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「バイト探し」から「バイト選び」へ 求人広告大手・ディップ冨田英揮社長 独占インタビュー(前編)

 2019年5月の有効求人倍率は1.62倍の高水準で、2014年1月から65カ月連続で1倍を超えている。求人広告大手のディップ(株)(TSR企業コード:293195617、港区、東証1部)は、インターネット広告事業が好調で、2019年2月期は過去最高の売上高421億7,600万円(連結)をあげた。2020年2月期も前年比8.1~10.7%の増収を見込んでいる。
 上戸彩さんをイメージキャラクターに起用した「はたらこねっと」や乃木坂46でおなじみの「バイトル」など、印象に残る広告の多いディップ。冨田英揮・代表取締役社長に、業界の展望やリリース目前のAI(人工知能)、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)事業について話を聞いた。

-業界の景況感は?
 良い状態が続いている。今もマーケットは毎年コンスタントに伸びており、当社はそれを上回る水準の成長率だ。一部メディアで、人材派遣やアルバイトが伸び悩んでいるといった報道もあったが、実際は正社員を含め、全体が伸長基調にある。一方、一部の業種では顕著な人手不足に悩まされている。

-人手が不足している業種は?
 まずは建設業。有効求人倍率は、一時期5倍強という水準まで上昇し、今の建設ラッシュを如実に表している。五輪後は多少落ち着きを取り戻すとみており、今よりは均衡に向くだろう。だが、五輪向けが一段落したところで、工事が軒並みストップするわけではない。大阪万博も控えており、依然として高水準に変わりないとみている。
 現況で(有効求人倍率)4倍ほどの介護関連も、今後も高齢者の数は増加傾向にあり、5倍、6倍という数字もそう遠くない。

-建設関連の賃金が今、上値を切り上げている。今後もこの傾向は続くか?
 国内のインフレ状況に左右される。やはりマーケットのインフレ傾向により、もっと切り上げる可能性も出てくる。切り上げた場合、その分、人手が不足していることを表すことにもなる。今はインフレというより“人の取り合い”によって給料が上がっている状態だ。最低賃金も毎年ハイペースで上がっている。今年もまた秋に上昇の兆しがある。

冨田英揮社長(ディップ提供)

冨田英揮社長(ディップ提供)


-学生のアルバイト観に変化が生じているという報道がある
 多くの企業でパート、アルバイトの時給を上げている。そうなると時給の額はもとより、選択肢として「実際にどんな仕事をするのか」「どういう人と働くのか」ということに学生は強い関心を示す。
 当然だが、若い学生も時給は高い方がいい。例えば、コンビニの時給をとっても、通り一つ挟んだA店とB店では、時給にはほとんど差はない。そうなると、次に選ぶ基準は“働く環境”だ。より自分に合った職場環境を選ぼうと様々な角度で吟味する。

-若い世代がバイトを選ぶ上で、とくに重視していることは?
 「思っていたバイト先と違う」ということが、辞めたくなる理由として多い。「こんな雰囲気の悪いところとは思わなかった」とか、「なんでこんなに怒られるんだ」など。当初想定した職場環境と違うパターン。
 それに関連して、バイト先の年齢層や男女比の分布を知りたい若い世代も多く、彼らがバイトを選択する上で注目する点として毎回上位に入ってくる。彼らのニーズを汲み、ディップでは昨年からアルバイトの「しごと体験」と「職場見学」応募機能を搭載した。大変好評を得ている。

-求人広告の内容も年々詳細になっている
 紙媒体がメインの頃は、今ほど材料を揃えることなく広告を出稿できた。それは求人を紹介する枠に物理的な制限があったためだ。時給と最寄駅からの距離、職種など最低限の情報の掲載が普通だった。しかし、今は写真を10枚ほど用意し、さらに動画も載せ、あとは職場を知る上でのバロメーター、例えば「男女比は何パーセントか」「年齢層はこうだ」といった項目を併記する。 この変化は一言で表すと、「バイト探し」から「バイト選び」に変容したと言える。
 新卒採用の面接でも、かつては「4年間同じアルバイトをしていました」と話す学生さんが多かった。でも、ここ5~6年は違う印象だ。今は“選べる時代”。同じバイトを何年も続けるケースは減り、アルバイトの定着率は以前より低い傾向にある。売り手市場になると、雇われる側の選ぶ力が強くなるので、当然のことかもしれないが。

-動画でバイトを紹介するなど先駆的な取り組みが目立つ
 動画でのバイト紹介は、求人広告のWEB化が進んだことによる。開始したのは2010年。紙媒体はスペースにも限りがあり、“スペース=コスト”という考え方だった。
 1ページ分の広告を出すと、その分媒体側にもコストが掛かる。しかし、デジタルに移行すると、スペースを気にしなくてもよくなり、紹介する情報の量は増えていった。我々が動画を始めた当時は、ここまで定着するとは周囲も考えていなかった。だが、今となっては、求人広告業界で珍しいことではなくなった。

-五輪後の景況感をどうみているか?
 全体の景況感は判断しかねるが、求人に関しては、少子高齢化で労働力人口が減少していくことを鑑みると、人手不足感は継続すると思う。よっぽどリーマン・ショック級の変化があれば別ではあるが。

-今後、注視するトレンドはあるか?
 Wワーク(本業と副業の掛けもち)のマーケットを充実させたい。企業ニーズが増えているし、個人からは「働きたいけど、残業させてくれない」という声もある。働き方改革が叫ばれ、「残業代が入らなくなる」という声が一部であり、現実的に今までの収入より減っている問題がある。
 今、米国では複数の職を持つ人が増えている。日本も将来そうなると思うし、そうならざるを得ない状況になるかもしれない。当社にとってはビジネスチャンスとなる。

(次号へ続く)

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2019年8月22日号掲載予定「Weekly Topics」を再編集)

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