか決まっているが、(内容は)お伝えできない」と語っていた。
 11月5日、ドームの担当者はTSRの取材に、「報道されている内容以外、米アンダーアーマー社から聞いていない」とコメント。米アンダーアーマー社の2018年年次報告書によると、同社(グループ含む)のドーム株の保有比率は29.5%。ただ、今回のTSRの取材に対してドームは、「株主構成は公開していない」としている。このため、直近の資本背景は判明せず、米国の問題が経営にどう影響するか現時点では不透明だ。
 業績低迷や米国の捜査報道など、立て続けにネガティブ情報に巻き込まれるドーム。取り巻く環境が厳しさを増すなか、安田CEOのかじ取りが注目される

9月にオープンした「UNDER ARMOUR BRAND HOUSE 新宿」

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2019年11月6日号掲載予定「WeeklyTopcs」を再編集)

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月の「人手不足」倒産が過去最多 「従業員退職」が前年の1.6倍増、初の年間300件超へ

2025年9月に「人手不足」が一因となった倒産は、調査を開始した2013年以降では月間最多の46件(前年同月比109.0%増)を記録した。また、2025年1-9月累計も、過去最多の285件(前年同期比31.3%増)に達し、人手不足はより深刻さを増していることがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

ケーキや和菓子は「高値の花」に、スイーツ店が苦境 倒産は過去20年で最多ペース、競合商品も台頭

街のスイーツ店が苦境に陥っている。材料コストの上昇、酷暑、人手不足が重なり、商品値上げによる高級化も購入機会の減少につながったようだ。2025年1-9月の菓子製造小売の倒産は、過去20年で最多の37件に達した。

3

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月「後継者難」倒産が過去2番目 332件 高齢化が加速、事業承継の支援が急務

代表の高齢化が進み、後継者が不在のため事業に行き詰まる企業が高止まりしている。2025年1-9月の「後継者難」倒産(負債1,000万円以上)は332件(前年同期比4.5%減)で、2年ぶりに前年同期を下回った。だが、2025年は過去最多だった前年同期の348件に次ぐ、過去2番目の高水準だった。

4

  • TSRデータインサイト

2025年 全国160万5,166社の“メインバンク“調査

全国160万5,166社の“メインバンク”は、三菱UFJ銀行(12万7,264社)が13年連続トップだった。2位は三井住友銀行(10万1,697社)、3位はみずほ銀行(8万840社)で、メガバンク3行が上位を占めた。

5

  • TSRデータインサイト

2025年度上半期の「円安」倒産30件 仕入コスト上昇が卸売業を直撃

2025年度上半期(4-9月)の「円安」関連倒産は、30件(前年同期比31.8%減)だった。上半期では、2022年度以降の円安では前年度の44件に次いで、2番目の高水準になった。

TOPへ