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「ジーンズメイト」でジーンズの消える店舗が増殖中

ジーンズメイト(株)(TSR企業コード:292351500)が脱ジーンズ戦略に舵を切った。ジーンズメイトは、若い世代をターゲットにターミナル駅周辺やファッションビルへの出店を加速。こうした店舗にジーンズは「ほぼない」(同社担当者)。若者の“ジーンズ離れ”に前向きに取り組んだ結果が、「ジーンズを置かない」決断だった。

ジーンズ在庫比率1割以下の店舗も

7月下旬、東京商工リサーチはジーンズメイトの新業態店舗「JEM」の渋谷店を取材した。売場の9割強を“ジーンズ以外の商品”が占め、主力はアスレチックとレジャーを掛け合わせた機能性の高い「アスレジャー」ファッション。かつての看板アイテムだったジーンズブランドのEDWINやLevi’sのデニムパンツは2階の一角に数種類並ぶだけ。しかも、デニムコーナーのいち押しは、EDWINの通気性の高いメッシュ仕様のカラーパンツで、従来の“ジーンズ”とは趣きが異なる。
ジーンズメイトは、2017年2月にライザップグループ(株)(TSR企業コード:295695790)の連結子会社になって以来、店舗リニューアル、リブランド戦略を推し進めている。ある店舗のジーンズ在庫は2017年3月には商品全体の17%だったが、18年3月は14%、19年3月では9%に減少した。

ジーンズの陳列が減っている店内(TSR撮影・7月)

ジーンズの陳列が減っている店内(TSR撮影・7月)

1本もジーンズがない「ジーンズメイト」

渋谷店は、18年秋から19年1月にかけ、ジーンズを1本も置いていなかった。店舗のある渋谷センター街には、10代、20代の若者と外国人観光客が多い。女性客も意識した品ぞろえへ見直すうち、ジーンズ置き場がなくなった。だが、40代以上のお客から「“ジーンズメイト”なのに1本もジーンズがないの?」という驚きの声や、「またジーンズを置いてよ」という要望が寄せられた。そこで、19年春のリニューアルを機に、以前より売場を大幅に縮小して、再びジーンズを扱うように。顧客ニーズへの柔軟な対応で誘引力をさらに高めようとしている。

「ジーンズレス」で黒字転換

ジーンズの取り扱いを減らす理由について、ジーンズメイトの広報担当者は「ボトムスの多様化で若い世代でジーンズを求める層が減っている」と説明する。
リニューアル効果は業績にも反映し、2019年3月期決算は11年ぶりの最終黒字を計上した。8月8日に発表が予定されている20年3月期第1四半期(4-6月)決算でも引き続き黒字が見込まれるようだ。
店舗の品揃えを見直す一方で、駅から離れたロードサイド店はジーンズを好むお客も多い。店舗によりジーンズを“置く”、“置かない”の判断が分かれる。ただ、「若者の多いファッションビルの店舗は、ジーンズをほとんど置かない店舗を増やす」(同広報)と、“ジーンズメイト”の新戦略は加速しそうだ。


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2019年8月7日号掲載予定「Weekly Topics」を再編集)

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