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リーマン・ショック時に次ぐ、「2019年第3四半期の倒産増加率」の意味

 2019年第3四半期(7-9月)の倒産件数は2,182件で、前年同期比8.1%増(グラフ参照)だった。2009年以降の四半期では、リーマン・ショック直後の2009年第1四半期の同13.4%増に次ぐ増加率だ。これまで低水準が続いた企業倒産だが、目に見える潮目の変化を気にする声が与信担当者から聞かれるようになった。


 今回の倒産反転について、大手商社の与信担当者は、「底這いが永遠に続くとは思わなかったが、いよいよ来たかとの印象だ。ただ、なぜ今なのか」と戸惑いを隠さない。
 その疑問への回答の一つが、10月24日に日本銀行が公表した「金融システムレポート」にある。すでに2018年秋から東京商工リサーチは指摘していたが、レポートで2018年度の金融機関の決算を「信用コスト率は、引き続き低水準ながら地域金融機関を中心に、上昇に転じた」と分析。背景として、「(リスケなどの)金融支援を受ける企業は、一定の期間(最長10年)で達成すべき経営改善計画の策定を求められるが、策定から当該年数が経過したもとで、計画達成できないことが明らかになった結果、債務者区分の引き下げなどに繋がる事例が増加しているとの見方が聞かれている」と記載した。
 リスケを受けたすべての企業が最長「10年」で計画の進捗をモニタリングされているわけではない。2008年11月に「貸出条件緩和債権」の例外用件を「計画期間3年」から「5-10年」に変更し、10年が経過した。また、終了後も「法の精神が生き続ける」金融円滑化法も施行から間もなく10年を経過する。
 倒産総数に占める中小企業(中小企業基本法に基づく)の割合は、2019年度上半期(4-9月)は100%だった。2009年度以降で100%となったのは、2018年度上半期と2半期しかない。金融支援で急場を凌いでいたが、経営が改善せず息切れする企業の淘汰が始まったとみるのが妥当かも知れない。


 これまで倒産の低水準を説明する常套句は、「金融円滑化法の期限到来後も金融機関の支援体制は維持されている」だった。
 だが、金融機関は厳しい収益環境の中で、体力に応じて独自に債務者区分を見直し、貸倒引当金を積み増している。支援の中身は、「倒産抑制」から「成長支援」へと大きく変わっている。

倒産件数 四半期別 前年同期比推移

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2019年11月5日号掲載予定「WeeklyTopcs」を再編集)

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