• TSRデータインサイト

事業再生実務家協会がシンポジウムを開催、金融機関の企業への関わり方を広く議論

 10月9日、一般社団法人事業再生実務家協会(JATP)主催で、「上場企業・中堅企業における事業再生アプローチ」が開かれた。事業再生や倒産法に詳しい弁護士や公認会計士、金融機関の担当者など約200人が出席した。


融資もできるコンサルティング会社へ

 基調講演は、金融庁監督局地域金融企画室長の日下智晴氏が務めた。
 人口減少や産業構造が変化する中、地域金融機関を取り巻く環境は厳しさを増している。日下室長は、「金融システムの健全性維持は、(個別金融機関の)自己資本比率が高いかどうかではない。ビジネスモデルが持続可能かどうかだ。これは事業再生の最前線での経験が豊富な皆さんが一番わかっていることだ」と述べ、地域金融機関の変革を改めて促した。
 また、近年の規制緩和に触れ、「(金融機関による事業会社の支配を予防する)5%ルールは永遠に変わらないが、事業再生時や事業承継時の例外措置は拡大され、一定期間100%持てることになる。これはこれまでの融資慣行からするとコペルニクス的転換だ」と強調した。その上で「企業に対し何ができるかを考え直す必要がある。融資のできるコンサルティング会社になる将来もある」と地域金融機関の将来の方向性を示唆した。

事業再生には総合力が求められる

 基調講演の後、「地域中堅企業における事業再生に係る諸課題について」(第1部)、「上場企業における事業再生に係る諸課題」(第2部)をテーマに、事業再生の実務家によるパネルディスカッションが開かれた。
 第1部では、中小企業はオーナーシップ経営が多く、過去の成功が抜本的な再生局面での足かせになっている実情が報告された。また、金融機関のコンサルティング機能について、「フィーを取るためのコンサルティング」になる危険性や金融機関内に事業再生に長けた人材が不足している、などの問題意識が共有された。パネラーの大西正一郎氏(フロンティア・マネジメント代表取締役、弁護士)は、「事業再生は法律、財務、事業、ハンズオンの経営など総合力が必要。すべてを完璧に対応できる人はおらず、地域金融機関にはそれぞれの専門家をコーディネートする役割が求められている」と述べた。

債権者ガバナンスが重要

 第2部では、低金利の環境下で企業の多行取引が進む中、金融機関による債権者ガバナンスに期待する声が寄せられた。
 ただ、事業再生における金融債務の返済の一時停止時に、再建計画の提示がないことや経営者の「覚悟」が伺えないなどの不満が金融機関から伝えられた。さらに「金融円滑化法の副作用で、FAX1枚で(返済を)止めている」との問題点も指摘された。
 パネルディスカッションで、奥総一郎氏(PwCアドバイザリーパートナー、事業再生研究機構理事)は、「着手が遅すぎて法的(整理)の準備をする時間すらないケースもある」として、債権者ガバナンスが事業再生の早期着手を促す上で重要との認識を示した。


 JATPは、今後も定期的にシンポジウムや勉強会を開催する予定。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2019年10月17日号掲載予定「WeeklyTopics」を再編集)

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「リファラル採用」 企業の半数に広がる 定着率はリファラルが新卒、転職エージェントを上回る

東京商工リサーチは、採用に関する企業向けアンケート調査を実施した。人手不足やAI・DXの普及で転職市場の活況が続き、近年はリファラルやアルムナイ採用も広がっている。特に、リファラル採用は、転職エージェントの紹介より従業員の定着率が高いと考える企業が多いことがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

大手ホテル好調 客室単価と稼働率が同時上昇 客室単価はコロナ禍の2倍超、稼働率は83.3%

インバウンド需要と国内旅行の復活で、大手ホテルの客室単価と稼働率が、コロナ禍以降で最高を更新した。 ホテル運営の上場12社(13ブランド)の2025年度の客室単価は、1万7,818円(前年度比8.6%増)で前年度より1,424円上昇した。稼働率は83.3%(前年度82.3%)で、高水準を維持した。

3

  • TSRデータインサイト

経営責任を取る事業再生、ジュピターコーヒーは黒字化へ ~ ネクスト・キャピタル・パートナーズ 単独インタビュー ~

2025年度の企業倒産は1万505件(前年度比3.5%増)で、2年続けて1万件を超えた。 こうしたなか、20年を超すファンド運営で事業再生を数多く手掛けてきたのがネクスト・キャピタル・パートナーズ(株)だ。浅野晃司・取締役執行役員に特色や取り組みを聞いた。

4

  • TSRデータインサイト

企業の7.8%で退職金「増額・導入」  「減額・廃止」企業は月給などへ、資産形成は自己責任

これまで「年功序列」や「終身雇用」が前提の日本の会社では、長く勤め上げてまとまった退職金を受け取ることが一般的だった。だが、東京商工リサーチ(TSR)のアンケート調査で、2023年以降の退職金制度は「増額・導入」が7.8%に対し、「減額・廃止」は1.9%だった。

5

  • TSRデータインサイト

サッカーW杯 日本代表を支える40社 売上1兆円以上8社 設立10年未満も

2026年6月11日、米国・カナダ・メキシコの3カ国共催で、史上最大規模のFIFAワールドカップが開幕する。5月15日、日本代表メンバー26名も発表され、関心が集まるなか、スポンサーシップやパートナーシップなど、サッカー日本代表・日本サッカー協会を支援する企業40社を調査した。

TOPへ