• TSRデータインサイト

金融庁 FATF審査を前に「本人確認・実質的支配者の確認など実態把握が必要」

10月からFATF審査

 9月5日、金融庁は都内で開かれたシンポジウムで「金融機関等におけるマネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策の現状と課題」と題して講演した。
 今年10月からのFATF(Financial Action Task Force:金融活動作業部会)による第4次対日相互審査のオンサイト・レビュー(訪日インタビュー)を控え、金融機関や情報ベンダーを中心に、マネロン・テロ資金供与対策への関心は高まっている。すでに8月から金融サービス利用者に向けて集中的に政府広報し、本人確認手続きなどへの周知を図っている。
 シンポジウムは公認AMLスペシャリスト協会(ACAMS)が主催、東京商工リサーチなどが協賛している。金融庁総合政策局マネーローンダリング・テロ資金供与対策企画室長の尾崎寛氏がKey Noteスピーカーを務めた。

リスクベース・アプローチの重要性

 金融を取り巻く環境は、デジタル技術の進展や訪日外国人の増加、従来の金融グループ以外の金融サービスへの参入など、目まぐるしく変化している。尾崎氏は、「外部環境が大きく変わっておりリスクも変化している。リスクの変化に応じて、コントロールやディフェンスも変わる必要がある。マネロン・テロ資金供与対策はこのようにダイナミックな取り組みであり、その観点からも、継続的な教育研修は大切である」と述べ、リスクベース・アプローチに沿った態勢整備、職員の教育研修の重要性を改めて示した。
 また、他国のFATF相互審査事例の中から中小金融機関に関するコメントを引用し「金融機関等は規模の大小に関係なく、マネロン・テロ資金供与管理態勢を構築することが求められている」と語り、業界全体での継続的な取り組みを求めた。また、マネロンと言えば海外送金に注目が集まりがちだが、「海外送金業務を止めればマネロン・テロ資金供与リスクが無くなるわけではない。全商品サービスのリスク評価を行う必要がある。特殊詐欺の実態等を勘案すれば、普通預金口座の実態把握が重要である。」(尾崎氏)との認識を示した。

NPOも「継続的な管理が必要」

 FATFは、NPO(非営利団体)がテロリストに悪用される可能性を念頭に、対策を加盟各国へ要請している。これに対し、金融庁は、マネロン・ガイドラインの中で、NPOのテロ資金供与リスクの特定・評価とリスク低減策の必要性に言及している。具体的には、「日本にはテロ資金供与リスクがないという人もいるが、そんなことはない。非営利団体においても、実質的支配者の確認や活動状況を含む実態把握、資金の流れに着目した継続的な管理が必要である」(尾崎氏)と語った。

大手行や資金移動業者などが対象か

 FATFの第4次対日相互審査は10月28日~11月15日の約3週間を予定。大手銀行や地方銀行のほか、資金移動業者、証券会社、保険会社の他、すべての特定事業者がインタビューの対象になる可能性がある。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2019年9月12日号掲載予定「WeeklyTopics」を再編集)

金融庁

‌金融庁

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

【TSRの眼】「トランプ関税」の影響を読む ~ 必要な支援と対応策 ~

4月2日、トランプ米国大統領は貿易赤字が大きい国・地域を対象にした「相互関税」を打ち出し、9日に発動した。だが、翌10日には一部について、90日間の一時停止を表明。先行きが読めない状況が続いている。

2

  • TSRデータインサイト

中小企業の賃上げ率「6%以上」は9.1% 2025年度の「賃上げ」 は企業の85%が予定

2025年度に賃上げを予定する企業は85.2%だった。東京商工リサーチが「賃上げ」に関する企業アンケート調査を開始した2016年度以降の最高を更新する見込みだ。全体で「5%以上」の賃上げを見込む企業は36.4%、中小企業で「6%以上」の賃上げを見込む企業は9.1%にとどまることがわかった。

3

  • TSRデータインサイト

ホテル業界 インバウンド需要と旅行客で絶好調 稼働率が高水準、客室単価は過去最高が続出

コロナ明けのインバウンド急回復と旅行需要の高まりで、ホテル需要が高水準を持続している。ホテル運営の上場13社(15ブランド)の2024年10-12月期の客室単価と稼働率は、インバウンド需要の高い都心や地方都市を中心に、前年同期を上回った。

4

  • TSRデータインサイト

2024年度の「後継者難」倒産 過去2番目の454件 代表者の健康リスクが鮮明、消滅型倒産が96.6%に 

2024年度の後継者不在が一因の「後継者難」倒産(負債1,000万円以上)は、過去2番目の454件(前年度比0.8%減)と高止まりした。

5

  • TSRデータインサイト

2025年「ゾンビ企業って言うな!」 ~ 調達金利の上昇は致命的、企業支援の「真の受益者」の見極めを ~

ゾンビ企業は「倒産村」のホットイシューです、現状と今後をどうみていますか。 先月、事業再生や倒産を手掛ける弁護士、会計士、コンサルタントが集まる勉強会でこんな質問を受けた。

TOPへ