• TSRデータインサイト

消費増税による企業業績への影響は

 参議院選挙の結果を受け、2019年10月に消費税10%引き上げが現実味を帯びてきた。
GDPの約6割を占める個人消費は消費増税の影響を最も受けやすい。約30万社の財務データを基に分析した「TSR中小企業経営指標(2019年版)」によると、「飲食店」の売上高総利益率(粗利率)は55.8%。一方、「持ち帰り・配達飲食サービス業」は42.4%で13ポイントの差がある。ただ、最終利益の純利益は、飲食店が1.8%、持ち帰り・宅配飲食サービス業が2.7%と逆転する。飲食店は粗利率は高いが、飲食設備への投資や接客スタッフの人件費などが重く、純利益率を押し下げている。
軽減税率の導入で、飲食店の顧客が持ち帰り・配達飲食サービスに流れた場合、相対的に固定費負担が重い飲食店の純利益率は大幅に悪化しかねない。人手不足や最低賃金引き上げによる人件費負担の増加も、店舗スタッフを抱える飲食店に影響を及ぼしやすい。
消費増税の企業業績への影響は、業種ごとの細かな財務の特徴や潜在的な課題を把握し、見極めることが必要になっている。表面的な売上増だけの判断は、本質的な強みや弱みの発見を見落とすことになる。

TSR中小企業経営指標とは

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「社長の出身大学」 日本大学が15年連続トップ 40歳未満の若手社長は、慶応義塾大学がトップ

2025年の社長の出身大学は、日本大学が1万9,587人で、15年連続トップを守った。しかし、2年連続で2万人を下回り、勢いに陰りが見え始めた。2位は慶応義塾大学、3位は早稲田大学と続き、上位15校まで前年と順位の変動はなかった。

2

  • TSRデータインサイト

内装工事業の倒産増加 ~ 小口の元請、規制強化で伸びる工期 ~

内装工事業の倒産が増加している。業界動向を東京商工リサーチの企業データ分析すると、コロナ禍で落ち込んだ業績(売上高、最終利益)は復調している。だが、好調な受注とは裏腹に、小・零細規模を中心に倒産が増加。今年は2013年以来の水準になる見込みだ。

3

  • TSRデータインサイト

文房具メーカー業績好調、止まらない進化と海外ファン増加 ~ デジタル時代でも高品質の文房具に熱視線 ~

東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースによると、文房具メーカー150社の2024年度 の売上高は6,858億2,300万円、最終利益は640億7,000万円と増収増益だった。18年度以降で、売上高、利益とも最高を更新した。

4

  • TSRデータインサイト

ゴルフ練習場の倒産が過去最多 ~ 「屋外打ちっぱなし」と「インドア」の熾烈な競争 ~

東京商工リサーチは屋外、インドア含めたゴルフ練習場を主に運営する企業の倒産(負債1,000万円以上)を集計した。コロナ禍の2021年は1件、2022年はゼロで、2023年は1件、2024年は2件と落ち着いていた。 ところが、2025年に入り増勢に転じ、10月までの累計ですでに6件発生している。

5

  • TSRデータインサイト

解体工事業の倒産が最多ペース ~ 「人手と廃材処理先が足りない」、現場は疲弊~

各地で再開発が活発だが、解体工事を支える解体業者に深刻な問題が降りかかっている。 2025年1-10月の解体工事業の倒産は、同期間では過去20年間で最多の53件(前年同期比20.4%増)に達した。このペースで推移すると、20年間で年間最多だった2024年の59件を抜いて、過去最多を更新する勢いだ。

TOPへ