• TSRデータインサイト

2019年「全国社長の出身大学」調査

 2019年の全国社長の出身大学は、今年創立130周年を迎え、約118万人の卒業生を輩出する日本大学が調査開始から9年連続でトップを維持した。
 都道府県別(企業所在地)では、東日本は21都道県中、17都県で日本大学が首位に立ったが、西日本は地元や域内の大学が上位を占めた。東日本の「中央」志向に対して、西日本の「地元」優先が浮き彫りになった格好だ。
 社長数が上位100大学出身の企業の業績は、増収や増益など好業績は東京大、京都大、大阪大など旧帝大を中心に、国立大学が上位を占めた。また、私立大学では金沢工大、千葉工大、大阪工大など、理工系大学が健闘している。出身社長数と企業の業績とは相関関係にないようだ。

  • 本調査は、東京商工リサーチの企業データベース約379万社の代表者データ(個人企業を含む)から、公開された出身大学を抽出、集計した。同一人物が複数の企業で社長を務める場合、売上高の条件で1社に絞り込み、社長を兼務する重複企業を集計対象外とした。集計対象外企業は26万3,690社。
  • 出身大学が名称変更、統合している場合、現在の存続している大学名で集計した。本調査は2010年から9回目。

日本大学が9年連続トップ

 社長の出身大学トップは、日本大学が2万1,581人で調査を開始以来、9年連続トップ。卒業生が圧倒的に多く、唯一の2万人超えとなった。次いで、2位が慶応義塾大学1万650人、3位が早稲田大学1万441人と続く。出身社長数が1万人を上回ったのは、上位3校まで。
 以下、4位に明治大学8,525人、5位に中央大学7,807人、6位に法政大学6,296人と、東京に本部を置く大規模私立大学が続く。関東以外では7位に近畿大学、9位に同志社大学の関西勢2校が入った。

東京大学が国公立大学で初めてトップ10入り

 社長数の上位9校まで順位の変動がなかったが、10位に東京大学3,953人(前回11位)が入った。国公立大学がトップ10に入ったのは、調査を開始以来、東京大学が初めて。
 国公立大学で上位50に入ったのは、東京大学の他、21位京都大学2,488人、22位大阪大学2,361人、23位北海道大学2,210人、27位九州大学2,000人、29位東北大学1,931人など旧帝大を中心に、32位神戸大学、34位広島大学、42位千葉大学、43位名古屋大学、と10校がランクインした。10校のうち、5校が前年より順位を上げ、他の5校は同順位を維持して堅実さが目立った。

2019年 全国社長出身大学

都道府県別 20都県で日本大学がトップ、東日本では8割を占める

 都道府県別では、日本大学が20都県(前年19都県)でトップを占めた。宮城県を除く、東北と関東全都県でトップに立ち、東日本(東海・中部地区まで)で上位3校に日本大学がランクインしていないのは、宮城県と愛知県の2県のみだった。日本大学は東日本の21都道県のうち、17都県(構成比80.9%)で首位を占め、圧倒的な存在感を見せた。
 日本大学出身の社長数が地元大学を上回った要因は、(1)卒業生が118万人超のマンモス大学、(2)全国各地の付属校・系列校から地方の企業経営者の子息、子女が大学へ進学し、卒業後に事業を継承、などが背景にあるとみられる。
 ただ、東日本で日本大学が席巻する中にあって、北海道(社長数1位:北海道大学)や宮城県(同:東北学院大学)、愛知県(同:愛知学院大学)など、地方の中核都市がある道県では地元の国立大学、私立大学が底力を見せ、日本大学にトップの座を譲らなかった。

西日本では地元大学の存在感が強い

 日本大学が圧倒的な強さを見せた東日本と対照的に、西日本(北陸以西)で日本大学がトップに立ったのは、香川県、高知県、宮崎県の3県(構成比11.5%)にとどまった。それ以外の23府県は、県内もしくは同じ地方に本部を置く大学が上位を占めた。
 西日本の各県トップには地元の国立大学が目立った。東日本で国立大学が首位に立ったのは、21都道県のうち2道県(同9.5%)と1割に届かない。だが、西日本では26府県のうち、10県(同38.4%)で国立大学が首位に立ち、約4割にのぼった。特に、中国地区は5県すべて地元国立大学(広島大学、鳥取大学、島根大学、岡山大学、山口大学)がトップに立った。
 近畿地区は、大阪府、奈良県、和歌山県でトップの近畿大学をはじめ、2府4県すべて私立大学がトップを占めた。京阪神に有力私立大が集まっていることが背景にあるようだ。四国は日本大学が目立つが地元大学も健闘、九州は地元国立大学が上位を占める中、福岡大学が健闘している。

2019年 都道府県別(企業所在地) 社長の最多出身大学(西日本)

業績別 業績好調な社長は国立大学、理工系大学

 出身社長数の上位100校の社長が経営する企業の業績は、直近2期の売上高と当期利益を比較すると、増収は東京大学、増益では神奈川歯科大学、増収増益は九州歯科大学が、それぞれの社長率でトップだった。ただ、上位10校の社長率は僅差で、首位が突出していない点が共通している。
 各ランキングの上位10校は、国立大学、医科歯科系大学、理工系大学が占めている。増収増益の6位の東京都市大学は現在、文系学部を設置しているが、前身は理工系の武蔵工業大学であるため、創立時からの私立文系大学は上位10校にランクインしていない。
 なお、医科歯科系大学を除くランキングでは、関西学院大学、玉川大学、成城大学などの私立大学が各ランキング上位に名前を連ねる。
 しかし、医科歯科系大学を除いても、国立大学や理工系大学が上位を占める傾向は変わらない。東証1部上場などの大手企業は、伝統的に旧帝大の国立大学出身社長が多く、理工系社長の企業も手堅い経営が多いようだ。

  • 2018年1月期以降を最新期決算とする企業のうち、2期連続して12カ月決算で売上高、当期利益が判明した企業を対象として算出した。
  • 社長出身大学上位100校(医科歯科系除く)

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「社長の出身大学」 日本大学が15年連続トップ 40歳未満の若手社長は、慶応義塾大学がトップ

2025年の社長の出身大学は、日本大学が1万9,587人で、15年連続トップを守った。しかし、2年連続で2万人を下回り、勢いに陰りが見え始めた。2位は慶応義塾大学、3位は早稲田大学と続き、上位15校まで前年と順位の変動はなかった。

2

  • TSRデータインサイト

内装工事業の倒産増加 ~ 小口の元請、規制強化で伸びる工期 ~

内装工事業の倒産が増加している。業界動向を東京商工リサーチの企業データ分析すると、コロナ禍で落ち込んだ業績(売上高、最終利益)は復調している。だが、好調な受注とは裏腹に、小・零細規模を中心に倒産が増加。今年は2013年以来の水準になる見込みだ。

3

  • TSRデータインサイト

文房具メーカー業績好調、止まらない進化と海外ファン増加 ~ デジタル時代でも高品質の文房具に熱視線 ~

東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースによると、文房具メーカー150社の2024年度 の売上高は6,858億2,300万円、最終利益は640億7,000万円と増収増益だった。18年度以降で、売上高、利益とも最高を更新した。

4

  • TSRデータインサイト

ゴルフ練習場の倒産が過去最多 ~ 「屋外打ちっぱなし」と「インドア」の熾烈な競争 ~

東京商工リサーチは屋外、インドア含めたゴルフ練習場を主に運営する企業の倒産(負債1,000万円以上)を集計した。コロナ禍の2021年は1件、2022年はゼロで、2023年は1件、2024年は2件と落ち着いていた。 ところが、2025年に入り増勢に転じ、10月までの累計ですでに6件発生している。

5

  • TSRデータインサイト

解体工事業の倒産が最多ペース ~ 「人手と廃材処理先が足りない」、現場は疲弊~

各地で再開発が活発だが、解体工事を支える解体業者に深刻な問題が降りかかっている。 2025年1-10月の解体工事業の倒産は、同期間では過去20年間で最多の53件(前年同期比20.4%増)に達した。このペースで推移すると、20年間で年間最多だった2024年の59件を抜いて、過去最多を更新する勢いだ。

TOPへ