• TSRデータインサイト

Xアイコン
facebookアイコン

2019年台風19号 「堤防決壊地域」の企業調査

 10月12日、台風19号が日本に上陸した。11日午前には気象庁の担当者が会見し、「静岡や関東で1,200人以上が犠牲となった1958(昭和33)年の「狩野川台風」に匹敵する記録的な大雨となり、大雨の特別警報を発表する可能性もある」と、厳重な警戒を呼びかけた。これを受けて12日に鉄道会社は計画運休を実施、スーパーなど小売店も店舗を臨時休業するなどの対策をとった。
 東京商工リサーチ(TSR)は、保有する企業データベース(約379万社)から国土交通省が公表した「堤防決壊箇所一覧」(10月30日6時現在、20水系、71河川、140箇所)を基に、該当する地域(7県43市郡、以下、被災地域)に実質本社を置く企業を調査した。
 被災地域に本社を置く企業は2,772社で、産業別は「サービス業他」が862社(構成比31.0%)で最多だった。また、資本金別では1千万円未満(個人企業他を含む)が2,113社(同76.2%)、従業員数別では10人未満(不明分を除く)が1,227社(同44.2%)と、小・零細規模の企業が多いことがわかった。
 上場企業は、東証1部上場のラーメン店チェーンの(株)幸楽苑ホールディングス(福島県郡山市田村町上行合)の1社だけだった。同社は10月15日、「水害により福島県郡山工場への電源供給が遮断され、同工場の操業を10月13 日から一時停止し、出荷業務へも影響が出ている」と公表した。
 9月の台風15号から10月の台風19号まで相次ぐ台風上陸や豪雨で、多くの地域で浸水被害などが発生した。台風19号の被災地域では、代表者の年齢が判明する1,338社のうち、862社(構成比64.4%)の代表者が60歳以上だった。今後、被災により廃業などの事業継続を断念する企業も出てくることも危惧され、被災地域への支援が急務になっている。

  • ※東京商工リサーチが保有する企業データベースで国土交通省が公表した「堤防決壊箇所一覧」を基に、宮城県、福島県、茨城県、栃木県、埼玉県、新潟県、長野県の該当町域(43市郡)に本社を置く企業を抽出、分析した。

福島県が1,107社で最多0.09%

 2,772社を県別でみると、最多は福島県の1,107社(構成比39.9%)。公表資料によると、国管理河川や県管理河川(11水系23河川49箇所)で堤防が決壊した。次いで、宮城県の691社(構成比24.9%)、栃木県の674社(同24.3%)、長野県の109社(同3.9%)、茨城県の90社(同3.2%)と続く。
 市郡別では、宮城県栗原市が493社(構成比17.7%)で最多だった。以下、福島県郡山市334社(同12.0%)、福島県本宮市261社(同9.4%)、栃木県栃木市と佐野市が各250社の順。

台風19号被災地域企業 市区郡別

産業別 サービス業他が3割を占める

 被災地域に本社を置く2,772社の産業別は、最多がサービス業他の862社(構成比31.0%)。以下、建設業679社(同24.4%)、製造業356社(同12.8%)、小売業347社(同12.5%)、卸売業199社(同7.1%)の順。
 宮城県、福島県、栃木県、新潟県ではサービス業他、茨城県、埼玉県、長野県では建設業がそれぞれ最も多かった。 業種別では、総合工事業が309社(構成比11.1%)で最も多かった。次いで、職別工事業232社(同8.3%)、その他の小売業149社(同5.3%)と続く。

資本金別 1千万円未満が7割を超える

 2,772社を資本金別でみると、最多は「1百万円以上1千万未満」の1,374社(構成比49.5%)で、約5割を占めた。次いで、「個人企業他」の607社(同21.8%)、「1千万円以上5千万未満」の606社(同21.8%)と続く。
 「個人企業他」を含む資本金1千万円未満は2,113社(同76.2%)で、全体の8割弱を占めた。被災地域に本社を置く企業は、中小・零細企業が圧倒的に多い。被災からの復興が遅れると経営再建にも大きな障害になり、被災の実態解明と復興への支援が急がれる。一方、「1億円以上」はわずか14社にとどまり、構成比は1%に満たなかった。

台風19号被災地域企業 資本金別

年齢別 60代以上が6割以上

 2,772社のうち、代表者の年齢が判明した1,338社では、代表者の年齢は、60代が471社(構成比35.2%)と最も多かった。以下、70代が312社(同23.3%)、50代が270社(同20.1%)、40代が183社、80代以上が79社の順。20代はゼロで、30代は23社(同1.7%)にとどまった。
 代表者の年齢が60代以上は、合計862社(同64.4%)と6割を超えた。東京商工リサーチの調査では、「休廃業・解散した企業の代表者の年齢は60代以上が8割を超える」(2018年「休廃業・解散企業」動向調査)。代表者の年齢が高くなるにつれ、新たな事業展開への意欲が低下し、設備投資や規模拡大へのモチベーションも低下しがちだ。今回の被災を機に事業の再興ではなく、廃業を選択する経営者が増えることも危惧される。

Xアイコン
facebookアイコン

人気記事ランキング

ランキング1位
  • TSRデータインサイト

「最低賃金」改定で、51.3%の企業が「給与変更」 2020年代の1,500円 「対応不可能」が4割切る

厚生労働省は9月3日、2026年度の全国の最低賃金額(平均)を1,177円(56円増)に引き上げた。 1978年度に目安制度が始まって以降、平均引き上げ額56円は前年度に続き2番目の高さで、これを受けて給与改定を迫られる企業が半数に達することがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

1-9月「医療機関」倒産 過去最多の59件 身近なクリニック、歯科医院で苦境が鮮明

医療機関の倒産が再び勢いを増している。2026年1月-9月に倒産した病院・クリニック(診療所)・歯科医院などの「医療機関」は59件(前年同期比28.2%増)と、過去最多を更新した。

3

  • TSRデータインサイト

「税金滞納」倒産が168件、前年同期の2倍に大幅増 2026年度上半期の「税金滞納」倒産 破産が97.6%

2026年度上半期(4-9月)の「税金滞納(社会保険を含む)」倒産は、168件(前年同期比100.0%増)と、前年同期の2倍に達し、この10年で最多を記録した。物価や人件費などのコストアップが企業収益を圧迫し、納税原資を確保できない小・零細企業の行き詰まりに拍車を掛けている。

4

  • TSRデータインサイト

「社会保険の適用拡大」 中小・零細企業ほど負担増 企業の44.9%が「働き控え」懸念、「未対応」も半数

2026年10月から非正規従業員にも社会保険の適用が拡大された。「月収8万8,000円以上」の賃金要件が撤廃され給与額に関わらず条件を満たす社員は、新たに厚生年金や健康保険の加入対象となる。10月1~8日企業を対象に「社会保険適用の基準変更」に関するアンケート調査を実施した。

5

  • TSRデータインサイト

2026年1-9月「デイサービス」倒産47件 同期間で過去最多、介護業界の苦境鮮明

デイサービスなど「通所・短期入所介護事業」の倒産が増加している。2026年は9月までに47件(前年同期比34.2%増)と大幅に増加し、1-9月で過去最多を更新した。多様化するサービスなど、他社との競争が激化するほか、物価高に人手不足も重なり、苦境が深まっている。

TOPへ